【心のプロにきいてみた】「不安は消える!」考えすぎないための心の整え方 “繊細さん”のための悩みを軽くするヒント

3/17 10:02 配信

東洋経済オンライン

「ちょっとしたことが気になって、どんどん不安が膨らんでしまう」
「考えすぎてしまい、行動に移せない」
もしそんな悩みを抱えているなら、それはあなたの「繊細さ」が影響しているのかもしれません。
しかし、繊細であることは決して悪いことではありません。実は、名僧たちもかつて自らの繊細さに悩み、それを乗り越えてきたのです。
禅の教えには、彼らがたどり着いた「考えすぎない」ためのヒントが詰まっています。大切なのは、「今を生きる」というシンプルな姿勢。

今回、禅僧であり世界的な庭園デザイナーでもある枡野俊明さんと、HSP専門カウンセラーの武田友紀さんに、「考えすぎないコツ」について対談していただきました。
”繊細”な人のための「心を軽くするヒント」を紹介します。

■「不安の雪だるま」をいかに転がさないか

 枡野俊明(以下、枡野):不安が膨らむと、いくら良いことだと思っていても、動けなくなってしまいます。

 禅では「禅即行動」、思ったらすぐに動け、動けば次へ動けるぞという言い方をします。不安が膨らむ前に動いてしまえというわけです。

 武田友紀(以下、武田):枡野さんは、「不安」と「建設的な思考」を分けておられるのだと思います。私も、カウンセリングではそこを見ていきます。

 まず、不安が膨らみ始めた時は、「感情と思考を分けましょう」とお伝えします。例えば、小さなミスに対して「どうしてあんなミスをしてしまったんだろう」「相手に悪く思われたんじゃないか」など、どんどん不安が膨らんだとします。

 この時、思考が働いています。過去を振り返ったり、過去から未来を予想してシミュレーションするのは「思考」です。一方、ミスした時の「えっ」「どうしよう」という衝撃は「感情(情動)」です。

 不安を止めるには、思考ではなく感情を手当てします。「えっ」と思ったよね、「どうしよう」ってなったんだね、と自分に話しかけて、ミスした瞬間の感情に寄り添うんです。

 そうすると、ほっとして不安が止まっていきます。子供が転んだ時に「痛かったね」となぐさめられて泣き止むのと同じ理屈ですね。

 枡野:不安の雪だるまを、いかに転がさずに止めるかですね。

 不安は夜に膨らむものでもあります。暗い闇は、心細くなり、負の方向へ考えがちです。一方で、太陽の下で思考すると、夜は不安だと感じていたことが、意外とたいしたことではないと思えたり、解決策が浮かびやすかったりします。

 夜に不安なことを考えると、寝ている間もそれに引きずられて熟睡できません。朝に考えて、朝に判断すればいいのです。

■不安になりがちな人にまず勧めること

 武田:不安になった時、人間の体は、猛獣に追われて何とか逃げなければいけないというような、アドレナリンが出た状態になっています。

 ですから、カウンセリングでは、まずは体を落ち着かせることをやります。枡野さんが本に書いておられたように、呼吸法も利用します。

 枡野:考えすぎてしまう人や、不安になりがちな人には、まず呼吸法をおすすめします。

 初めて人前で話す時は、胸がドキドキして地に足がつかなくなりますが、そういう時は、姿勢が前傾して、胸式の浅い呼吸になっています。すると、血管が収縮して血流が悪くなります。ですから、ますますドキドキしてしまうんですね。

 そこで、背筋を伸ばして骨盤を立てる。その姿勢でしばらく長い腹式呼吸をしていると、確実に落ち着きます。

 スポーツ選手も、同じ力量の選手が対戦した時は、呼吸を整えたほうの勝ちです。心理学の実験でも、小学生に算数の問題を解かせる時、呼吸を整えさせてから解かせたほうが、正解率が2割上がったそうです。

