日本人がまだわかっていない「トランプ2期目」に起こる本当にヤバい事、日韓エリートが密室で話している懸念

5/14 9:02 配信

東洋経済オンライン

 ドナルド・トランプのアメリカ大統領復帰は、北東アジアにおける核軍拡競争につながるのかーー。トランプによる大統領選勝利がもたらす可能性の中で、日本で最もオープンに議論されないのがこれだが、実は密室ではこの「暗い未来」について真剣に語られている。

■「アメリカ・ファースト」政策への懸念

 最近、筆者が日本に長期滞在した際、日本の政策立案者たちとの会話で最も好まれた話題は「もしトラ」、つまりトランプが再び大統領になった場合の日本の運命についてだった。

 日本の外交エリートたちの脳裏には、もしトラによる多くの不穏なシナリオが浮かんでいる。ウクライナ戦争でのロシアへの事実上の降伏とその中国や北朝鮮への影響、すべての中国製品に60%の関税を課すこと、日本とヨーロッパに対してさらに広範な関税を課すこと、アメリカ軍による海外駐留に対する巨額な支払いーー。

 こうした「アメリカファースト」の動きはすべて、トランプの過去の行動や現在の宣言からすればもっともらしく、可能性さえある。それでも日本の政府関係者は、故安倍晋三首相のやり方ーートランプに媚びへつらい、金を払い、トランプのアドバイザーとの絆を深めるーーに従って、どうにかトランプをコントロールできると確信している、と主張する。

 「トランプの初任期の時と同じように、トランプ抜きで国防・安全保障チームと事前にいい関係を築いておけば、それが助けになる」と、日本の元外務省高官は語る。

 日本政府は、在日アメリカ軍基地の重要性についてアメリカに圧力をかけるために迅速に動くだろう。トランプが中国との対立に力を入れるかどうかは、安全保障同盟を維持できるかどうかにかかっている部分もあると考えているからだ。

 トランプが日本からアメリカ軍を撤退させようとするかもしれないが、おそらく3、4割減にとどまるのではないか、と首相にも助言する、外交政策の専門家は語る。

■韓国でも「アメリカ軍撤退」は懸念事項に

 対馬海峡を挟んで、韓国政府関係者もまた、トランプの政権復帰が韓国とアメリカの関係を脅かすことはなく、どうにかやり過ごすことができると主張している。一方で、韓国側が駐留費用の引き上げに応じない場合、在韓アメリカ軍の撤退に素早く動くのではないか、という懸念もある。

 こうした懸念はトランプが最近『タイム』誌のインタビューで2期目にについて語ったコメントによって増幅されている。

 「われわれは(韓国に)4万人の軍隊を駐留させており、やや不安定な立場にある」とトランプは語り、実際の兵力レベル(2万8500人)を誇張する一方で、韓国側に「金を払え」と再三要求した。 「なぜ我々が誰かを守らなければならないのか。我々は非常に裕福な国について話しているのだ」。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は最近、国会議員選挙敗北後の記者会見で、トランプの発言に関するコメントを巧みに避け、同盟関係の継続的な強さに自信を示した。

 しかし、トランプの2期目のアメリカ軍に関する計画は、最初の任期中とかなり前に決まっていた。トランプ政権時に国家安全保障担当大統領補佐官を勤めたジョン・ボルトンは回顧録で、「朝鮮半島からアメリカ軍を撤退させたいというトランプの執拗な願望」と、北朝鮮の金正恩総書記と壮大な平和協定を結べる、というトランプの衰えぬ信念について詳細に語っている。

 「私はトランプの究極の脅し、つまり、彼が適切と考える金額を支払わない国から我が軍を撤退させるという脅しが、韓国のケースでは現実になることを恐れた」とボルトンは退任後に書いている。

 マーク・エスパー元国防長官もまた、トランプの軍隊撤退を阻止するために繰り返した、そして部分的には成功した努力についてこう書いている。
「トランプが韓国からアメリカ軍を完全に撤退させる必要性について語ったとき、私は非常に不安になった」。エスパーは、当時のマイク・ポンペオ国務長官とともに、アメリカ軍の撤退は2期目の優先事項にするよう提案したと語った。

 「これで彼をなだめた」とエスパーは書いている。「トランプはチェシャ猫のように笑って『ああそうだな、2期目だ』と語った」。

■「北朝鮮は主に韓国が対処すべき問題」

 また、トランプ政権下で国防次官補代理を勤めたエルブリッジ・コルビーは、第2次政権の幹部候補と目されているが、インタビューに答えるたびに、この計画がまだ「生きている」ことを明らかにしている。 ゴルビーは5月7日に掲載された聯合ニュースのインタビューで、アメリカは中国との対決を優先しなければならず、北朝鮮は主に韓国が対処すべき問題だと主張している。

 「韓国は、北朝鮮に対する自衛のための第一義的、本質的には圧倒的な責任を負わなければならない。なぜなら、われわれは北朝鮮と戦い、中国と戦う準備ができるほどの軍隊を持っていないからだ」とコルビーは語っている。

