フジ・メディア・ホールディングスの順位は…「財務力が強い上場企業ランキング」トップ300
企業の財務面の総合力を見るために作成している「東洋経済財務力ランキング」。今回は19回目の発表で、成長性、収益性、安全性、規模の4つのカテゴリーで、それぞれの財務指標(3年平均)を多変量解析の「主成分分析」で相対評価し、各得点を合計して作成している。
多変量解析による企業評価の仕組みは昨年ご紹介しているので、こちらを参考にしていただきたい。
使用している財務指標は、財務諸表分析では基本的な項目が中心だ。このうち収益性、安全性、規模の3つの得点は「CSR企業ランキング」の財務得点としても使っている(今年の発表は3月上旬の予定)。
対象は2024年9月1日時点で上場している一般事業会社(銀行、証券・商品先物、保険、その他金融は除く)で2024年3月期までの財務データを対象に成長性、収益性、安全性、規模の4つの得点が算出できた3207社だ。今回は、このうち上位300社をご紹介する。
なお、2024年4月期以降は対象外となっているため、最新の業績での変動は『会社四季報』などで確認していただきたい。
■昨年6位だった川崎汽船がトップに
ではランキングを見ていこう。トップは昨年6位から上がった川崎汽船(3876点)。海運業界初のトップで成長性1000点、収益性888点、安全性988点、規模10000点と高い水準。売上高は2021年3月期の6254億円から2024年3月期には9623億円と1.54倍に成長。営業利益も同212億円の赤字から847億円に増加した。
海運大手3社の日本郵船、商船三井とともに共同出資で運営するコンテナ船事業がコロナ禍の運賃高騰で利益に大きく貢献。巨額の持分法投資利益で経常利益が急拡大している。
2022年3月期は売上高7569億円、営業利益176億円だが、経常利益は6575億円と営業利益の37倍。売上高経常利益率は86.9%となっている。2023年3月期も売上高9426億円に対して、経常利益6908億円で売上高経常利益率は73.3%。2024年3月期は売上高9623億円に対して、経常利益1357億円で売上高経常利益率は14.1%と低下したが、それでも高い水準で、3期平均では58.1 %という利益率となった。創立100年を超える企業として、驚くべき業績を挙げている。
2位は昨年8位のINPEXが3861点でランクアップ。12月決算のため、2023年12月期までが対象となる。成長性993点、収益性923点、安全性945点、規模1000点だった。原油価格の高水準に円安効果で売上高は2020年12月期の7710億円が2022年12月期は2兆3246億円と3倍の水準に。2023年12月期も2兆1657億円と高い水準。営業利益率も50%前後と高収益を維持。2024年12月期も業績好調で増収、営業増益と高順位が続きそうだ。
■昨年1位の東京エレクトロンの順位は?
3位は昨年5位から上昇したルネサスエレクトロニクスの3811点。自動車向け半導体メーカー大手で自動車用マイコンのシェアは世界首位だ。積極買収で製品群多様化を推進。半導体市場好況の中、2020年12月期の売上高7156億円が2022年12月期には1兆5008億円に増加するなどで、上位を維持している。
4位は昨年4年ぶりに首位に返り咲いた東京エレクトロンがダウン。総合得点は3810点だった。半導体製造装置で世界3位の同社だが2024年3月期の利益減少が響いた。ただ、2025年3月期は絶好調で返り咲きの可能性もある。
5位は昨年2位の中外製薬(3786点)。同社も12月決算のため、2023年12月期までが対象となる。コロナ治療薬「ロナプリーブ」の売り上げ減少などが影響して、ここ数年見られた高成長は難しくなってきた。だが、2024年12月期以降も新薬効果で安定成長の見込みとなっている。
6位は日本郵船が、昨年3位からダウン(3783点)。川崎汽船同様、コロナ禍での好業績で156位から8位、3位と上昇してきたが、2024年3月期は定期船や物流などの低迷で減収減益となり順位を下げた。
7位は信越化学工業(3782点)が4位からダウン。半導体シリコンウエハで世界首位の同社は半導体好業績が貢献していたが、2024年3月期は採算悪化などで営業減益。成長性が898点から856点に下がるなど昨年比で微減となった。
同じく7位にキーエンスが昨年9位から上がった。以下、9位コマツ(3775点)、10位SUBARU(3769点)が続く。
11位以下で大きく順位を上げたのは、105位→15位の東海旅客鉄道(3738点)、146位→18位の三菱自動車(3727点)、211位→41位のオリエンタルランド(3645点)などだった。
■フジ・メディア・ホールディングスの順位は?
