FRB議長のトーン変化、雇用への傾斜で物価高止まり見込む債券市場

3/29 0:36 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が雇用市場の保護を重視する姿勢を強めつつあることで、債券市場ではインフレ高止まりを見込んだ戦略が勢いを増している。

ガルダ・キャピタル・パートナーズのティム・マグナスン最高投資責任者(CIO)は、インフレ連動米国債(TIPS)が通常国債をアウトパフォームすることで利益を得る取引戦略に言及し、「パウエル議長は事実上、ブレークイーブンのロングを支持した」と述べる。

パウエル議長は先週の記者会見で、失業率が予想外に上昇すれば、利下げに踏み切る可能性があると表明した。議長がこうした発言を行うのは今回のサイクルで初めて。3月20日に公表された当局者の経済見通しでは、2024年のインフレと成長率の予想が引き上げられる一方、ドット・プロット(金利予測分布図)では今年3回の利下げを見込んでいることが示された。

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マグナスン氏は「米金融当局はわれわれが考えているよりも、もう少しインフレを許容する構えなのだろう」と語った。

こうした見方を示しているのはマグナスン氏に限らない。マーク・カバナ氏が率いるバンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジスト陣は27日、30年物ブレークイーブンに賭けることを推奨した。「緩和的な金融環境、上向きの成長見通し、インフレの上振れリスク増大を伴って、米金融当局は利下げへと誘導している」と述べる。

ブレークイーブン市場は、インフレ期待がじわり高まっていることを示唆している。5年物ブレークイーブン・レート(5年物の通常国債とTIPSの利回り差)は足元2.43%前後で、2022年初めにつけたピークの約3.76%は大きく下回っているが、昨年12月の低水準を約40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回っている。

28日のスワップ市場では、ウォラー理事が利下げを急ぐ必要はないとの考えを示したことを受けて、米金融当局が6月にも利下げに踏み切るとの見方がやや後退した。6月利下げの予想確率は足元で6割程度だ。

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ブレークイーブン・レートが一段と上昇すれば、イールドカーブのスティープ化を見込んだ取引を促しそうだ。米金融当局が利下げに踏み切り、インフレ率が新型コロナウイルス流行前の水準を上回って推移する状況で、長期債がアンダーパフォームするとの見立てに沿った戦略を掲げる投資家は多い。そうなれば、2年債利回りが10債利回りを上回る逆イールドが解消されることになる。

米金融当局が市場ベースの予想とともに注視している調査ベースのインフレ予想も、消費者物価指数(CPI)が過去の水準よりも速いペースで上昇するとの見方を示唆している。ミシガン大学の直近調査によると、5-10年先のインフレ期待は2.8%で、コロナ禍前の2.2%から上昇している。

米金融当局による最新の経済見通しでは、インフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率が今年と来年、目標の2%を上回ると予想されている。変動の大きい食品とエネルギーを除くPCEコア価格指数については、今年の予想を従来の2.4%から2.6%に引き上げた。

パウエル議長は先週、「年末の予想引き上げは(上振れた1月と2月分も含め)今年これまでに見られたデータを反映している」と説明。「しかしながら、われわれは昨年見られたような低めの数値を確認し、インフレが持続的に2%に向かっているとの確信を強めるデータを求めている」と述べた。

マクロ調査会社ビアンコ・リサーチの創業者ジム・ビアンコ氏は、米金融当局はインフレ率が高止まりする中で利下げに動くことでリスクを冒していると指摘する。

ビアンコ氏はブルームバーグテレビジョンで「慎重でなければ、利下げに踏み切る可能性がある。債券市場でインフレ抑制に対する米金融当局の姿勢に疑念が生じれば、利回りは低下するどころか、上昇するだろう」と語った。

ウィンショア・キャピタル・パートナーズのマネジングパートナー、ガング・フー氏によると、パウエル議長は先週、インフレとの闘いと労働市場の保護に対するリスクについてバランスを取るというメッセージを発した。これはインフレ率が2%まで下がるのに一段と時間を要する可能性を意味するという。

「米金融当局のリアクション機能は変化した」とフー氏。「米金融当局はインフレ率よりも失業率に一段と注目しつつある。ブレークイーブン・レートは下がるよりも上がる可能性の方が高い」と述べた。

原題:Powell Juices Bond Market Bet on Inflation With Tilt to Jobs (1)(抜粋)

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最終更新:3/29(金) 0:36

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