「まいばすけっと」は本当にコンビニキラー? 現地に行ってみた《楽待新聞》

11/4 19:00 配信

不動産投資の楽待

「あの店、そういえば至るところで見かけるな」「気がついたら増えていたような気がする」…。

そんな風に知らぬ間にひっそりと勢力を伸ばし、周囲の店舗から客足を吸い取るキラー的存在。巷で「コンビニキラー」と呼ばれるチェーン店、「まいばすけっと」のその2つ名を聞けば、本当にコンビニをしのぐほどの勢力があるのかと驚く人もいるかもしれない。

イオンが運営するまいばすけっとは、2005年に1号店をオープンした比較的新しい業態の小型食品スーパーだ。2014年に500店舗を達成し、2022年に1000店舗を超えた。現在では1100店舗以上を運営している。

店構えはコンビニに似ているが、一部の飲料や弁当などが比較的安い。しかしやや隠れた場所に出店していることが多く、意外と認知度は高くないようだ。

そんなまいばすけっとは本当に「コンビニキラー」なのか? 実態を探るべく、今回はいくつかの店舗を訪れて商品構成や立地戦略を調べてみた。

■出店地域は首都圏と北海道だけ

「まいばすけっと」は店舗数の増加が著しく、チェーン店として規模が大きいものの、地方ではあまり知られていない。東京・神奈川・千葉・埼玉の1都4県と、北海道にしか出店していないためだ。

首都圏ではイオングループのまいばすけっと株式会社、北海道ではイオン北海道株式会社が運営している。北海道には44店舗しかなく、店舗のほとんどが首都圏にある。

だが「小型食品スーパー」と位置づけられているように店舗自体が小さく、駅前・繁華街に出店していないため、都内在住でもあまり見かけないという人は多いかもしれない。

まいばすけっとは売場面積の標準が60坪、原則として最低面積が40坪、広い店舗では80坪タイプも運営している。コンビニの標準的な店舗面積が55~60坪程度であるため、まいばすけっとはコンビニと同程度か、一回り大きいサイズの面積だと分かる。

商圏は半径500メートル、徒歩3~5分圏内の最低500~600世帯を想定しているという。都市圏におけるコンビニ並みの水準だ。

■「新小岩駅」周辺の4店舗を散策

出店先の立地や雰囲気を調べるため、葛飾区の南端部にある新小岩駅周辺の4店舗を実際に訪れてみた。

なお同駅は江戸川区役所方面の南口側が栄えており、小規模な歓楽街があるほか、駅から南に向かうアーケードの新小岩ルミエール商店街が常に歩行者で賑わう。

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<新小岩駅周辺の4店舗>

(1)東新小岩5丁目店…北口側、たつみ橋交差点近く

(2)新小岩1丁目店…南口側、都道308号線付近

(3)松島4丁目店…南口側、商店街から2ブロック離れた住宅街

(4)新小岩ルミエール店…南口側、商店街内の店舗
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上記の中で駅に最も近いのは(1)、(2)だが、それでも駅から少なくとも徒歩で4分かかる。いずれも駐車場はなく、主要道路近辺か少し離れた住宅街に位置している。出店しているのは雑居ビルの1階か集合住宅の1階だ。

商圏500メートルとは言うが、南口側の(2)(3)(4)は半径約100メートルの同心円状の位置にあり、店舗同士の距離は近い。

ルミエール商店街は店舗数約140で、平均的な商店街の3倍程度の規模となっている。週末には約3万人が訪れると言われており、周辺一帯はマンションも多く並ぶ住宅街だ。

商圏である葛飾区新小岩の1・2・3丁目及び、江戸川区松島の3・4丁目の世帯数は合計で1万4311、人口は2万3000人に及ぶ。店舗が集中しているのは世帯数が多いからであろう。コンビニキラーとは言われているものの、100メートル以内にコンビニがある店舗もみられた。

■コンビニに似た機能、たばこの取り扱いも

店内の様子を見てみよう。コンビニ+スーパーといった様相で、どちらかというとスーパーに近い。

入口付近に青果や野菜類が置かれ、精肉も置いてある。パックの惣菜も陳列している。店内に調理スペースはなく、工場で調理したものだ。トップバリュ(低価格と品質を両立させたイオングループのプライベートブランド)の加工食品や冷食類も充実している。

