コロナの影響もおさまり、社内外の会食の機会も増えていますが、若手社員の中には「クライアントとの接待のやり方を教えてもらっていない」人も少なくないかもしれません。大手広告代理店に営業職として30年勤務し、「誰でも使える気配り術」を伝授する後田良輔氏に接待の基本的な作法について聞きました。
※本稿は後田良輔著『今こそ使える昭和の仕事術-ビジネスマン30年生の経験がたった3分で身につく』から一部抜粋・再構成したものです。
■接待会場のセッティングはどうする?
接待は個室が基本
2022年の個人情報の漏えい・紛失事故は2年連続で最多を更新したとのこと(東京商工リサーチ調べ)。情報を盗もうと考える悪者の知恵は、どんどん進化しています。そしてそんな悪人の罠は、接待の場にも潜んでいます。
デジタル化が進んだ結果、最も重要な話は対面でしか話さない時代になりました。
だからこそ接待は個室が基本(最悪、半個室)です。これにより隣に座っていた集団がライバル会社の人間だったなんて凡ミスを防ぐことができます。まさに備えあれば患(うれ)いなしです。
また個室であればお互い会話に集中することができ、お酒の力も借りることで本音の親睦も深めやすくなります。
でも個室は緊張するですって? だいじょうぶです。次の工夫をすると緊張を軽減できます。
・ 人数と肩書を相手に合わせ、チームとして会食に臨む
・ 相手の秘書や部下に食事の好みや会話のNGをヒヤリングしておく
・ それでも緊張するなら間接照明の店を選ぶ(目線が落ち着きます)
「同じ釜の飯を食う」という言葉があるくらい、食を分かち合う行為はお互いの絆を深めてくれます。
事前準備を怠らず、万全を期しておもてなししてください。
小上がりに上がるときに全員の靴を揃える
「礼儀作法は人間関係を滑らかにする」と、松下幸之助は言いました。
もちろん会食においても礼儀作法は大変重要です。たとえば脱いだ靴の扱い。
ベストセラー『「育ちがいい人」だけが知っていること』(諏内えみ著、ダイヤモンド社)によれば、和食など小上がりに上がるなどの靴を脱ぐ時は、背中を見せながら脱ぐのはNG。正面向いたまま靴を脱ぎ、くるっと180度靴を反転させ、端に寄せるのが礼儀とのこと。たったこれだけなのにあなたの教養の有無がわかってしまいます。
加えてVIPは、自分の分だけでなく、全員の靴を揃えるおもてなしを仕掛けています。
「たかだか靴じゃないか」と、思われたかもしれません。でも会食を共にするお相手のキーマンは靴を揃えるあなたを見て、次のような印象を持ちます。
・靴を揃えてくれたら、すぐに履けて便利だな。
・丁寧な人だな。きっと育ちがよいのだろう。
・気持ちがよくなった。この後の会食も楽しみだ。
たかが靴、されど靴。靴のおもてなし一つで「気持ちのよい人」「みんなに貢献できる人」と思われます。
会食の最初の掴みに合格できますので、ぜひやってみてください。
■接待時に覚えておくべきマナー
上座を覚える
プロトコールという言葉を聞いたことはありますか? 外務省によれば国家間の儀礼上のルールであり、外交を推進するための潤滑油とのこと。
習慣や慣習・儀礼など上座問題は日本ローカルの話ではなく、世界的なルールが存在しています。
プロトコールを知らないだけで世界共通で非常識な人間だと勘違いされますので、まずは次に紹介する日本の上座から覚えていきましょう。
■食事の量は余るくらい用意する
食べ物・飲み物はわざと余るくらい用意する
「食べ物の恨みは怖い」と昔から言われるように、会食の悪印象はずっと根に持たれます。そんな悪印象のひとつに「物足りなかった」というものがあります。
フードロスの観点で食事は残らないようにするのがよいと言われますが、会食においてその考えはNGです。
会食の基本はお招きしたお客様に満足してもらうこと。つまりおなか一杯にさせるのが大原則です。
お客様から「実はもう少し食べたい・飲みたい」と言い出すことはありません。だからこそこちらが気を回して、わざと余るくらい用意するのが正解なのです。
中国では「食べきれないほど十分に料理を提供してもらった。満足しています」という姿勢を見せるために、逆に料理を少し残すのがマナーになっています。
このようなマナーがあるように日本はもちろん世界でも、会食での食事の量は気にすべきおもてなしポイントとなっています。
フードロスを気にするのであれば、余った料理を持ち帰り用として詰めてもらえばまったく問題ありません。
ぜひ多めに食べ物・飲み物を用意してください。そして「よく食べた。満足です」という言葉をお客様から引き出しましょう。満腹を意識することは会食の大原則です。
■接待はその日で終わりではない
会食のお礼は「その場・翌日・次回会ったとき」の3回言う
「自分が人にしてあげたことは忘れない。でも他人にしてもらったことはすぐに忘れる」
これが人間のやっかいな性(さが)です。そんな性のひとつに会食のお礼があります。
お客様に貴重な時間をいただいたり、上司にご馳走してもらったときなどは、きちんと&しっかりとお礼を言わないと、礼儀知らず・恩知らずと思われます。
そこでおすすめなのが「会食のお礼は3回言う」というおもてなしです。
① お店を出たあとに「本日はありがとうございました」とお礼を言う(基本ですね)。
② 翌朝に対面・電話・メールなどでお礼を言う(メールの場合は、会食の場のエピソードなどを書き、きちんと覚えている感を出す)。
③ 次回会った際に「この前は貴重な時間をありがとうございました」と言う(まだ覚えてくれているのか! と思ってもらえます)。
このように「その場・翌日・次回会ったとき」の3回お礼を言うくらいで、ようやく相手もきちんとお礼を言われたと認識します。
目上の人は、お礼の言葉がない人(少ない人)に軽い失望をずっと抱いています。
だからこそ感謝の気持ちは大盛りくらいがちょうど良いのです。
東洋経済オンライン
最終更新:5/13(月) 17:02
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