32歳「年収450万円」の植物系男子が、理想の結婚のために選んだ「意外な婚活方法」…口下手、合コンでは存在を消していた

婚活が「苦手な人」に大人気

（文 高須 美谷子）　メタバース婚活は“特殊な出会い方”と思っている方もまだまだ多い。

　リアルでもマッチングアプリでも、相手の姿や顔がありきの婚活のなか「アバターを介しての婚活」はハードルが高いと感じるのも分かる。しかし、実際のところはリアル婚活と比べて抜け落ちる差はなく、結婚までに至る有益な婚活方法だと仲人の私自身確信している。

　メタバース婚の基本的な流れは、アバターに扮した男女がメタバース上にある婚活開錠で「初めまして」と出会う。フィーリングマッチングでカップル成立した場合には、アバターのままメタバース上に用意されたデートスポットで「二度目まして」。そこでお互いの条件を話して知っていき、三度目でリアルでの初顔合わせという塩梅だ。

　リアル婚活との最も大きな違いは、性格やフィーリングが条件よりも優先されるという点だ。どの婚活方法がやりやすいかは、人によって異なるがメタバース婚活には今まで婚活をしてこなかった層の参加者が見込めている。

　リアルな婚活に苦手意識があり、婚活から遠のいていた男女が、メタバース婚ではリラックスした状態で婚活を楽しんでいる姿は、私たち仲人にとっても大きな希望だ。

　今回は、そんなメタバース婚活で魅力を発揮し、理想の相手を見つけた一樹さん(32歳・仮名)の話をしたい。

合コンでは疎外感を感じる日々

　一樹さんは工業系の大学を卒業した後、新卒で現在の製造業に就いた。年収は450万円。

　まわりの友人知人を見渡しても収入は少なくない方で条件面からも悪いようには見えない。ご自身にも結婚の意思はあるが、いまだ結婚のケの字すらなかったのは女性と知り合うきっかけがなかったからだ。

　高校は共学だったものの、大学でも職場でも極端に女性が少ない環境に身を置いていたため、お付き合いや結婚のお相手を見つけるには、何か一歩を踏み出す必要があった。

　学生時代に友達の紹介で付き合った彼女とは、交際が半年に満たないうちに卒業を理由に疎遠となってしまい、その後は交際の機会もなかった。20代半ばくらいまでは、合コンなどにも参加したが全く結果が出ない。競争することが何よりも苦手で自ら身を引いてしまう性格のためだ。

　自己主張の少なくても一樹さんとじっくりと話せば、自分の意見を持ち、優しさも発揮できる中身のある男性ということが分かった。

　しかし口下手で、初対面の場では積極的に話すことに極端に苦手意識のあるいわゆる植物系男子。そのため合コンの場でも盛り上がる男性達の話を聞くばかりで、一樹さんの存在感はほぼ皆無。ひとり輪の外にいるような疎外感をいつも味わってきたという。

　人並みに落ち着いたしっかりした女性と出会って、穏やかに付き合っていきたいと考えていたのだが、その機会は訪れることはなかった。というのも合コンに集まる女性は、派手な化粧や服装とキャーキャーと騒ぎ立てる印象が強く、正直お付き合いをしたいと思える人もほとんどいなかった。

　合コンや飲み会のたびにお酒に酔うこともなく、幹事に徹しているうちに一組消え、二組消え、気づけばいつでも安全地帯に身を潜めて、健全な帰路につく。

　そんな20代を過ごし30代に入って、このままでは一生結婚できないかもしれないという焦りが出だした。そこで初めて婚活をしなければ考えるようになったという。

　婚活をはじめた一樹さんには理想の夫婦像があった。それは父方の祖父母だ。ふたりがいつも仲睦まじく、支え合っている姿に幼いころから憧れていた。

　祖父が退職してからは、祖母とふたりで趣味の家庭菜園を楽しみ、小さな田畑を耕しては採れたての野菜を一樹さんに喜んで食べさせてくれという。

　80歳を超える頃に認知症が進み入所した祖母の施設に祖父は毎日通い、髪をとかしたり、花を飾ったり、まるでお姫様のように扱っていたそうだ。そんな幸せそうな2人の光景は一樹さんの記憶にしっかりと刻まれている。

　「たった1人の伴侶と出会って、添い遂げる」そんな願いは、いつしか一樹さんアイデンティティそのものになっていった。

　メタバース婚活当日、一樹さんは操作方法なども完璧にして参加。そこで桃花さんと出会い、その時に思いがけない展開に発展する。その詳細は＜【後編】32歳、合コンで気配が消える、年収450万円の「植物系男子」が大逆転…！　婚活でその気になった「栄養士の女性」の意外な一言＞でお伝えする。