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昔より夏日は本当に増えたのか?気象データから学ぶ東大生的「数字の見方」の要諦 ぼんやりとした物事の「理由」を明確にする

5/9 11:32 配信

東洋経済オンライン

数学を使って世の中の仕組みを知ることで、物事を見る視野が広がります。現役東大生の永田耕作さんが数学の魅力について解説する連載『東大式「新・教養としての数学」』。今回は「身近な数字の見方」について解説します。

■今年の4月も暑い日が多かった! 

 全国的に暑い日が続いています。気象庁によると、今年4月に東京で夏日を観測したのは8回で、統計を開始してから最多の日数となっています。

 近年地球の温暖化が進んでいるのは多くの人にとって周知の事実であり、それを強調するように「夏日が増えた」「気温が高い日が続いている」「観測史上最速の真夏日」など、暑い日にフォーカスする報道が増えています。

 気象庁のデータを見てみると、東京の夏日(最高気温が25度以上の日)の日数は1904~1913年平均で83.6日、2004~2013年平均で119.3日ですから、100年前と比べて大きく増加していることがわかります。

 ここでは夏日だけでなく、「冬日」の日数も見てみましょう。

 夏日や冬日という言葉は、気象庁がデータの整理や報道のために使用している言葉であり、以下のように定義されています。

夏日:最高気温が25度以上の日

真夏日:最高気温が30度以上の日
猛暑日:最高気温が35度以上の日
冬日:最低気温が0度未満の日
真冬日:最高気温が0度未満の日
 夏日や真夏日などが「最高気温」を基準としているのに対し、冬日は「最低気温」を基準にしているところに特徴があります。冬場に重要なのは日中の気温よりも、「朝晩何度まで冷え込むか」だと考える人が多いことが背景にあるでしょう。

 また、これは細かな点ですが、「以上」はその数を含み、「未満」はその数を含まないため、最高気温が25.0度の日は夏日になりますが、最低気温が0度の日は冬日にはなりません。

 あらためて冬日の日数を見てみると、1904~1913年平均で62.8日、2004~2013年平均で3.1日ですから、100年前と比べて激減しており、2004年、2007年、2009年は0日でした。

■東京では最低気温が氷点下になるのが珍しくなった

 これをもう少し分析してみましょう。冬日の日数は1904~1913年平均で約60日。夏の時期は冬日になる可能性がほとんどないと考えると、冬日になりうるのは東京であれば12~2月、遅くとも3月頭くらいまでだと考えられます。

 12~2月はうるう年でない場合ちょうど90日間であり、そのうちの60日ということは、3日に2日は最低気温が氷点下になっていた、ということ。つまり、100年前の東京は、冬の時期は最低気温が氷点下になるのは普通でした。それが近年は、年にたったの数日です。東京では、最低気温が氷点下になるのが珍しい事象になっているのです。

 ただ、この分析で違和感を持つ人がいるかもしれません。現代の気温として使ったデータは2004年から2013年までの10年間。最新のデータであれば2014年から2023年までの10年間を使用するべきではないのか、と。

 実は、2014年に東京の気象観測地が変わったため、それでは正確な比較にならないのです。

■北の丸公園のほうが気温が低い

 それまで千代田区大手町で観測していた東京の気象情報は、2014年以降、千代田区の北の丸公園で観測するようになりました。2014年当時の気象庁の資料によると、最低気温は北の丸公園のほうが年平均で約1.4度低いとされています。つまり、この10年間は東京で冬日が観測されやすくなったといえそうです。

 実際、2014~2023年平均の冬日日数は10.5日となっており、2004~2013年平均の3.1日より増加しています。ただし、2023年10月~2024年3月については、冬日が観測地の変更後、最も少ない2回にとどまっています。

 気になるのはそれだけではありません。東京、横浜、名古屋、京都と全国13地点における真夏日と冬日の日数変化量(1904~1913年平均-2004~2013年平均)を見ると以下になります。

●冬日
東京:▲60、横浜:▲58、名古屋:▲67、京都:▲70、全国13地点:▲21
●真夏日
東京:+21、横浜:+22、名古屋:+14、京都:+15、全国13地点:+7
 東京などの大都市圏は他の場所よりも冬日の日数の減少、そして真夏日の日数の増加の割合が大きくなっています。

■ヒートアイランドも気温が下がらない一因

 この原因とされているのが、「ヒートアイランド現象」です。ご存じの方も多いと思いますが、ヒートアイランド現象とは、都市部が周囲の郊外や田舎の地域に比べて気温が高くなる現象です。

 これは、都市での建物や舗装された地面が太陽の熱を吸収しやすく、また、植物が少ないために冷却作用が弱まることが原因で起こります。

 さらに、車やエアコンなどから排出される熱も都市の温度を上昇させます。この現象は、夜間に特に顕著になります。都市が熱を保持し続けるため、昼間の熱が夜になってもなかなか逃げません。

 このことが、夜間時の気温が下がらず、最低気温が氷点下にならないことにつながっているのです。

 このようにデータを使って詳細に分析していくと、ぼんやりとしか見えていなかった物事の「理由」が明確になります。

東洋経済オンライン

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最終更新:5/9(木) 11:32

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