【新興国経済】不動産不況と地方債務問題が立ちはだかる中国経済

3/18 9:30 配信

週刊 金融財政事情

 3月5日から11日にかけ、北京で全国人民代表大会(全人代)が開催された。開催初日には李強首相が「政府活動報告」を読み上げ、今年の政府目標などを示した。最も注目されていた今年の経済成長率目標は、昨年同様「5%前後」で据え置かれた(図表)。
 財政政策の行方を占う上でポイントとなる財政赤字目標は、名目GDP比で3.0%とされ、昨年の3.8%から縮小した。ただし、通常予算に含めず財政赤字にも算入されない超長期特別国債が1兆元増発される。地方政府の特別債発行額目標も3兆9,000億元と、昨年の3兆8,000億元から拡大している。中国政府は10月にも1兆元の特別国債発行を決定しており、これらの財政政策の効果を持続させることが、中国景気を下支えするとみられる。
 だが、こうした前提の下でも、経済成長率の目標達成のハードルは高い。昨年の実質GDP成長率は前年比5.2%で、目標とする「5%前後」を上回ったが、これはロックダウンや行動規制などのゼロコロナ政策により成長率が低下した2022年からの反動で押し上げられた面がある。足元では、雇用・所得不安により消費者マインドが低迷し、家計は予備的貯蓄を増加させている。金融緩和策についても、元安に伴う資金流出や銀行の利ザヤ縮小の懸念などから小出しにとどまっている。
 引き続き大きなリスクとなるのは、深刻化・長期化する不動産不況および地方政府の債務問題だ。国際通貨基金(IMF)は2月に公表した「対中4条協議報告書」で、中国における新築住宅の購入需要が今後10年で最大55%減少すると予測。「不動産セクターの予想以上の収縮が、民間部門の需要をさらに圧迫し、信頼感を悪化させ、地方政府の財政負担を増幅させる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
 不動産セクターの低迷は、地方政府が歳入源として依存してきた土地使用権売却収入を押し下げ、地方政府の財政を圧迫する。中国財政省によれば、23年の同収入は21年比でマイナス33.4%(すでに不動産不況入りしていた22年比でもマイナス12.3%)と落ち込み、厳しさを増す一方だ。
 23年12月には地方公務員の給与未払い、1月には債務問題が深刻な地方政府に対して中央政府がインフラ事業の停止を命令したという報道も出ている。政府は10月に発行した特別国債で調達した資金を地方政府にすべて移転支出するなど、財政難に陥る地方政府の債務リスク抑制へかじを切った。しかし、財源不足の根本的な解決にはなっていない。
 今般の政府活動報告では、昨年同様、不動産や地方債務リスクの防止・解消が重点施策として挙げられた。今後、構造的な問題を抱える地方政府の財源不足解消に向けて、より実効性のある財政改革が打ち出されるかが注目される。(「週刊金融財政事情」2024年3月19日号より転載)

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最終更新:3/18(月) 9:30

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