「忙しすぎて本が読めない」→3分で終わる「ズルい速読術」を試してみて!

7/1 12:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長/Musashino Valley 代表/LINEヤフーアカデミア 学長であり『1分で話せ』の著者・伊藤羊一氏と、IT批評家で『プロセスエコノミー』の著者・尾原和啓氏の共著、『努力革命』が5月に発売。重版が決定し、ますます話題を集めている。『努力革命』発売記念鼎談、第3弾の今回は、サイバーエージェント常務執行役員CHOの曽山哲人氏と、本書の内容を語り合う。鼎談の模様は、前・中・後編の3回に分けてお届けする。

● 生成AIの活用で「アナログな努力」は減らせる

 尾原和啓氏(以下、尾原):曽山さん、今日はありがとうございます。

 曽山哲人氏(以下、曽山):ありがとうございます! よろしくお願いします。

 尾原:「生成AIを活用すればアナログな努力を減らせる」と、SNSにポストしてくださいましたが、読んでみていかがでしたか?

 曽山:最初は、お二人が『努力革命』でどういうお話をされるのか、わからなかったんです。でも、本の帯が重要でしたね。「『ChatGPT使えねぇ』って舐めてない?」という帯を見て、「僕もちょっと舐めてるかも」って思っちゃったんですよ。

 ChatGPTといった生成AIに対するフレンドリーさは持っているけど、使いきっているとは言いきれない感覚がありました。「もっと使いたいな」と思っている中で、帯にそう書いてあったので、「これは何かヒントがあるかも」と思いました。

 本の最初に、生成AIの具体的な使い方が提示されていますよね。僕にはそれがすごく大事だったんです。

 尾原:本当ですか?

 曽山:はい。「まずはざっくり聞いて、そこから噛み砕いていけばいい」と言っていて、思考プロセスについては後半に書いてあるじゃないですか。この本の作り方は、すばらしいなと思いました。

 伊藤羊一氏(以下、伊藤):なるほど。

 曽山:孫(正義)さんの事例がありましたよね。「孫さんの本の要約をまとめて」とか、「孫さんのキャラクターを想定して、アドバイスを10個くらい書いて」とか。僕はやったことがなかったので、速攻で孫さんの本を要約しました。

 尾原:実際にやってみたんですか? 早い!

 曽山:やりました。藤田晋(サイバーエージェント代表取締役)の本の要約、さらには曽山哲人の本の要約をしました。僕の本の要約が、ドンズバだったんですよ。「これはすごい!」と思って、感動しました。

 毎月、サイバーエージェントグループの人事が100人くらい集まる勉強会があるんです。僕から話をする時間があって、そこでまず、「『努力革命』がおすすめだから全員買ったほうがいい」と言いました。

 伊藤:おお。

 曽山:今チャットに入れたのは、僕が勉強会でみんなに送ったテキストです。まさに、『努力革命』で学んだことを書いて送ったんです。

 まず、「生成AIは才能開花にものすごくプラスになるから、絶対に使ったほうがいいよ」と。「アイデアを出したい・俯瞰力を上げたい・時短したいと考えて困ったら、私はとりあえずAIに聞いているよ」と伝えました。

 そして実際の質問例を挙げて、「サイバーエージェントの藤田晋さんの本と、その要約を探して、特に重要な内容を10個教えてください」と聞いたらすごく良かったから、1回やってみてほしいと言いました。

 すると、みんな本を買ってくれたんです。

 尾原:ありがとうございます。

 曽山:僕の本を要約したのが、「ChatGPT-4 omni(オムニ)」のリリース直後だったんですよ。まだ触っていない人がけっこういて、みんなに「本のピックアップ」「本の要約」「アドバイス10個」を見せたら、「これはすごい」「こうやって使うんですね」となりました。生成AIを使う力が、もう一段上がったと思います。ありがとうございます!

 尾原:いえいえ。今おっしゃった、「使いきれていない感覚」のお話と「参考としたい人の本を要約してもらって、そこからアドバイスをもらう」お話は、本を書く上で、ものすごくがんばったところです。だから、それぞれについてお話ししたいと思います。

● 「使いきれていない感覚」の正体

 尾原:ChatGPTを使いきれていない感覚は、多くの人が持っています。でも、それ以上に「親しみやすさ」を感じていない人が多いんですよ。

 曽山:そうですよね。

 尾原:「正解のプロンプトを入力しないといけない」と言いますが、そもそもChatGPTは汎用AIなので、どんな言い方をしても、何らかの答えに近いものを生み出してくれます。だから、本当は正解のプロンプトなんてないんです。

