開催迫る「大阪・関西万博」、来場者に備えて「弁天町駅」周辺で開発《楽待新聞》

3/27 19:00 配信

不動産投資の楽待

2025年の開催に向け、注目度を高めている「大阪・関西万博」。

これに向けて、大阪市西部にある港区では「まちづくりビジョン」の策定が進んでいる。

今年2月にも、区役所をはじめとした行政の関係者や、JR西日本、地下鉄を運営する大阪メトロの担当者などが参加する「弁天町駅周辺まちづくり検討会」で協議が行われた。

国内外から集まる多くの人が安全かつ円滑に来場できるようにするため、アクセスの向上や賑わいを持たせるまちづくりが検討されている。

■人口減少が続く大阪市港区

大阪市港区は「大阪都心6区」の1つとされる西区の西隣に位置している区だ。

大阪湾に面したエリアで、区の西端には世界最大級の水族館である「海遊館」、複合ショッピングモールの「天保山マーケットプレース」、毎年多くのクルーズ船が寄港する「天保山客船ターミナル」などがある。

ちなみに、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」は、安治川を挟んだ対岸の此花区にある。

大阪湾に面していることから、もともとは大阪の海の玄関口として発展してきたエリアであり、その中心となったのは運送業、流通業、製造業だった。

大阪市の行政区別人口(2022年)を見ると、港区の人口は約8万人。かつては港湾機能をもとに発展をしていたものの、現在はその多くが港区の南西にある南港(住之江区)へ移転したことで、人口推計は減少の一途をたどっている。

大阪市港区で有数の集客施設と言えば、世界最大級の水族館である「海遊館」だ。

他にも、八幡屋(やはたや)公園の中には国際的なスポーツの拠点「Asueアリーナ大阪」や「Asue大阪プール」、弁天町駅直近にはタワー型複合施設の「大阪ベイタワー」があるなど、街の賑わいに貢献する施設が多く存在している。

また、弁天町駅は大阪西部における交通の要衝だ。鉄道はJR大阪環状線と地下鉄中央線の乗換駅で、東西南北のいずれにもアクセスが可能。

道路は中央大通・みなと通と国道43号が交差しているほか、高速道路も複数通っている。港区の交通利便性は高いと言っていいだろう。

■大阪・関西万博に備えて

そんな港区がまちづくりビジョンの策定に着手した直接的なきっかけは、2025年に開催予定の「大阪・関西万博」だ。

大阪・関西万博の会場は港区の西、大阪湾に浮かぶ人工島の夢洲(ゆめしま)であり、延伸される大阪メトロ中央線が主な交通手段となるだろう。

港区の弁天町駅は新設される「夢洲駅(仮称)」から最も近い乗換駅であり、万博期間中は多くの人が利用すると想定される。

このため、JR西日本は弁天町駅の改良工事を進めており、新たな駅舎も建設される予定だ。新駅舎の開業は2025年春を目指している。

さらに、海路による海外からの訪問者を受け入れている天保山客船ターミナルも建て替え整備が進んでおり、2024年4月から供用が開始される予定になっている。

今回のまちづくりビジョンの策定は、万博開催に向けた交通インフラ等の整備を契機として、エリアの活性化を図ることや人口減少に歯止めをかけることなどが行政の狙いだ。

港区は2023年4月に区全体のまちづくりビジョンを策定しており、その中で課題として挙がっているのは「人口減少」「少子高齢化」「災害対策の強化」「エリアの賑わい促進」などだ。

人口に関しては特に、2020年の国勢調査で約8万1000人だったものを、2045年までに10万人を超えるようにしたいという目標を掲げている。

各課題を解決するための取り組みとして、港区が示している主な施策は以下のようなものだ。

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・高齢者も参加できるようなコミュニティ活動の場を提供する
・地域活動協議会の認知度向上に向けた広報活動の支援
・水害を中心とした防災活動の推進および支援
・保育所入所枠の確保や教育環境の向上
・ビジネスマッチングのサポート活動
・湾岸エリアのまちづくり計画推進
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施策の中には抽象的で具体性があまり見えてこないものもあるが、その内容は多岐に渡っており、港区が地域活性化にかける意気込みが感じられる。

■弁天町駅周辺はどう変わる?

「弁天町駅周辺まちづくりビジョン」は港区のまちづくりビジョンよりも、より微細な視点で方向性を定めるものになるだろう。

2023年12月の第2回検討会・2024年2月の第3回検討会では、まちづくりのコンセプトとビジョンの素案について協議が行われた。「大阪のニシの玄関口」としてふさわしい拠点の形成を目指して検討が進められている。

港区が示す区全体の課題とそれほど大きな違いはないが、検討会の中で解決すべき課題として挙げられたポイントは以下のとおり。

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・区全体で偏りのない人口増加につなげるべく、波及効果のある賑わい醸成が必要
・若年層にも魅力を感じてもらえるような環境づくりが必要
・海が近いことから、津波避難施設のさらなる整備を進めるべき
・交通利便性は高いものの、幹線道路が地域を分断している現状もある
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上記の課題を解決した上で、弁天町駅周辺エリアが目指す街の姿としては、来訪者向けの宿泊機能・商業機能を備えていること、地域住民同士の交流、駅周辺の回遊性向上などが挙げられている。

議事要旨を見ると、ある委員は「町工場や物流施設が多いエリアのイメージ刷新を図る必要がある」と発言した一方で、それとは対象的に「町工場が多いという今ある資産・アセットを活発に発信していく視点があってもいい」などの意見もあったようだ。

また地域住民からは、「子育て施設の充実」「これ以上のマンション開発はあまり望まない」といった要望も寄せられている。

なお、弁天町駅周辺にはまとまった広さの土地がいくつかあるのが現状だ。例えば、大阪市立市岡商業高校が天王寺商業高校と統合されたことにより、校舎の跡地が生まれている。

そのほか、大阪市教育センターも大阪教育大学天王寺キャンパス内に移転、交通科学博物館も営業を終了し、収蔵資料が京都の鉄道博物館に移された。

いずれの跡地も弁天町駅から近い場所にあるが、明確な活用方法は決まっていない。

まちづくりビジョンの内容が固まってくれば、それぞれの跡地に何ができるのか、方向性も見えてくるのではないだろうか。今後の議論の行方には要注目だ。

朝霧瑛太/楽待新聞編集部

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最終更新:3/27(水) 19:00

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