DePINで成功をつかめ:ギグエコノミーのメリットを拡大する

5/27 6:30 配信

CoinDesk Japan

暗号資産(仮想通貨)業界が普及の新たな局面を迎える中、多くの人は、この市場サイクルを制するのはどのストーリーかと考えているだろう。


ミームコインか、AIトークンか、それともリキッド・リステーキングか、Ordinals(オーディナルズ)か、Doginal(ドージナル)と呼ばれるドージコインのOrdinalsか、はたまたBase(ベース)か?


暗号資産界は話題のストーリーと、活気に満ちたマネーが渦巻いている。


運が良ければ、このサイクルはそのようなストーリーで記憶されることはないだろう。その代わりに、私が「オペレーターエコノミー」と呼ぶもの(より一般的には「ギグ」または「シェアリング」エコノミーと呼ばれるもの)を作り直したことで知られることになるだろう。


それは、Uber(ウーバー)に高い料金を支払ったり、健康を犠牲にしてフリーランスの仕事を引き受けたりしたことのある人にとっては勝利となる。そして、暗号資産そのものの正当性を証明することにもなる。


UberやAirbnbのような企業は、クラウドソーシングのインフラと労働力を使って価値あるサービスを提供し、オペレーターエコノミーの先駆けとなった。その過程で彼らは、この比較的分散型なビジネスモデルが伝統的なビジネスと競合し、さらにはそれを凌駕する可能性があることを証明した。


現在米国には、食品配達、ヘアカット、ベビーシッター、カーシェアリングなど、世界中のどこよりも多くのオペレーティングプラットフォームが存在する。米国のオペレーターエコノミーは一連のユニコーンを輩出し、2031年には数兆ドル規模になる勢い。ある意味、オペレーターエコノミーが「経済」になりつつある。


市場の効率性と社会的公平性の観点から見ると、オペレーターエコノミーは失敗した実験だ。オペレーター「エコシステム」では、独占的なプラットフォーム(ベンチャーファンドの補助金を受けている)の略奪的な価格設定が横行し、経済的に不安定な「ギグ」ワーカーの底辺層の拡大によって支えられている。


ギグワーカーは、細切れの賃金しか受け取れず、残業代もなく、社会保障や健康保険などの従業員福利厚生を与えられず、仕事をするための費用を自己負担しなければならない。また、彼らの仕事を指揮する不透明なアルゴリズムによって、様々な形態の賃金搾取や差別を受けている。

公平性の構築

DePIN(分散型物理インフラネットワーク)は、より効率的でより公平なオペレーターエコシステムを約束する。DePINは、ハードウェアベースのサービスをトークンで調整するコミュニティ主導のプロトコルネットワークであり、基礎となるロジックは暗号資産そのものと同じくらい古い。


ビットコインはDePINネットワークの原型であり、世界中の誰もがトークン報酬と引き換えに、オープンな分散型台帳を維持するためにコンピューティングハードウェアを提供することができる。この基本的なロジックは、その後のすべてのDePINネットワークに影響を与えている。


DeFi(分散型金融)と同様、DePINの主要な経済的メリットは、利益を求める仲介者をなくし、仲介者が手にしていた利益を様々なステークホルダーに再分配することだ。


DePINの配車アプリであるTeleport(テレポート)を例に取ろう。テレポートは、UberやLyft(リフト)のような企業を必要とせず、自社のプロトコルとトークンインセンティブを使って、配車コミュニティを調整する。これにより、搾取的な利鞘と手数料が、より高い賃金とより低い価格という形でドライバーと利用者に還元される。


もう1つの大きな改善点は、オペレーターは賃金や報酬として蓄積したトークンを通じて、ネットワークにおける経済的な持分を得ることだ。ネットワークが拡大するにつれて、これらのトークンは、オペレーターにIPO前のベンチャーリターンをもたらす。ビットコインネットワークの初期マイナーど同じようなものだ。


一方、現在のギグワーカーは基本的な福利厚生すら受けられない。またトークン化は、ネットワークに別の利益をもたらす。なぜならアーリーアダプターやエバンジェリストにインセンティブを与え、オペレーターやユーザーの次の成長をサポートするからだ。


