長期金利は夏場に1%超えの声、日銀の利上げと国債購入減額観測

5/9 9:14 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 植田和男総裁が岸田文雄首相と異例の短い間隔で会談を行ったことで、日本銀行は早期に利上げと国債買い入れ減額に踏み切るのではないかとの見方が市場参加者の間で強まっている。長期金利は次回6月の金融政策決定会合に向けて上昇圧力がかかり、夏場にも2013年5月以来の1%超えを試す公算が大きくなった。

植田日銀総裁が首相と為替を議論、基調物価への影響を注視-連携確認

植田総裁は7日、岸田首相と会談し、円安は「経済物価に潜在的に大きな影響を与え得るものであり、最近の円安について日銀の政策運営上、十分注視していくことを確認した」と述べた。総裁は4月26日の会見で、円安は現時点で政策運営に大きな影響を与えてはいないとの見解を示しており、軌道修正を図った格好だ。

日銀総裁、円安が基調物価に影響なら判断材料に-金融政策は維持

地方銀行の共同出資運用会社であるオールニッポン・アセットマネジメント(ANAM)の永野竜樹社長は、日銀は6月に国債買い入れを減額、7月に利上げすると予想。米金利の動向にもよるが、国内長期金利は「夏場以降に1%を超える可能性がある」との見方を示した。

長期金利の1%は、黒田東彦前日銀総裁により異次元緩和が始まった13年以来11年ぶりという節目の水準。日銀が3月にマイナス金利政策を解除するまでイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の下で実質的な上限とした水準でもある。国内金利の上昇は外債中心の資金運用を行ってきた国内投資家の円債回帰につながり、グローバルな資金の流れに影響を与えるとみられる。

植田総裁は8日の講演で「現在は3月に見直した国債買い入れの枠組みの下での金融市場の状況を確認しているところだが、今後、大規模な金融緩和からの出口を進めていく中で国債の買い入れ額を減額していくことが適当である」と述べた。

物価見通しの上振れリスク大きくなれば「金利早めに調整」-日銀総裁

野村証券の松沢中チーフストラテジストは、国債買い入れを減額するタイミングとしては、日銀が3月にマイナス金利を解除した影響を見極め、四半期の買い入れ予定を公表する前の6月の決定会合が最適だと指摘。米国が6、7月に利下げをできなければ円安が続く可能性があるため、7月利上げ観測が高まり長期金利は1%を超えてくると読む。

総裁「はい」発言

植田総裁は4月26日の会見で、足元の円安の「基調的な物価上昇率への影響は、まあ無視できる範囲だったという認識でよいか」との質問に対し、「はい」と回答した。こうしたやり取りを受けて外国為替市場では円安が加速し、29日の海外市場で1ドル=160円台と1990年4月以来およそ34年ぶりの水準に下落。財務省は4月29日と5月2日に円買い介入を実施したとみられている。

植田総裁は8日の講演後の質疑応答で再度円安について問われ、「急速かつ一方的な円安は、例えば企業の事業計画策定を困難にするなど不確実性を高め、日本経済にとってマイナスであり、望ましくない」と懸念を表明。基調的な物価上昇率に為替の動きが影響してくる、あるいはそのリスクが顕著に高まってくれば「政策対応することになる」と語った。

主な意見

日銀総裁と首相は日銀がマイナス金利を解除した3月19日に会談しており、今回は異例の短い間隔で再度の会談となった。22年11月、23年8月の会談後の日銀会合ではいずれもYCCの修正が決定された。

9日公表された4月会合の主な意見では、日銀の見通しが実現するのであれば「金利のパスは市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある」といったタカ派色の強い発言が数多く出た。国債買い入れ減額についても「市場動向や国債需給を見ながら、機を捉えて進めていくことが大切」など、近い将来の減額を示唆する発言が複数あった。

植田総裁の国会答弁や講演、主な意見でのタカ派的な内容を受けて、9日の債券市場では長期金利が前日比4.5ベーシスポイント(bp)高い0.92%に上昇した。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、6月会合での国債買い入れ減額は十分あり得るとみる。まだメインシナリオではないが、「買い入れ減額に続いて利上げが近づく一方、米利下げはなお遠いということになれば1%が見えてくる」と語った。

野村証の松沢氏は「10年金利1%で銀行の国債投資が、その時点で30年金利は2%を超えて生保の国債投資が、それぞれ本格化する水準になるだろう」と話す。銀行も生保も13年の異次元緩和開始以降は外債中心のポートフォリオを構築してきたが、「国内債券へ資金が回帰してくる」と見込む。

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最終更新:5/9(木) 10:14

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