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マンション「第三者管理方式」で、 管理会社は自社グループへの工事発注もやり放題…!修繕積立金がどんどん足りなくなる「必然」【マンション管理クライシス】

4/12 15:46 配信

マネー現代

(文 週刊現代) 国交省は近く、マンションの「第三者管理方式」(外部管理者方式)におけるガイドラインの改訂版を公開する予定だ。弁護士や公認会計士など、外部専門家による監事の設置や、総会承認によるチェック機能の導入を促すもので、マンション管理の責任者である「管理者」にマンション管理会社社員が就いた場合の、不適切な利益相反的な取引を想定したものだ。(*記事内容は編集部が保証するものではありません。実際のマンションの状況に合わせて考え方を参考にしてください)

国交省の「期待」は機能するのか

 住宅ジャーナリストが言う。

 「ただチェックの仕組みを作るだけで、それが期待された役割として機能するか、という視点が欠落しているように感じます。その“外部”の専門家も、結局は管理会社が斡旋することになるでしょうから、シビアに管理会社に注文をつけるとはとても思えない。

 また、管理会社の自社グループへの大規模修繕などの工事発注だけは、さすがに違反になるのでは、と思われましたが、総会決議で組合員の同意を得ればOKという方向で検討されています。

 総会決議なんて、従来の理事会方式の組合でも、多くの組合員は判断材料や知識もないので、大抵は理事会お任せのノーチェックで通ることがお決まりでした。“信頼する管理会社の提案”という形の演出があれば、承認はたやすい。

住民に「チェックの役割を期待」の大矛盾

 もはや『事実上の“自己発注”(売り手側が顧客の発注権限を持つ)が国交省のお墨付きで解禁されたのと一緒だ』と、管理会社は大喜びでしょう。そもそもマンション管理に関心が薄く、その負担を避けるために第三者管理方式のマンションに住んでいる住民(組合員)が、管理会社による管理を吟味して、最終チェックの役割を果たせると期待すること自体に、論理的な矛盾があります。

 それどころか、管理会社が不適切な取引をしたとしても、総会承認がその”お墨付き”に利用されてしまいかねない。しかも、問題意識のある少数の組合員が問題提起したところで、『多数の組合による承認』の既成事実があれば、打つ手がなくなってしまいます。この環境で、営利企業である管理会社に儲けるなと期待する方に、無理がありますよ」

 結局、管理組合が、管理会社の性善説を前提に依存している状況では、どんなガイドラインを作っても形骸化し、利益を上げたい管理会社は“骨抜き”にする方法を考えるだけ、ということか。

「消費者保護」の観点が欠落

 このような、形骸化必至なガイドラインを策定する国交省の対応にも不信感が募ると、前出の住宅ジャーナリストはいう。

 「政府の『外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ』(WG)の議事概要には、なぜか発言者の名前が記載されていない。通常、政府のWGには発言者名の記載があるものですが、何かやましい理由があるのか。委員には業界団体の役員として、親会社の新築物件で第三者管理を推し進める大手財閥系管理会社の幹部が入っています。

 そして、国交省OBのK氏は現在、この親会社の専務執行役員を務めています。もちろん忖度しているとまでは言いませんが、フラットな議論が行われているのか、不安はあります。いずれにせよ、“理事会廃止型”を国が認めてしまうこと自体、どうかという思いはあります」

 そもそもマンション管理組合においては、取引相手である管理会社と大きな知識や情報の格差が存在しながら、消費者保護にあたる法律や行政的な措置がほとんどない。にもかかわらず、管理会社が管理者となる第三者管理では、高額な出費であっても、総会承認を経るだけで決まってしまう。

そして予算は「打ち出の小槌」に

 「悪質な会社であれば、過大な『予備費』を予算案に計上して総会で承認を得るはずです。その範囲内なら事後報告のみで、予算が使えてしまいますからね」(前同)

 はたして住民は管理会社の“策略”に気付くこともなく、総会で予算案は難なく承認されてしまうだろう。しかし、その結果、積立金が減少しても、それはすべて承認した管理組合の責任となる。

 金融商品であれば、保険の不当な乗り換えや株の回転売買を勧める営業手法は、本人の同意に関係なく、取引自体に規制や制限の行政的措置や通知がある。訪問販売など特定商取引でも、本人の同意に関係なく、不当な勧誘であれば契約成立後でも無条件に取消しができる。取引の弱者である消費者側の同意は、時に、不作為や消極性があって実効性がないといった事情を考慮するものだ。

 それでも株や保険や商品は、少なからず興味がある人間が購入するが、マンションの管理組合は大半が管理には無関心な層なのに、不適切な取引があった場合の被害を認定して救済するような消費者保護の観点がまるでない。気がついたら、管理組合資金が十分になく、積立金の値上げとなり、組合員の可処分所得を直撃してしまう。

利益相反取引の「仕組み化」

 「第三者管理の導入趣旨は、理事会業務の負担軽減のため、管理の責任まで管理会社に任せましょうというものです。しかし会社の目的は利益追求にあり、決してボランティアではありません。管理会社社員が管理組合に寄り添って管理組合への利潤追求を控えたら逆に自社に対する背任行為になってしまう。収益源が管理組合の維持費であるマンション管理会社にとって、第三者管理は利益相反取引を堂々と仕組み化し、正当化したような制度と言えなくもないと思います」(前同)

 第三者管理方式は管理会社だけでなく、メガバンクなど、異業種でも参入が検討されているという。そこまで事業者にとってはオイシイ制度なのだ。委託先の管理会社から第三者管理を勧められたらどうすべきか。ただ、楽になることだけを考えず、リスクも十分に留意する必要があるだろう。

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恐怖のマンション“乗っ取り”制度「第三者管理方式」の導入が静かに進んでいる…! 
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“高かろう悪かろう”のマンション「第三者管理方式」! “毒薬条項”で一度、契約したら最後、解約もできず泥沼化へ
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最終更新:4/12(金) 16:21

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