10年間、既婚上司に片思いし続けた、34歳「純情な美人」を虜にした「ムダに褒めない男」の意外な魅力

5/16 12:02 配信

マネー現代

「10年間の片思い」から覚めた女性

(文 高須 美谷子) 言うまでもないが、理想の結婚生活、理想のお相手というのは人によって違う。

 しかし結婚相談所でのお相手探しとなると、女性は高学歴、高身長、高収入を求め、男性は見た目と若さを求める。そのほかにも人気の職業、気遣いなど、優しい笑顔など、いわば“条件面”で秀でている人が人気の婚活者という画一的なものが多い。

 日常生活での出会いならば、まずはフィーリングが合うかどうかが、第一条件となりやすいのだが、ここが時間の限られた条件婚活の不条理なところである。

 都内の企業に勤める奈津美さん(34歳・仮名)は、10年にもおよぶ上司への片思いを終えて結婚相談所の門を叩いた女性だ。

 他人から褒められると「下心があるのではないか」とマイナスなイメージを持ってしまう奈津美さんは、仕事で成果を出してもまったく褒めない上司の性格が好きで、「私たちは気持ちが通じ合っていた」という、真実とも妄想ともつかない状態のまま、30代に突入。

 その経緯は<【前編】34歳の女性「10年間の恋」を叩き落とした、既婚上司の思いがけない「飴とムチ」…上司は起業して会社を去り、ひとり取り残された>で著したとおりだ。

 上司が既婚者だったこともあり、気持ちを打ち明けることもなく時は過ぎた。しかしある日突然上司が会社を辞め起業することを聞く。当初は自分も誘われるはずだと思っていたが声がかかることはなく、上司があっさりと退職してしまった。

 そんな悲しみを胸に抱え、吹っ切るために結婚して自分の幸せを取り戻そうと決意したという。

褒められて、幻滅した

 奈津美さんは最初のチャレンジとして、婚活パーティーに参加することになった。華やかさは欠けるものの、美人で落ち着いた物腰や丁寧な態度は、結婚相手として好感を持たれる。パーティーで奈津美さんは一番人気となった。しかし、誰に対しても首を縦に振らなかった。

 婚活者たちは皆、奈津美さんを褒めてアプローチするのだが、当の奈津美さんは「人の気を引こうとして、思ってもいないことを口にしてると思うんです」「厳しく、ちゃんと意見を言ってくれる人がいいんです」と、気持ちを切り替えが一切ない。

 婚活パーティーで理想とはかけ離れた現実に直面し、大きな失望感を抱いた奈津美さんに、私はちょうど募集が始まったメタバース婚活の話を振ってみた。

 メタバース婚活とは、全員と1対1のトークタイムがあることや、希望が合う相手とマッチングするなどは普通の婚活パーティーと変わらないが、それが全てメタバース空間内で顔や条件を伏せたままで行われる。

 最大の特徴は条件に縛られず、フィーリングの合う相手とのマッチング率の高さだ。このスタイルに奈津美さんはぴったりではないかと考えたのだ。

 奈津美さんが参加したメタバース婚活は、地方自治体が主催するもので、参加者はその自治体在住の方、あるいは移住を希望する方、その自治体に興味を持っている方が対象となる。

 奈津美さんの勤務先の会社の支社がその自治体にもあり、万が一にでも婚活が成就すれば、そこへ異動願をだしても良いな。いや、いっそ会社を辞めて新たに地元企業に職を探すのも良いかもしれない。

 好きだった上司のいなくなった会社での働く意欲は薄れてきており、ある程度の具体的な未来までを視野に入れて考えてメタバース婚活に参加したそうだ。

 メタバース空間では自宅からアクセスできるので、ほとんどの参加者がリラックスした状態でのぞめるのが特徴だ。それゆえ本音を言いやすい面があり、仲人としては褒められたくない奈津美さんの心を誰が掴めるのかという期待も抱いた。

率直な意見に愛を感じた

 マッチング集計では、奈津美さんは俊太さん(35歳・仮名)ひとりを希望相手として指名。一方の奈津美さんは、男女ともに10名が参加したなかで、4名の男性から指名される人気ぶりだったものの、そのなかに俊太さんの名前はなかった。

 結果発表を前に、バックヤードではデジタル仲人たちが事実上駆け回って、マッチング作業を行っている。その成果もあり、誰からも指名のなかった俊太さんと奈津美さんが見事にマッチングした。

 奈津美さんは俊太さんの「クールさ」に好意を持ったという。

 誰もがちやほやと奈津美さんを持ち上げる中、俊太さんは奈津美さんの話した「会社と家の往復だから出会いがない」と言った内容に「少しは努力しないと変わらないよね」と冷静にコメント。

 初対面でのダメ出しは一発で嫌われてしまいそうだが、奈津美さんは出会いを求めて積極的に振る舞えなかった自分の過去を思い出して、俊太さんの答えに「その通り」と納得したという。自分をただ持ち上げることはせずに、愛情をもった意見を言ってくれたことが嬉しかったそうだ。

 一方の俊太さんは、そのやり取りは覚えていなかった。「アバターだけど俺は俺」といった普段と変わらない話ぶりだったそうだ。お世辞嫌いの奈津美さんと、歯に絹着せぬ物言いの俊太さん。偶然の一致ではあるが、奈津美さんの心に火をつけるきっかけになったことは嬉しい番狂せでもあった。

 その後、二人はメタバース空間内でのデートを経て、リアルなデートに進むことになった。デート場所は奈津美さんからのリクエストで、俊太さんの地元だ。「駅を降り立った瞬間から好きだった」という奈津美さんは俊太さんのこと、そして彼の地元ももっと知りたい、もっと受け入れてみたいという前向きな感覚が芽生えていた。

 俊太さんは地元で果樹園を経営しており、誠実で真面目な人柄ではあるものの、女性を喜ばせるような愛想の良さもなく、これまで結婚相手となるような女性とは出会えなかったそうだ。

 ふたりは軽トラに乗り込み、向かった先は取引先の道の駅だったそうだ。

 俊太さんが育てた果物は売れ行きがよく、奈津美さんが訪れた昼前には残りわずかの状態だったという。販売員にも店長にも同じ態度で接する俊太さんをうかがい知る奈津美さんは一緒にいるだけで誇らしい気持ちに浸ったというからデートの序盤は大成功だったのであろう。

 俊太さんの友人が営む中華店でラーメンをすすり、午後からは市内をドライブして巡った。古い家屋が立ち並ぶ旧街道や温泉地には奈津美さんの心をなごませてくれる懐かしさがあった。

 別れ際に立ち寄ったコンビニで奈津美さんにとっては印象的な一幕が合ったという。

 足の悪いお婆さんがレジ前に並ぼうとゆっくりと移動する間に、男性客がそそくさと割り込んできたそうだ。俊太さんは男性客に向かって「そこは並んでいる方がいるからちゃんと並んで」と注意したという。奈津美さんは毅然とした態度の俊太さんの態度に心を射抜かれたそうだ。

 次回のデートを約束して2人の交際はスタートした。片道4時間かかる遠距離恋愛だけに障壁もあるかもしれない。でも奈津美さんの口からでた「俊太さんと暮らす未来がイメージできた」という言葉はすでに強い絆を示している。

 数ヶ月前の奈津美さんには存在しなかった、パートナーと生きる未来予想図を描き始めているのである。

マネー現代

関連ニュース

最終更新:5/16(木) 12:02

マネー現代

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング