「大企業さえ新卒採用偏重からシフト」 日本を襲う《採用氷河期》のシビアな現実

6/21 13:02 配信

東洋経済オンライン

ここ10年ほどの間に採用市場の環境は劇的に変化しました。採用される側の人数の減少という構造的な要因により、採用は激しい人材争奪戦の様相を呈しています。そのシビアな現実を『小さな会社の採用は「スキマ」を狙え ライバルより低条件でも人が集まる方法』より一部抜粋・再構成のうえお届けします。

■「採用される側の人数の減少」が採用を難しくさせる

 私が採用担当として活動していた2013年当時、採用現場でよく聞かれていたのは、次のような声でした。

 「お金をかけずに採用したい」

 「採用に割く時間がない」

 「景気が悪くなれば、また採用しやすくなるのでは?」

 「新人は“石の上にも三年”が大事」

 今、採用で苦労している皆さんにとっては「何を甘いことを言っているんだ!」と感じるかもしれません。

 実際、リクルートワークス研究所の大卒求人倍率を見ても、2013年卒業生の倍率が1.27倍だったのに対し、2025年卒業生では1.75倍へと上昇しています。

 ただ単に倍率が上がっただけではなく、今はどんなに努力しても採用が難しい時代なのです。採用する側の意識が高まっても、思うように採用できない要因の一つに「採用される側の人数の減少」が挙げられます。

 総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によると、日本の生産年齢人口(15歳〜64歳)は、1995年の約8716万人をピークに減少に転じました。その後、一貫して減少を続け、2020年には約7410万人まで減少しています。

 さらに今後10年間で、500万人以上減少すると推計されており、これは日本で8番目に人口の多い福岡県とほぼ同じ規模の減少です。では、なぜここ数年で急激に人手不足が深刻化したのでしょうか? 

 日本の生産年齢人口は1995年から減少していましたが、これまで総務省統計局の労働力調査によると労働力人口(働く意欲と能力のある15歳以上の人の数)は大きく減少していませんでした。その理由は「女性や高齢者の就業率の上昇」「外国人労働者の増加」などにより、労働力の供給が補われていたためです。

 しかし、コロナ禍の終息後「女性の労働力率が過去最高水準に達した」「外国人労働者数が過去最多を記録した」といった状況になり、労働力供給の限界が見えてきました。

 「それはデータ上の話では?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、近年の経済ショック時の求人倍率の変化を見れば、現状がより明確になります。

■「人手不足倒産」が過去最高ペースで増加

 厚生労働省が公表する「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の有効求人倍率は、リーマンショックが起こった翌年は0.5倍を下回るほど低下しました。

 一方、コロナショックが起こった翌年の有効求人倍率は1.1倍程度で、1倍(求職者=求人数)を下回ることはありませんでした。つまり、コロナ禍であっても、求職者の数より求人数のほうが多かったのです。

 こうした人手不足が深刻化する中、帝国データバンクの調査によると「人手不足倒産」が過去最高ペースで増加していると言われています。相談のある企業の状況を見渡しても、既存社員の高齢化や新規採用の難航など、人手不足の影響を感じずにはいられません。

 これからの採用戦略は、単なる自社アピールではなく、より根本的な視点からの見直しが求められる時代に突入しています。

 日本経済新聞社の採用計画調査によると、2025年度の主要企業の採用計画では、中途採用の比率が過去最高の46.8%に達し、5割に迫る水準まで高まりました。

 2017年度までは20%を下回っていたことを考えると、8年間で中途採用比率が2倍超になっています。これは、新卒採用偏重だった大企業が、中途採用の強化に乗り出したことを意味します。

■企業規模によって採用難度に違い

 従来、大企業は新卒採用中心、中小企業は中途採用中心という住み分けがありましたが、現在では人材獲得競争が激化し、その境界線がなくなりつつあります。

 また、新卒採用が手薄になったわけではなく、みらい研究所『就職白書2025』によると1000人以上の企業の約6割、5000人以上の企業の約5割が採用計画に対して未充足と回答しています。

 一方、300人未満の企業では6割以上が未充足であり、リクルートワークス研究所の大卒求人倍率も1000人以上の企業で1.05倍、5000人以上の企業で0.34倍、300人未満の企業では8.98倍と、企業規模による採用難易度の違いが顕著です。

東洋経済オンライン

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最終更新:6/21(土) 13:02

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