 それなのに、「失敗しちゃダメだ」という感覚を持っている人が多いので、まずは親しみやすさを感じていただきたかったんですよね。

 曽山:それは大きいですよね。

 伊藤:曽山さんも、「絶対に使えるよね」とわかりつつ、日常的には使わないハードルをお持ちだったんですね。

 曽山:僕の場合、例えばわからない単語があったら、「とりあえずChatGPTに聞いてみよう」と思って聞いているので、日々使っているほうではありますね。

 また、マネージャー向けの研修で、最先端のマネジメントのトレンドを伝える時、コンセプトメイキングをしたい時に、「こんな概念なんだけど、いい言葉はない?」と言って、言葉の案を作る「壁打ち」として使っているんですよ。

 でも、「X(旧Twitter)」を開くかのようには活用していないなと感じていたので、もっと使える余地があることは、感覚的にわかっていたんです。

 伊藤:なるほど。多くの人がそうなんだろうね。

 尾原:僕たちは、「インターネット=検索」のようなイメージを持っています。「何かの説明をしてください」「回答をください」という使い方だと思い込んでいるところがあるんですよね。

 曽山:そうなんですよね。

● ChatGPTは「ベクトル化エンジン」

 尾原:次に、アイデア出しをする「連想マシン」としての使い方です。「本の要約からのアドバイスは、曽山さんに絶対フィットするだろうな」と思いました。

 ChatGPTなど、LLM(大規模言語モデル)の大きな機能は、言語化エンジンであると同時にベクトル化(数値化)エンジンなんですよ。

 曽山:ベクトル化エンジン。

 尾原:つまり本を要約する中で、著者の成長ベクトルや価値観ベクトルをまとめてくれる力がめちゃくちゃ強いんです。

 曽山:間違いないですね。

 伊藤:著書がある人は、その内容がベクトル化のベースになっていきます。でも、ChatGPTにはメモリ機能があるから、「この人はこんなことを考えている」「ここを大事にしている」と、記憶していってくれるじゃないですか。

 だから、著書の有無にかかわらず、付き合えば付き合うほどベクトル化のプラスになっていくという理解でいいですよね。

 尾原:そうですね。ChatGPTは時々ウソをつきますが、基本的には生成エンジンなので、トレーニングされたデータや入力の中で、「真ん中の答え」を紡いでいってくれるんです。

 例えば、孫さんの本や思想を入れると、「この人はこういう人だよ」と言って、真ん中のベクトルを出してくれます。

 曽山:修練したものの中から、「これですよ」と。

 尾原:そうです。また、メモリ機能があって、「あなたの入力傾向はこうですね」と言って、蓄積していってくれるんです。

 曽山:なるほど。

 尾原:ChatGPTは、成長ベクトルが自然と溜まっていくエンジンになってきています。それが意外と知られていなくて、使いきれていない部分なので、もったいないなと思ったんですよね。

● 減らすべき「アナログな努力」とは

 尾原:サイバーエージェントのように、新しいことへの挑戦が多い会社は、新しいことをゼロから考えるのがけっこう大変ですよね。

 曽山:そうですね。

 尾原:羊一さんのベストセラーに、『1分で話せ』があります。

 『1分で話せ』では、「ロジカルシンキング」が大切だと言って、学び方をステップにして書いていますが、ロジカルシンキングは「引き出しの多さ」です。

 ゼロから分解の仕方を考えるのは難しいので、大量の知識を学習しているChatGPTに「引き出し力」を借りる。そこからスタートすればいいんじゃないかと思うんですよね。

 そういう観点で見た時に、減らしてもいいアナログな努力は何ですか?

 曽山:人間は、脳のメモリに限界があるんですよね。記憶容量が限られているので、大量にデータがある生成AIを、「外部ハードディスク」としてちゃんと使うことが大事です。

 僕は、経営者の方から人事の相談をいただくことがあるのですが、その時に出せるアイデアは、「記憶の中で思いつくこと」になってしまいます。本質的なことを思っていても、忘れている可能性があるので、そのアイデアを外部の容量にできればいいと思うんです。

 伊藤:なるほど。

 曽山:孫さんや藤田の知恵を使ったほうがいいので、これはすごく大事な考え方だと思っています。

● 仮想相談相手「ソヤマンGPT」の開発と活用

 曽山:実はAIのチームに、「ソヤマンGPT」を作ってもらっているんです。

 尾原:おもしろいですね。

 曽山:例えば、グループ会社の社長から相談を受けた時に、すべての本・YouTube・記事をソヤマンGPTに食べてもらいます。まずは僕だけが入力するのですが、出てきた回答には、40点のものもあれば80点のものもあるんですよ。

 僕がそれをリバイス(加筆修正)すると、ゼロから文書を作る「時間コスト」が短くなりますし、忘れていたことを引き出してくれます。この「時短」と「ハードディスク」がポイントです。その結果、満点の回答が出せるんですよね。これはすごく大きいなと思っています。

 伊藤:総じて、何点くらいですか?