話題のフジ・メディア・ホールディングスは226位の3278点。成長性726点、収益性876点、安全性853点、規模823点だった。2024年3月期の売上高は5664億円、営業利益335億円、営業利益率5.9%と利益率は並の水準。営業利益はサンケイビルなどの都市開発・観光事業が195億円、メディア・コンテンツ事業が157億円で不動産が上回っている。
主要業種のトップ企業は昨年同様の業種も多くトップ変動は6業種。そのうち3業種をご紹介する。
鉄鋼/非鉄金属/金属製品は11位日本製鉄(3760点)が昨年トップの住友金属鉱山(総合26位、3705点)を逆転。輸送用機器は10位SUBARU(3769点)がいすゞ自動車(同13位、3743点)を抑えトップに。情報・通信業は13位NTTデータグループ(3743点)がLINEヤフー(同35位、3656点)を上回った。
■業種別トップ企業の一覧
■過去18回のランキングトップの現状
最後に過去18回のランキングトップの現状をご紹介する。第1・2回トップの武田薬品工業は123位(3451点)。第3〜5回の3年連続と15・16回トップの任天堂は51位(3623点)。
4年連続トップ(第6〜9回)だったINPEXは2位、第10・11回トップのSUBARUは10位(3769点)。第12・13回トップのLINEヤフー(旧ヤフー)は35位(3656点)。2年前のトップの中外製薬は5位、昨年トップの東京エレクトロンは4位と過去のトップ企業はほぼ100位内に残っている。
会社四季報オンラインのスクリーニングで調べると、今期の最高益更新企業は1101社となった(2025年1月27日時点)。多くの企業で依然好業績が続く見込みだ。次回のランキングも上位企業の順位争いは激しくなりそうだ。
■1〜50位
■51〜100位
■101〜150位
■151〜200位
■201〜250位
■251〜300位
●第19回東洋経済・上場企業財務評価(東洋経済財務力ランキング)について
東洋経済新報社「財務・企業評価チーム」が作成。東洋経済が保有する財務データを使い、多変量解析の主成分分析手法で成長性、収益性、安全性、規模の4つの分野で評価した(分析方法についてはこちらを参照)。
対象会社は原則として2024年9月1日時点に上場している一般事業会社で、銀行、証券・先物、保険、その他金融を除き、各新興市場を含む。決算期は2024年3月期までが対象。財務データは上場後の決算で直近3期平均(最低1期は必要)を使用。指標データなどで分母がマイナスになり計算できない場合、その期は「計算不能」となる。
決算ベースについては、各期とも連結優先。ただし、連結開始や廃止などで連結と単独が混在する場合もある。また、変則決算がある場合は6カ月以上の決算期のみ使用。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益などのフロー項目は12カ月に調整した。
分析手法として使ったのは多変量解析の主成分分析。この手法は多数の変数を要約し、少数の情報で全体の特性を代表させることができる。財務データのような多数存在する項目を少ない情報に集約でき、総合評価が可能になる。
主成分分析で求められた第1主成分得点を偏差値化し、異常値をならすために最大70、最小30に変換。さらに最高1000、最低500に調整して各分野の得点とした。4つの評価分野の各得点を合計したものが総合得点となっている(総合得点の最高は4000点)。*マークは作成基準日(2024年9月1日)以降の上場廃止企業。
■ランキング算出に使用した財務指標
【成長性】売上高増減率、営業利益増減率、営業キャッシュフロー増減率、総資産増減率、利益剰余金増減率
【収益性】ROE(当期純利益÷自己資本)、ROA(営業利益÷総資産)、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)、売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)、営業キャッシュフロー
【安全性】流動比率(流動資産÷流動負債)、D/Eレシオ(有利子負債÷自己資本)、固定比率(固定資産÷自己資本)、総資産利益剰余金比率(利益剰余金÷総資産)、利益剰余金
【規模】売上高 、EBITDA(税引き前利益+支払利息+減価償却費)、当期純利益、総資産、有利子負債
注)EBITDAの支払利息と減価償却費はキャッシュフロー計算書掲載の数字を使用
ランキング掲載企業
