イエレン財務長官訪問で米中関係改善が進展-輸出巡る厳しい批判でも

4/8 11:44 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 中国を訪問中のイエレン米財務長官は5日、中国の過剰生産能力を非難することに多くの時間を費やした。その後、同日夜には何立峰副首相と共に広東省広州市を流れる珠江で遊覧船でのクルーズを過ごした。同席した関係者2人によれば、イエレン、何両氏はプレゼントを交換した。

日中には強腰のレトリックで臨み、夜には打ち解けた時間を共有するというコントラストは、イエレン長官に課せられた幅広い外交的タスクを物語る。イエレン氏の訪中は過去9カ月で2回目で、財務長官としては最後の訪問となる可能性が大きい。

北京に移動したイエレン長官は7日、李強首相の歓迎を受けた。8日には中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁と会談後、記者会見して訪問を締めくくる。

今回の訪中には、イエレン長官が苦心して築いた中国指導部との個人的関係強化を図る面がある。同時に、こうした関係を試そうとする意向も感じられる。

長官は中国が安価な物品で世界の市場を席巻しているとして同国当局者を非難するとともに、米企業が中国で「不公正」な扱いを受けていると批判。さらに、ウクライナでのロシアの戦争を支援している中国企業は「重大な結果」に直面すると鋭く警告した。

イエレン長官は在中国米国商工会議所主催のイベントで、「輸出拡大を通じて急成長を目指すには中国は大き過ぎる」と語り、同国の巨大な工場群は「世界の市場が耐えることができる」よりも多くの生産を行っていると指摘した。

中国側はこれに対し、同国企業は価格競争力のない先進国によってペナルティーを科されていると反論し、米国の補助金を巡り世界貿易機関(WTO)に提訴している。李首相は7日、イエレン長官との会談で経済・貿易問題を政治問題化しないよう期待を表明した。

長官はかつて、中国のWTO加盟を受け入れ、中国が安価な物品を世界的に輸出して何百万人をも貧困から脱却させることに扉を開いた経済的コンセンサスに賛同した1人だった。

中国の生産ブームが米国をはじめとする国々に及ぼす破壊的影響を当局者が過小評価していたことで、米国などでは政治的ポピュリズムとトランプ前大統領の台頭の主な要因になったと広く考えられている。

習近平国家主席の指導部がクリーンエネルギーなど新産業を中心とする製造業に投資をシフトさせることで不動産危機を相殺しようとしており、イエレン長官としては過去の事態の再現を防ぐことに努めていると見受けられる。

イエレン長官は何副首相との5、6両日の会談で米国の特定の産業が脅威にさらされていることについてどう考えているか具体的な詳細を示した。協議に携わった米財務省高官1人が明らかにした。

国内の半導体やクリーンエネルギー部門への米国の補助金を巡る中国側の批判に対しては、的を絞って国内での消費に重点を置いたものだとイエレン長官は反論したと、同高官が説明した。

一連の会談は友好的だったものの、イエレン長官が表明した批判が全てが反発を招かなかったわけではない。中国国営新華社通信は5日、「『中国の過剰生産能力』に関する中国恐怖症的な語り口」についてイエレン長官を批判し、「米企業を保護するためさらなる保護主義的政策を打ち出す口実のように感じられる」と論評した。

新華社によれば、中国側は米国の貿易・投資規制にも「重大な懸念」を示した。バイデン大統領は国家安全保障上の懸念を理由に、先端半導体への中国のアクセスを阻止するため多数の制限を課している。

ただ、イエレン長官の手厳しいメッセージにもかかわらず、米中関係改善に向けた進展を損なうことはなかった。両国はイエレン、何両氏が「国内・世界経済のバランスの取れた成長」と婉曲(えんきょく)的に呼ぶ問題に特化した新たな協議を進めることで合意した。

イエレン長官に対する歓迎ムードは北京でも続いた。人民大会堂での李首相との会談は長官の当初の予定にはなかったもので、李首相は長官と何副首相との会談を米中関係の「重要問題を巡る率直で掘り下げた話し合い」だったとして称賛した。

殷勇北京市長との昼食会や北京大学の学生・教職員を訪問後、イエレン長官は紫禁城を案内された。

イエレン長官の厳しいメッセージにもかかわらず、今回の訪中で見られた前向きな雰囲気が関係改善の真の成果か、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のシニア地経学アナリスト、ジェラード・ディピッポ氏が「戦術的安定化」と呼ぶサインに近いのかは、まだ不明だ。

中国は外国からの新たな投資を引きつける上で困難に直面しており、公の形で緊張を再び高めるのは回避したい考えだろうとディピッポ氏は指摘する。米大統領選を11月に控え、中国政府としては機会をうかがっている可能性がある。

原題:Yellen Advances US-China Ties Despite Tough Criticism on Exports(抜粋)

--取材協力:Lucille Liu.

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/8(月) 11:44

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