【日本市況】2年金利が16年ぶり高水準、12月利上げ観測-金融株上昇
植田総裁は日本経済新聞とのインタビューで、追加利上げの時期について「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では近づいているといえる」と述べた。発言を受けて、金利スワップ市場で今月18、19日開催の日銀金融政策決定会合での利上げの予想確率は一時7割近くに上昇した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストはリポートで、植田総裁の発言は12月の追加利上げに向けた「地ならし」だと指摘。5日に3月と7月の利上げに反対した中村豊明審議委員の金融経済懇談会出席を控え、その前に総裁インタビューを設定することで「12月の追加利上げがサプライズとならないよう『丁寧なコミュニケーション』を進めた」とみる。
株式は金利高が追い風となる金融株をけん引役に上昇。円相場は先週末の海外市場で約1カ月ぶりの高値を付けた反動から下落している。
債券
債券相場は、12月の利上げ観測の高まりから夜間取引で先物が売られた流れが継続。新発2年国債利回りは0.625%と2008年10月以来の水準に上昇した。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、2年金利の上昇は利上げの織り込みが進んだことが背景だとし、「無担保コールレートが0.5%となれば、2年金利は0.6%くらいでバランスが取れ、そこにようやくたどり着いた」と述べた。
一方、利上げの織り込みという面では、2年金利は十分な水準に到達したとも同氏は指摘。追加利上げの織り込みが一段と進むには、今週末発表の雇用統計など米国経済の状況や利上げに向けた政治サイドとの調整が進むかどうかが焦点だと述べた。
株式
東京株式相場は反発。金利上昇による収益拡大期待から銀行や保険など金融株が上昇。電機や自動車、商社株なども買われ、東証33業種中、小売業以外全て高い。
TOPIX上昇に最も貢献しているのが日立製作所で一時5%近く上昇。指数構成銘柄2130のうち、1438銘柄が上昇、590銘柄が下落している。
アセットマネジメントOneの浅岡均シニアストラテジストは、日銀総裁のインタビューは12月に利上げがあるとの見方を強めたとし、金融株は金利上昇を好感していると述べた。
一方、小売業が安く、日経平均株価は一時下落に転じる場面があった。
資生堂は11月29日に発表した今後2年の中期経営戦略で営業利益率目標を引き下げたことが嫌気され、日経平均採用銘柄で最大の下落率となっている。下落率2位はファーストリテイリング。柳井正会長兼社長が英BBCのインタビューで新疆ウイグル自治区産の綿花を使用していないと発言したことを受け、同社の広報担当は11月30日、中国需要への影響などを注視していると述べた。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=150円台半ばに下落。植田日銀総裁の発言を受けた円買いが一服し、ドルを買い戻す動きが優勢だ。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは「149円60銭あたりに一目均衡表の雲があるため、そこに近づくとドル・円はいったん反発しやすくなる」と話す。
植田総裁の発言が伝わった29日の海外市場では149円47銭と10月21日以来の水準まで円高・ドル安が進んだ。ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、前週末からドル安が続いていたため、いったんはその反動でドルが買い戻されていると指摘した。
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--取材協力:田村康剛.
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最終更新:12/2(月) 14:00