【投資のギモンQ&A】なぜ投資をしたほうがいいのでしょうか。預貯金だけではダメですか?

4/20 6:01 配信

ダイヤモンド・オンライン

 コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。『新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。今回からは特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

 ――そもそも、なぜ投資をしたほうがいいのでしょうか。元本が保証される預貯金だけではダメでしょうか?

 中野晴啓 先日、日銀はマイナス金利政策を解除しました。ニュースではちょっとした騒ぎになりましたが、皆さんの生活で何か変わったでしょうか。「マイナス金利解除」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、預貯金の利率の見直しでしょう。

 でも、「利率が20倍に!」などと言っても、普通預金の利率が年0.001%から0.02%になっただけの話です。定期預金の利率も一部銀行が見直しを進めましたが、たとえば、みずほ銀行で10年物定期預金の利率が、年0.2%から0.3%に引き上げられただけです。

 少なくとも預貯金で運用する分においては、収益面で大した効果は生じていないのです。

● この1年間で実質的なお金の価値は、 3.1790%も減価

 一方で物価はどうなっているでしょうか。2024年2月の消費者物価指数は、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)」の前年同月比で3.2%でした。つまり2023年2月から2024年2月までの1年間で、物価が3.2%上昇したことになります。

 昨年2月時点における1年物定期預金の利率は、日銀が公表している平均利率で年0.021%ですから、完全に物価に負けていることになります。0.021%-3.2%=▲3.1790%ですから、自分が持っている資産を全額、1年物定期預金に置いておくと、この1年間で実質的なお金の価値は、3.1790%も減価したことになるのです。

 では、これから先はどうなるでしょうか。4月時点におけるみずほ銀行の定期預金利率を満期別に見ると、以下のようになります。

 ・1ヵ月~1年・・・・0.025%
 ・2年・・・・・・・0.075%
 ・3年・・・・・・・0.150%
 ・4年・・・・・・・0.175%
 ・5年・・・・・・・0.200%
 ・6年・・・・・・・0.225%
 ・7年・・・・・・・0.250%
 ・10年・・・・・・0.300%

 上記利率は預入金額300万円未満に適用されるものですが、現状、預入金額の多寡に関係なく、適用利率は同じということを付け加えておきます。

● 預貯金に預けておいても、 資産価値が実質的に目減りしてしまう

 さて、10年物に預け、今後10年間にわたって毎年、0.300%の利率を確保したとしましょう。問題は、この先10年間で物価がどの程度上昇するか、です。

 物価が将来、どうなるのかは誰にも分かりませんが、少なくとも日本政府・日銀は年2%というインフレ目標値を掲げています。ですから、現時点で年0.300%の利息しか得られない10年物定期預金に預け、政府目標と同じ程度に物価が上昇すると、当分の間、資産は目減りし続けることになります。

 よく、「資産運用は元本割れリスクが怖いからイヤだ」という方もいらっしゃいますが、物価と金利の水準次第では、実は預貯金に預けておいても、このように資産価値が実質的に目減りしてしまうこともあるのです。

 それを考えると、やはり資産運用は大事だと言えます。長期的に見れば、株式などで資産運用をすれば、インフレ率以上のリターンは期待できます。

 ましてや、世界中の株式市場に分散投資する、それを長期の積立投資で保有していくというルールを守れば、投資先のマーケットが短期的に値下がりしたとしても、資産価値の目減りを抑制的に対処できるでしょう。また長期的に見れば、値下がりしたところで投信の口数をたくさん買い付けられるので、それが功を奏して、その後の上昇局面ではより大きく資産を増やせるはずです。

 もちろん、持っている資産のすべてを株式や投資信託にしろなどと言うつもりはありません。ただ、毎月の生活で余裕資金があれば、それを用いて資産運用をしましょう。それが長期的に見て、皆さんの人生にとって、大いにプラスになるはずです。

 【答え】
 預貯金に預けておいても、インフレによって資産価値が実質的に目減りしてしまうことがある。毎月の生活で余裕資金があれば、それを用いて資産運用をする。そのほうが長期的に見て、人生にはプラスになるはず。

中野 晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/

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最終更新:4/20(土) 6:01

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