アリババ、傘下のスーパーを投資ファンドに売却 ECとリアルの相乗効果出ず、2830億円の譲渡損

1/20 12:02 配信

東洋経済オンライン

 中国のEC(電子商取引)大手の阿里巴巴集団(アリババグループ)は1月1日、傘下の大型スーパーマーケット「大潤発(RTマート)」の親会社である高鑫零售(サンアート・リテール)の持ち株をすべて売却すると発表した。

 アリババは高鑫零售の発行済み株式の78.7%を保有している。それらを投資ファンドの徳弘資本(DCPキャピタル)に最大約131億3800万香港ドル(約2652億円)で譲渡する。

 なお、この取引は中国の独占禁止法の執行機関である国家市場監督管理総局の承認を得る必要がある。

■資本関係が完全に消滅

 アリババの開示資料によれば、徳弘資本は高鑫零售の株式を1株当たり1.55香港ドル(約31円)の現金で買い取り、総額116億3700万香港ドル(約2349億円)をアリババに支払う。

 さらに、高鑫零售の2027年および2028年の調整後平均EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)が事前に定めた基準を上回った場合、徳弘資本は1株当たり最大0.2香港ドル(約4円)の利息(固定利息と変動利息の合計)を追加でアリババに支払う必要がある。

 持ち株の譲渡完了とともに、アリババと高鑫零售の資本関係は完全に消滅する。アリババによれば、この取引により約131億7700万元(約2830億円)の損失が生じる見通しだ。

 アリババは2017年11月、直接出資と(子会社を通じた)間接出資の合計で224億香港ドル(約4522億円)を投じて、高鑫零售の発行済み株式の36.16%を取得。さらに2020年10月、280億香港ドル(約5653億円)を追加投資して株式を買い増し、高鑫零售の経営権を取得した。

 この買収の背景には、ECとリアル店舗の融合を目指す「ニューリテール」戦略の推進があった。アリババの動きに対して市場の期待も膨らみ、香港証券取引所に上場する高鑫零售の時価総額は2020年に一時1200億香港ドル(約2兆4227億円)を超えた。

 しかし現実には、ECとリアル店舗の融合は目に見える相乗効果を出せなかった。2021年以降はリアル店舗の凋落傾向が鮮明になり、高鑫零售の売上高は年を追うごとに減少。2024年3月期の通期損益は16億500万元(約345億円)の赤字に転落した。

■ファンドの狙いは不動産か

 アリババは2023年3月、主要事業の6分割を柱にした構造改革に着手し、経営資源を「EC」と「AI(人工知能)・クラウド」の2分野に集中する姿勢を鮮明にした。その意味で、今回の高鑫零售の売却は既定路線と言える。

 では、経営不振の高鑫零售を買収する徳弘資本の狙いはどこにあるのか。同社の経営陣は、かつてアメリカの投資ファンドのKKRや投資銀行のモルガン・スタンレーに在籍し、アジア地域のプライベートエクイティ(未公開株)投資事業を主導した実績を持つ。

 「買い手候補が投資ファンドである場合、高鑫零售の(小売り事業の価値よりも)不動産の価値に注目している可能性が高い」。かつて財新記者の取材に応じた中国の小売業界のベテラン幹部は、そんな見方を示していた。

 高鑫零售の2024年9月期の中間決算報告書には、投資用不動産として52億4600万元(約1127億円)、その他の不動産、工場、設備として200億5800万元(約4308億円)の資産が計上されている。それに対して、2024年末時点の同社の時価総額は約237億香港ドル(約4785億円)にとどまっていた。

 (財新記者:包雲紅)
※原文の配信は1月1日

東洋経済オンライン

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最終更新:1/20(月) 12:02

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