「天井までゴミ、ゴミ、ゴミ…」「総重量2.5トンの服の山」…“買い物依存症の母”が溜め込んだモノやゴミを、2日間で片付けた結果 「ゴミ屋敷」となった実家はどう生まれ変わった?

2/8 9:02 配信

東洋経済オンライン

夫の死を機に、妻は買い物依存症になってしまった。3年後、その妻も他界。残された子どもが両親の住んでいた部屋に入ると……。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)代表の二見文直氏に、モノに依存してしまう人の共通点を聞いた。

動画:【前編】夫の死がキッカケでモノ屋敷に..天井まで積みあがった洋服
  【後編】夫の死がキッカケでモノ屋敷に..掃除の最終日に密着
※本連載がマンガになりました。ぜひ、無料で読める【漫画「ゴミ屋敷」〜孤独な部屋の住人たち〜】もご覧ください。

■処分した衣類の総重量は「2.5トン」

 駅前の一等地に建つマンションの一室。エントランスも廊下も落ち着いた印象の物件だが、その部屋だけは異常ともいえる状態だった。住んでいたのは1組の老夫婦。3年前に夫が先立ち、残された妻は寂しさからモノを溜め込んでしまった。

 とくに多いのは衣類だった。片付け終了後に処分した衣類の重さを量ると、なんと2500キログラム(2.5トン)を超えていた。ためしにTシャツ1枚の重さを量ってみると、約200グラム。つまり、Tシャツに換算すれば約1万2500枚も溜め込んでいたことになる。想像がつかないほどの量だ。

【写真】天井までギッシリ! 「総重量2.5トン」の服の山…“開かずの間”だった実家の驚く内部【生まれ変わった部屋を見る】(55枚)

 玄関にはすでに衣装ケースが積み上げられていて、部屋に入った瞬間に圧迫感を覚える。作業の見積もり時、廊下に積み上がっていたゴミは崩れ、床は足の踏み場もない。ゴミの上に乗り、奥の部屋を覗くと、わずかに日の光が差し込んだカーテンが見えた。頭の高さまでゴミが積もっているのだ。

 玄関の右手にある洋室は天井までゴミ。左手にある洗面室も天上までゴミ。奥にあるリビングも、もうひとつの和室も同じような状況だった。ほぼすべての部屋がゴミの上にしゃがむと頭が天井についてしまうのだ。

 しかし、生ゴミの類いはまったくと言っていいほどなく、ホコリっぽいだけで臭いはない。家中を埋め尽くすゴミ袋を開けてみると、その中身のほとんどが新品の衣類だった。そんなゴミ袋がベランダやコタツの中にまでなだれ込んでいた。

■夫を亡くした寂しさから「買い物依存症」に

 老夫婦はこの部屋に20年近く住んでいた。もともと夫が健在のときからモノの量は多いほうだったという。そんなこともあり、老夫婦は長らく子どもたちを部屋に上げることを拒んでいた。そして、夫が他界。その寂しさから、残された妻のモノを買うペースに拍車がかかってしまった。

 夫の死後、3年して妻も他界。遺品整理のため何年かぶりに子どもたちが部屋に入ると、冒頭の状況を目にし、ショックを隠せなかった。当時、依頼主と言葉を交わした二見氏が話す。

 「何でこの状況に気付いてあげられなかったのか、寂しさを買い物で埋めていたんじゃないかと、かなり後悔されている様子でした。最後に部屋へ入ったのは、5年前だったそうです。そのときからモノは多かったようですが、ここまでひどくはなかったとおっしゃっていました」(二見氏、以下同)

【写真】天井までギッシリ! 「総重量2.5トン」の服の山…“開かずの間”だった実家の驚く内部【生まれ変わった部屋を見る】(55枚)

 老夫婦はお金には困っていなかった。子どもたちに頼ることもなく、老後資金で暮らしていた。だからこそ、モノを買い込むことができたわけだが、ゆえに子どもたちは異変に気付くことができなかった。

 子どもたちは関東で生活をし、親戚も九州にいた。加えて、部屋は賃貸ではなく分譲マンションだったので家賃は発生しない。結局、イーブイに片付けを依頼するまで1年間、手つかずのままだった。

■高いモノが買いたいわけではない

 現場に入ったスタッフはいつもより多めの8人。まずは玄関と廊下のゴミを搬出し、作業スペースを確保する。それから天井まで積み上がった各部屋のゴミを崩し、仕分けをしながら外へ運び出していく。

 衣類の多くはすでにゴミ袋に入っていたが、このまま捨てることはできない。1つひとつ中身を出し、別のゴミ袋に移し替える。というのも、中にスプレーやライターが入っていると、ゴミ集積場で爆発する恐れがあるからだ(死亡事故に発展する危険性もある)。実際、ゴミ袋の中にはいくつかライターが交じっていた。

 お金に余裕はあったが、衣類の多くは3000円前後の手頃な価格のモノだった。二見氏いわく、これはどのモノ屋敷にも共通していることだという。

 「高いモノを買いたいわけではなく、何回も買いたい。だから、自然と安いモノになる傾向があるんです。わかりやすい例でいうと、100円ショップの商品。モノ屋敷には100円ショップで売っているような細々とした雑貨がめちゃくちゃ多いです」

 しかし、モノを溜めてしまう人を頭ごなしに否定してはいけない。この老夫婦も子どもたちに何か言われるのが嫌で、部屋に上げようとしなかった。

【写真】天井までギッシリ! 「総重量2.5トン」の服の山…2日間にわたる片付けの様子【生まれ変わった部屋を見る】(55枚)

 「私はフィギュアが好きで、ソフビ(ソフトビニール)人形を何体もコレクションしています。でも、その趣味がない人からすれば、“何に使うの?”と思うかもしれません。インテリアの一種みたいなものですし、好きなモノの価値観って人によって違うんです」

 本が好きな人は読み終えた本も捨てずに本棚に並べている。何なら、数年間読んでいない本ばかりが並んでいることもある。本を一切読まない人からすれば、「メルカリで売ったほうが得じゃない?」「そもそも買わなければいい」と思うはずだ。

■遺品をすべて捨てたワケ

 1日目はスペースを確保して作業は終了。これだけモノが多いとさすがに2日ないと終わらないようだ。翌日も引き続きゴミの搬出を続け、最後は段ボール4箱とテレビとテレビ台だけを残し、作業は完了した。

 遺品はあらかじめ子どもたちが取り出していると思いきや、この日までほとんど部屋には立ち入っていないという。

 「貴金属、通帳、印鑑などの貴重品は保管しましたが、ほかは全処分でした。1つひとつ見始めたら気になってキリがないし、もともと知らなかったモノばかりなので捨ててしまっても同じこと。そんなふうに依頼者さまは考えていました」

 家族の思い出の品や、両親が大切にしていたモノがあったらどうするのだろう。そう考える人もいるはずだが、これもモノに対する価値観の違いだ。空っぽになったマンションの一室も、間もなく売却した。

※本連載がマンガになりました。ぜひ、無料で読める【漫画「ゴミ屋敷」〜孤独な部屋の住人たち〜】もご覧ください。

【写真】天井までギッシリ! 「総重量2.5トン」の服の山…2日間にわたる片付けの結果【生まれ変わった部屋を見る】(55枚)

東洋経済オンライン

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最終更新:2/8(土) 9:02

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