(ブルームバーグ): 定量分析ベースの日本株ESG(環境・社会・企業統治)運用商品で、「人的資本」関連データの有効性が向上しているとの見方をアセットマネジメントOneが示した。パフォーマンスが好調なこの商品は、ESG要素の貢献を数字で示し、世界的なESG投資離れの潮流の中で、運用残高を拡大させている。
同社の「国内株式ESG低ボラティリティ高配当戦略」の運用実績は7年以上で、代表ファンドの設定来のリターンはTOPIXを年率で4.48%上回る。運用資産の増加を受け、新規顧客の投資資金受け入れを今月停止した。
定量分析の対象となるのは1000社以上の過去10年にわたるデータだ。「総エネルギー投入量」「温室効果ガス排出量」といった1000以上のESGデータについて、株価リターン予測への有効性を検証。ここ2、3年、研修時間や従業員のキャリアパスなどの人材育成に絡む項目の有効性が高まっているという。
多様性のある組織を持つなど人的資本を重視する企業は「ファンダメンタルから見ても強い」と担当ファンドマネジャーの河井貞治氏は指摘する。
人的資本を巡っては、ESGの「社会(S)」に含まれる要素として、投資判断での重要性が高まっている。日本では2023年3月期決算から有価証券報告書で人的資本情報の開示が求められるようになり、企業側の情報開示も進んでいる。
ESG投資はロシアによるウクライナ侵攻後、非保有の化石燃料銘柄の上昇などでパフォーマンスがさえず、有効性に疑問が生じた。河合氏によると、その際の同戦略でのESGの効果は、「環境(E)」関連が利きにくくなった一方、人的資本関連は利いていた。
同戦略の運用モデルを開発したみずほ第一フィナンシャルテクノロジー・投資技術開発部の若村浩明氏は、「E」「S」「G」の何が有効かについては、市場の局面で変わってくるとの見方を示す。
ただ長期でならすと利き方に大差はない。TOPIXに対する超過リターン年率約4.5%のうち、「ESG要因」としているのが1.5%。それをさらに「E」「S」「G」に分解すると、3要素ともそれぞれ0.5%前後となっている。
ロシア・ウクライナ戦争などでESG投資に逆風が吹いた22年度も、同戦略のリターンはTOPIXを上回った。河井氏は「特定のテーマに偏っていないため、パフォーマンスを順調に積み上げることができている」と述べた。
過去1年で700億円から1200億円へ
アセマネOneの戦略の組み入れ銘柄は30-50程度。1000以上のESGデータの中からリターンとの関係性が高い200-300程度に絞り、個別銘柄のESGスコアを算出する。高配当などESG以外の要素も考慮した上で、最終的にポートフォリオを構築している。
年金顧客を中心に、過去1年間で運用残高を約700億円から約1200億円に増やした。このうち300億円程度が時価評価の増加分、残り200億円程度が資金純増分となる。リターンにESGがどれぐらい寄与しているのか定量的に示せる点が顧客から評価されているという。
クオンツ型ESG株式戦略全般の留意点について、ラッセル・インベストメントの大浦裕一郎シニアコンサルタントは、財務的に重要なESG指標に基づくモデル構築が必要など「リターン獲得のための優位性の確立・維持が難しい」点や、「企業とのエンゲージメント(対話)によるリターン創出の機会が限定的である」点などを指摘した。
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最終更新:4/25(木) 6:00
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