他にも注目すべき利点がある。DePINはパーミッションレスで、参入障壁が低く、幅広い参加者が集まり、地理的な範囲も広がるため、特定の条件や極端な状況にも対応可能だ。


また、DePINネットワークは透明性が高く、アルゴリズムによる差別からより保護される。また、コードは中央集権型システムよりも停止や検閲が難しいため、政治的な理由やその他の非合法な理由による混乱も起こりにくい。

DePIN事例

今回のサイクルの中で、DePINが拡大し成熟しつつあることを示すように、様々な業界でWeb3オペレーターが出現している。いくつかの事例を見てみよう。

コンピューティング・オペレーター

コンピューティング・オペレーターは、必要不可欠な処理や通信サービスを提供する。Aethir Cloudのようなプロジェクトは、分散型クラウドレンダリングネットワークの可能性を示しており、開発者は様々な分散型コンシューマーアプリケーションを開発でき、ユーザーは計算能力の集合プールを利用できる。


同様に、Akashはクラウドサービスのマーケットプレイスを提供し、AWSやGCPのような伝統的なプロバイダーに分散型の代替手段で挑戦している。

データ・オペレーター

データ・オペレーターは、未加工のデータを価値ある資産に変える。ハードウェアを導入してデータを収集・処理し、データセットやAPIを作成して商業利用できるようにする。


DIMOやHivemapper(ハイブマッパー)のような例はこの傾向を示しており、オペレーターは保険会社のために車両データを収集したり、リアルタイムのストリート・マッピングのために道路画像をキャプチャする。


単なる収集にとどまらず、これらのオペレーターは多くの場合、市場性のある製品にまとめられる前にデータを強化している。

ストレージ・オペレーター

ストレージ・オペレーターは、Web3オペレーターエコノミーにおけるデータの永続性を保証する。ArweaveやFilecoin(ファイルコイン)のようなプロジェクトは、ファイルストレージのための分散型ソリューションを提供している。


これらのプロジェクトは、データが単に保存されるだけでなく、将来の使用のためにアクセス可能であることを保証する。情報を損失や陳腐化から保護し、信頼できるデジタルレガシーを可能にするため、極めて重要だ。

ハードウェア・オペレーター

ハードウェア・オペレーターは、物理的資産とユーザーの需要をマッチングさせる。例えばio.netは、AI処理能力を必要とする企業とGPUプロバイダーのネットワークを結んでいる。


Helium(ヘリウム)も同様で、スモールセルのハードウェア所有者と5G接続を必要とする企業を結びつけている。Web3オペレーターエコノミーでは、ハードウェアが共有コモディティとなり、すべての参加者が消費者とプロバイダーの二重の役割を果たす。

成長の痛み

DePINは最近話題を集め、計り知れない可能性を秘めているにもかかわらず、重大な課題に直面している。最も顕著なものは、DePINネットワークは、分散化にコミットし続けながら、現実世界の複雑な規制の状況にうまく対応していかなければならないことだ。


例えば、マッピングサービスのHivemapperは、それぞれに厳格なコンプライアンス要件を持つガバナンス、データ管理、安全性に関する規制に対処する必要がある。これらのハードルは大きな摩擦をもたらし、自律的プロトコルの望ましい最終状態への進展を遅らせる。


最後に、DePINネットワークが成功するためには、ブートストラップ型(限られた資金やリソースを活用し、段階的な成長で自律的なエコシステムを目指す)のネットワークエコノミーに見られるトークンのボラティリティや下落から脆弱なオペレーターを保護する方法を見つけなければならない。


イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は先日、トークンの暴落や詐欺から脆弱な暗号資産ユーザーを保護することが道徳的に必要だと書いている。彼の主張は、ギグワーカー、アーティスト、発展途上国のユーザーなど、経済的に権利を奪われたグループに力を与えると称するプロジェクトに適用された場合、さらに説得力を増す。


DePINは、暗号資産の社会的セーフティネットを拡大し始めるには最適な場所だ。DePINがこれらの課題を解決できると仮定すれば、オペレーターエコノミーに革命をもたらし、暗号資産の価格だけでなく、その価値観も疑う余地のないものになるだろう。


|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:分散型配車サービスを提供するTeleport|原文:DePIN for the Win: Spreading the Benefits of the Gig Economy

CoinDesk Japan

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最終更新:5/27(月) 6:30

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