 曽山:60点くらいです。いいところをついているので、笑っちゃう時もありますね。

 伊藤:なるほど。

 曽山:例えば、「マネージャー研修のプログラムを作りたいんですけど、何に注意すべきですか?」という問いがあった時に、僕が絶対に聞くのは、「何が研修の成果なのか、先に成果定義を決めてください」です。いわゆる、ドラッカー的思考ですよね。

 PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)を読めるようになるのか、事業計画を立てられるようになるのか、対話力で社員のハートをつかめるようになるのか。この3つでもぜんぜん違うので、ソヤマンGPTに、まずは「最も重要なことは成果定義です」と伝えます。

 伊藤:なるほど。逆に、イケてない40点はどんなところですか?

 曽山:当然ながら、僕がWebで文字に落としていないものです(笑)。

 伊藤・尾原:(笑)。

 曽山:答えが出るわけがないんです。でも、先ほどの尾原さんのお話で言うと、真ん中の答えを出してくれるのが生成AIのすごいところです。中身が正しいかどうかは別にして、もっともらしく言ってくれるところが素敵なんですよね。

 尾原:そうですね。

 曽山:例えば、経営幹部の育成について、僕はそんなに話していないわけです。別に隠しているつもりはないんですけど、表に出す機会がないんですよ。

 また、リモート・フルリモートなどの働き方について、根本的な考え方や「今どう見ているのか」など、タイムリーなものになればなるほど、適当に答えます。

 「ぜんぜん違うけど、もっともらしく言っているな」という回答は、点数が低いわけです。

 伊藤:なるほど。

● 「経営者ハードディスク」のススメ

 尾原:おもしろいなと思ったのは、40点の回答に曽山さんが加筆修正していくと、社内ハードディスクに足りないところが足されていくことです。

 曽山:そうですね。まず僕がソヤマンGPTに質問を入れて、「ソヤマンGPTの回答」があって、そのあと「曽山の回答」を入れて、手作業でかかった時間を書きます。

 すると、回答の内容・質・スピードを、エンジニアのみんながバージョンアップしてくれます。これは最近、プロトタイプ的に実験が始まったところです。

 尾原:ふだん表に出さない40点の部分がどんどん足されていくから、「外部では言ってないけど実は」といった秘伝のタレ、「ソヤマンハードディスク」が作られていくんですね。

 これは全経営者、やったほうがいいですよね。

 曽山:絶対にやったほうがいいです。

 尾原:「『経営者ハードディスク』を外部に出さないかたちで作りませんか?」と言ったら、めちゃくちゃ売れる気がします。

 曽山:売れると思いますよ。例えば企業内版の「GPTS」は、ノウハウが文字化されていないんですよ。書籍を出している人が最低ラインになりますよね。

 でも、社内報などで発信されている経営者の方は、作って売れますよね。

 伊藤:そうですね。

 尾原:日々アウトプットしていると、ChatGPTのメモリ機能のように言葉が蓄積されていきます。本やブログなどでアウトプットしていなくても、例えばサイバーエージェントが運用している「GEPPO」など、上司が日々メンバーにフィードバックしている言葉を蓄積していけば、結果的にその人のベクトルが決まっていくかもしれませんね。

 曽山:そう思いますね。

 伊藤:メンバーの人たちが、経営者やマネージャーの考えを認識することがめちゃくちゃ大事だと。日々のアウトプットが蓄積して、「○○GPT」のようなハードディスクができること自体が重要で、それがメンバーにとってわかりやすいことにつながるから、「アウトプットしなよ」ということですよね。

 曽山:そうです。

 尾原:アウトプットすればするほど、自分の成長ベクトルや決断ベクトルが見える化するから、アドバイスをもらいやすくなる。そしてそれが蓄積していくと、40点の回答が80点になる。だから時短にもつながる。これはダブルですよね。

 曽山:まさに。

 伊藤:それはダブルだわ。

 尾原:『努力革命』には羊一さんの事例として、「孫さんの書籍などから情報を集めて、孫さんのキャラクターを想定して、アドバイスをもらう。そこに自分の設定を加えて、意思決定や決断の壁打ち相手になってもらう」といったことが書いてあります。

 そういうかたちでアウトプットする文化を作って、アウトプットを蓄積していくと、5人の上司に一気に相談できますし、多様な仮想相談相手を作っていくことができそうですね。

 伊藤:「相談相手の1人が孫さん」みたいなね。

 尾原:孫さん、藤田さん、曽山さんの3人に、同時に相談できますよね(笑)。

 曽山:(笑)。

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最終更新:7/1(月) 12:02

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