川崎汽船/INPEX/ルネサスエレクトロニクス/東京エレクトロン/中外製薬/日本郵船/信越化学工業/キーエンス/コマツ/SUBARU/日本製鉄/リクルートホールディングス/NTTデータグループ/いすゞ自動車/東海旅客鉄道/豊田自動織機/ファーストリテイリング/マツダ/三菱自動車/ヤマハ発動機/ダイキン工業/商船三井/第一三共/デンソー/ブリヂストン/住友金属鉱山/東京ガス/住友林業/スズキ/キヤノン/日本航空/SMC/三井物産/住友電気工業/LINEヤフー/HOYA/富士フイルムホールディングス/TDK/JFEホールディングス/JT/オリエンタルランド/豊田通商/三菱電機/京セラ/オープンハウスグループ/日本ペイントホールディングス/出光興産/大和ハウス工業/三菱商事/クボタ/任天堂/積水ハウス/ファナック/住友商事/大阪ガス/日産自動車/村田製作所/アイシン/パナソニック ホールディングス/大塚ホールディングス/ホンダ/ニデック/セブン&アイ・ホールディングス/双日/伊藤忠商事/ENEOSホールディングス/丸紅/テルモ/三菱重工業/塩野義製薬/神戸製鋼所/三菱地所/三井不動産/東レ/NEC/AGC/富士通/J-POWER/三井化学/日立建機/光通信/旭化成/横浜ゴム/トヨタ自動車/TOPPANホールディングス/オリンパス/セイコーエプソン/近鉄グループホールディングス/ミネベアミツミ/ジェイテクト/西日本旅客鉄道/三菱ケミカルグループ/セコム/大日本印刷/日東電工/味の素/日立製作所/キリンホールディングス/KDDI/バンダイナムコホールディングス/日本酸素ホールディングス/リコー/東急不動産ホールディングス/東日本旅客鉄道/鹿島/大林組/ANAホールディングス/コスモエネルギーホールディングス/阪急阪神ホールディングス/日本電信電話/ソニーグループ/シマノ/阪和興業/アドバンテスト/小野薬品工業/アサヒグループホールディングス/マツキヨココカラ&カンパニー/SGホールディングス/サントリー食品インターナショナル/ヒューリック/SUMCO/アステラス製薬/武田薬品工業/東ソー/トヨタ紡織/大東建託/ディスコ/ユニ・チャーム/花王/中部電力/長谷工コーポレーション/王子ホールディングス/日本特殊陶業/飯田グループホールディングス/富士電機/川崎重工業/住友不動産/ローム/パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス/野村不動産ホールディングス/積水化学工業/メディパルホールディングス/クラレ/マクニカホールディングス/ニトリホールディングス/NIPPON EXPRESSホールディングス/SANKYO/ネクソン/東京製鐵/ベイカレント/SCREENホールディングス/ミズホメディー/野村総合研究所/東京建物/大成建設/住友ゴム工業/イビデン/M&A総研ホールディングス/清水建設/アルフレッサ ホールディングス/三菱マテリアル/日本ガイシ/豊田合成/ローソン/電通グループ/フジクラ/TOYO TIRE/プラスアルファ・コンサルティング/オムロン/フェローテックホールディングス/協和キリン/eWeLL/明治ホールディングス/セガサミーホールディングス/エムスリー/三菱ガス化学/荏原/ソフトバンク/東急/寿スピリッツ/GENOVA/キッコーマン/レーザーテック/インソース/WDBココ/エア・ウォーター/スズケン/サイバーエージェント/ウォンテッドリー/セルソース/LIXIL/住友化学/安川電機/ブラザー工業/ニコン/マキタ/ダイセル/イオン/シスメックス/IHI/KeePer技研/トヨクモ/コンフィデンス・インターワークス/アズーム/シンクロ・フード/Rebase/ケアネット/エーザイ/三井ハイテック/コナミグループ/ヤクルト本社/ローツェ/ストライク/日本精工/ボードルア/住友重機械工業/ビジョナル/小糸製作所/ゲームカード・ジョイコホールディングス/関西電力/MRT/I-ne/弁護士ドットコム/横河電機/サンリオ/フジ・メディア・ホールディングス/フォースタートアップス/santec Holdings/レゾナック・ホールディングス/スターツ出版/住石ホールディングス/カプコン/ビジョン/ポーターズ/大和工業/ワンキャリア/ダブルスタンダード/Sun Asterisk/大同特殊鋼/オープンワーク/浜松ホトニクス/マネジメントソリューションズ/三井松島ホールディングス/jig.jp/コアコンセプト・テクノロジー/チェンジホールディングス/円谷フィールズホールディングス/フルヤ金属/ダイフク/RS Technologies/NOK/ダイコク電機/SHIFT/竹内製作所/図研エルミック/島津製作所/内外トランスライン/ブティックス/バルテス・ホールディングス/アイドマ・ホールディングス/サイバーセキュリティクラウド/大塚商会/ニッパツ/ゼンショーホールディングス/メドピア/ブリッジコンサルティンググループ/三和ホールディングス/プロジェクトホールディングス/フロンティア・マネジメント/TIS/PR TIMES/ヨネックス/ヨシックスホールディングス/ヤマダホールディングス/野村マイクロ・サイエンス/資生堂/パーソルホールディングス/rakumo/アルメディオ/ヤマトホールディングス/オービック/東洋製罐グループホールディングス/マースグループホールディングス/ミクリード/ジーエヌアイグループ/GMOフィナンシャルゲート/アシックス/ギックス/新光電気工業/アクリート/ヤーマン/東武鉄道/UACJ/壽屋/インフロニア・ホールディングス/日本ハム/岩谷産業/マークラインズ/東宝/Macbee Planet
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最終更新:2/3(月) 5:32