■自分の心を磨く掃除

 武田:スマホを使う時代ですから、頭の中には常に情報が散らばっています。頭の中が忙しい時は、お掃除、編み物、野菜を切るなどの単純作業をやるのがおすすめです。手を動かすことで思考が整理され、静まっていくんですね。

 枡野:掃除なら掃除だけになっていることが大事ですね。体を動かし、頭の中の思考も止まるので、体にも心にも良いわけです。禅では「無心になる」と言います。

 散らかっているのを見ても、気にならない人は、自分の心を整えることもできないとも考えます。

 武田:悟りを開くということは、周りがどんなに散らかっていても落ち着いていられる……ということかしらと勘違いしておりました。周りの環境も整えていくわけですね。

 枡野:さらに言えば、「ここは見えないからいいや」と思うようではダメです。人のためにやるのではなく、自分が心地よくなるためにやるのですから。

 武田:きれいにするというのは物質的なことではなく、自分の心のためだということですね。

 枡野:禅では、「一掃除二信心」と言います。信仰が上かと思われますが、そうではありません。床を磨くことは、自分の心を磨くこと。

 そのことを体で「気持ちいいな」と思うようになると、「この状態を保つにはどうすればいいか」と考えるようになる。だから「禅即行動」、行動が先になるわけです。

■呼吸を整えると、五感も整う

 枡野:呼吸を整えると、心が整いますから、わずかな変化も感じられるようになります。

 例えば「今日は朝の風がやわらかで、寒さが緩んでいるな」ということを感じるその感覚がとても大事です。ところが、スマホをしながら歩いていたりすると、同じ環境にいても、そういうことを感じられずに通り過ぎてしまいます。

 情報があふれる中で、常に意識が情報にとられているから、体が感じなくなっているわけです。現代人の弱点ですね。

 とは言え、SNSはコミュニケーションツールとしては非常に役立つものです。スマホを使う時間を限定してもいいですね。「私は夜9時を過ぎたらスマホは見ないからね」と宣言すればよいでしょう。

 大事なのは、情報に振り回されたり、SNSに使われたりするのでなく、自分でそれを使う主体になれるかどうかです。

 武田:スマホやパソコンは、私もよく使っていますが、「道具だ」と意識しておく必要がありますね。

■「お金」の不安をどうするか? 

 武田:五感のお話にもつながりますが、違和感をちゃんと感じることも大事だと思います。

 例えば、1日8時間働いても、最低賃金では生計を立てるのが大変です。相談者さんの中には、「今が大変なのは自分の努力や能力が足りないからだ」と自分を責める方がおられますが、そうではなく、社会のほうがおかしいということがあるのです。

 自己責任論が行き過ぎると、足がすくんでその状況から動けなくなってしまいます。全部を自分のせいにせず、「これはおかしい」と違和感を持ってもいいんです。そうすると、すこし落ち着いて、「じゃぁ、どうしたらいいのか」を考えることができます。

 「状況を変えるために転職しよう」「選挙で政策を見て選ぼう」など、人生を良い方向に進める選択肢に目が向くようになるんです。嫌なものは嫌だと感じてほしいと思っています。

 枡野:「お金を稼がねばならぬ」と思うと、それに取りつかれて、今やらなければいけないことが目に入らなくなることがあります。

 禅では、目の前にあることを成していけば、結果的に金銭もついてくる、だから、心配せずにやるべきことをやるんだという考え方を大事にします。

 もう1つ、負の状況をプラスに転じるという考え方も大事にします。「雨が降って憂鬱だな」と思うか、「今日はあの傘を差して、この服を着て雨を楽しもう」と思うか。

 アジサイやハナショウブは、濡れているところが美しいものです。晴れには晴れの楽しみ方、雨には雨の楽しみ方がある。

 これを「日々是好日」と言います。負の状況だからこそ、どうプラスに転じられるかという発想を持ってほしいと思います。

東洋経済オンライン

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最終更新:3/17(月) 10:02

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