 「根本的な事実は、北朝鮮はアメリカにとって主要な脅威ではないということだ。北朝鮮に対処するためだけに、アメリカの複数の都市を失うことは合理的ではない。それは韓国にとっては別の計算だ」

 コルビーは、トランプが以前に行った発言を引用し、アメリカは韓国の核オプションを支持しないまでも受け入れるべきであり、特にアメリカはもはや核の傘を提供しないと述べた。

 トランプがこの計画を実行に移した場合、韓国はどうするのだろうか。その答えは、ワシントンDCの戦略国際問題研究所が発表したばかりの重要な研究報告書に記されている。

 タイトルは「ブレイキング・バッド:韓国の核オプション」。 元国家安全保障当局者で著名な韓国専門家のビクター・チャが執筆したこの研究は、今年1月から3月にかけて実施された韓国の戦略的エリート1000人以上を対象とした詳細な世論調査に基づいている。

■エリートたちは核武装についてどう考えているか

 いいニュースとしては、この調査は韓国人の3分の2以上が核オプションを支持しているという、いささか誤った一般的な世論調査に基づく、かなり表面的な考えに対する明確な反論を提供している。

 この調査が示しているように、世論調査は核オプションの支持についてイエスかノーかという単純な質問をしている。もしそれがアメリカとの同盟関係を危うくしたり、韓国の国際的非難を招くようなものであれば、韓国人がそのような道を支持するかどうかを尋ねてはいないのだ。

 チャの世論調査は、核武装の結果についてよりよく知っているエリートたちにさらに踏み込み、主に国際的な反応と同盟へのダメージを理由に、調査対象者の3分の2が核武装に賛成していないことを明らかにしている。核オプションへの反対は超党派であり、保守的、進歩的なエリートたちによって受け入れられている。

 しかし、アメリカが同盟国を誹謗中傷し、地上軍を撤退させるというアメリカ・ファースト政策に復帰したらどう思うか、と質問したところ、まったく異なる反応が返ってきた。

 その場合、非核という選択肢を支持していた人々の半数以上が、核兵器開発を支持するようになる。アメリカと核兵器を共有するという選択肢よりも、自律的な核戦力を支持している。

 「いずれにせよ、トランプが勝利し、デカップリングが進めば、エリート層が核保有に大きくシフトし、国民もそれに同調する。「つまり、それは非常に早く起こりうるということだ。国民的な議論をして世論を形成する必要はないだろう」。

■過去に核武装を模索したことがある韓国

 現在の状況は過去を彷彿とさせるものがある。1970年代初頭、アメリカが韓国から2個歩兵師団のうち1個師団を撤退させ、ベトナム戦争に敗北したことを受けて、朴正煕政権は核兵器開発の秘密プログラムを命じた。

 この計画はアメリカの諜報機関によって摘発されたが、アメリカの政府関係者らは当初、韓国が本気であるかどうか懐疑的だった。フランスとカナダの核技術の売却を阻止するなど、アメリカの厳しい圧力だけが、この計画を阻止した。

 韓国の核武装は日本にとってどのような意味があるのだろうか。

 筆者が話を聞いた日本の外交政策担当者はみな、トランプ大統領の政権復帰への対応として日本が核兵器を開発する、あるいはその可能性があるという考えを、むしろきっぱりと否定した。読売新聞のある幹部は、核開発という選択肢は政治的に不可能であるだけでなく、戦後の日本の政策に反しているとして、躊躇なく否定した。

 しかし、韓国が核武装の道を歩んだ場合、日本はどう対処するのかという質問に対しては、その確信は弱まった。「韓国が核兵器を持てば、日本は必ず核兵器を持つことになる」と、最近韓国訪問から帰国した首相補佐官の1人はこう明かした。

■第二次トランプ政権ではアメリカに頼れない

 安倍元首相と岸田元外相、そして民主党の顧問を務めたことのある別の外交政策幹部は、さらに踏み込んだことを言った。同氏は、日本は韓国と共同で核兵器を開発すべきだと語った。日韓両国の過去の歴史を考えれば、政治的に不可能ではないにせよ、それは急進的な考えである。

 だが、この幹部が指摘するように、共同開発は戦略的にも技術的にも理にかなっている。日本も韓国も、第2次トランプ政権下では、中国、北朝鮮、ロシアからの差し迫った脅威にさらに直面することになり、もはやアメリカに拡大抑止力を頼ることはできなくなる。

 技術的には、韓国が政治的に早く動くことができる一方で、日本はすでに核分裂性物質(使用済み核燃料を再処理したプルトニウムの備蓄)を保有しており、H-2ロケットやH-3ロケットの長距離運搬システムの可能性もある。

 外務省の元高官は、「私たちは、誰がアメリカを主導しているかという現実を直視しなければならない」と語った。「われわれにはそれを変えることはできない」。

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最終更新:5/14(火) 9:02

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