何より、一部商品の価格が安いことが特徴的に感じた。コンビニではコーラなどのペットボトル飲料が150円以上で、弁当も600~700円台であることが多いが、まいばすけっとのコーラは130円台で、弁当類は600円以下だ。

10貫の握りは税込647円だった。100円以下の菓子パンも充実している。近くにコンビニがあったとしても、まいばすけっとを選んでしまうだろう。レタスは1玉200円台で、精肉はアメリカ産の小間切れ肉が100グラムで142円。食材の価格は安売りスーパーには負けるが、特段高いわけではない。

ちなみに新小岩の4店舗では(1)~(3)の店舗でたばこを販売し、(4)ではATMを設置していた。

喫煙率が低下しているとはいえ、たばこはコンビニで売上の4分の1を占める主力商品である。まいばすけっともコンビニのような機能を果たしていると言えよう。客層も、スーパーのように食材を買い込む客、コンビニのようにアイスだけや弁当だけを買う客と、両タイプが見られた。

■オフィス街などスーパーマーケットの過疎地にも出店

まいばすけっとの出店先は住宅街が主だが、オフィス街に出店する例もみられる。

たとえば、駅周辺に西友やサミットなどがある新小岩駅と比べ、スーパーが少ない飯田橋駅。周辺はオフィス街で駅の西側には法政大学や東京理科大学があり、学生街としても知られる。

同駅周辺の東口側には、以下の2店舗がある。

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<飯田橋周辺の店舗>

(5)飯田橋駅北店…住友不動産飯田橋ファーストタワーの1階

(6)飯田橋駅南店…都道8号線沿いの賃貸住宅1階
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(5)は地上34階建ての高層オフィスビル、「住友不動産飯田橋ファーストタワー」の1階に出店している。(6)は中層集合住宅の1階だが大通り沿いにあり、周辺はオフィス街だ。

いずれもオフィス街向けに特化した印象はなく、新小岩と同様に生鮮食品や冷食、調理用の加工食品が充実していた。文房具類もコンビニよりは少ない。

両店舗周辺はオフィスビルが目立つとはいえ、通りから離れれば集合住宅も多く並ぶ。半径500メートルを基準とすると、(5)の店舗は文京区後楽園の1・2丁目、文京区春日1・2丁目、新宿区新小川町、新宿区下宮比町が商圏ということになる。

北方にまいばすけっとの東五軒町店や春日店があるため、上記のすべてが商圏とはならないだろうが、最大で見積もると商圏世帯は6913、人口1万1000人の規模だ。少なく見積もっても、店舗のある後楽園2丁目だけで約800世帯あり、最低500~600世帯という要件を満たす。

(6)の商圏は千代田区飯田橋の1~4丁目、千代田区富士見1丁目の一部、2丁目の一部である。大通り沿いの千代田区飯田橋の1~4丁目だけでも世帯数1681、人口は約3000人だ。

前述のように飯田橋はスーパーの過疎地であることから、まいばすけっとは周辺住民にとって貴重な食材調達の場となっていることが考えられる。

■「コンビニキラー」となるのはこれからか?

まいばすけっとは近隣にコンビニがある店舗も多く、「コンビニキラー」という言葉はやや誇張表現といえるだろう。

しかし、コンビニの居抜き物件に出店することも多いようだ。筆者の所感だが駅から離れたやや目立ちにくい場所にあり、かつてのミニストップが出店していそうな場所にある。

タワマンの1階や団地内に出店する例もあり、小商圏を対象に今後も店舗数を拡大していくことだろう。まいばすけっとは国内2000店舗を目標としている。

追随するような動きとして、セブン&アイHDは今年2月に新コンセプト店「SIPストア」を松戸市にオープンした。売場面積は88坪と通常のセブンイレブンの1.8倍で、コンビニとスーパーを合体させたような商品構成となっている。

すでに飽和状態にあるコンビニ市場だが、今後はまいばすけっとのような「コンビニ+スーパー」業態で競争が激化するのかもしれない。

山口伸/楽待新聞編集部

不動産投資の楽待

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最終更新:11/4(月) 19:00

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