• トップ
  • ニュース
  • 雑誌・コラム
  • 38歳の“エリート部長”が「横領金300万」で部下に「ボディタッチ」…訴えられた「セクハラ上司」が会社に放った、キモい言い訳

38歳の“エリート部長”が「横領金300万」で部下に「ボディタッチ」…訴えられた「セクハラ上司」が会社に放った、キモい言い訳

3/29 7:02 配信

マネー現代

(文 村井 真子) 労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が、労務顧問として社労士として企業の皆様から受ける相談は多岐にわたります。

 経済や社会情勢の変化によって労働問題やハラスメントの捉え方も変わり、「明らかにアウト」「明らかにセーフ」といった線が引きにくい時代になりました。

 社労士としてグレーゾーンの問題を取り扱ってきた経験では、こうした問題に対処するには労働法だけではなく、マネジメントや人事制度など幅広い知識が必要になります。

 あるIT企業で部長職にあったT部長(38歳)は、若く優秀なエリートでした。しかし、秘書であり恋人でもあったEさんをはじめ、社内の複数の女性社員との恋愛トラブルを起こし、しかもそのうちのIさんとは会社の経費でデートしていたのです。

 T部長は会社にとって自分は必要な人材だと自負していましたが、社員からもセクハラと告発を受け、そのためにT部長は諭旨解雇処分となりました。

 一体、どのような経緯で、T部長はこのような事態を招いていったのでしょうか。また、どうして恋愛トラブルが解雇相当のセクハラと判断されたのでしょうか。<【前編記事】女性秘書が絶句した、38歳「エリート上司」との社内交際中に発覚した、同性の部下からの「ヤバすぎる訴え」>に引き続き、「なぜT部長は解雇まで至ったのか」という観点で事例を見ていきたいと思います。

「社会勉強だから」の一言で…

 Iさん曰く、最初のセクハラのきっかけはT部長のプロジェクトチームの一員として参加した打ち上げがきっかけでした。複数人のメンバーで居酒屋でプロジェクト成功のお祝いをした日、Iさんは酔ってしまい、帰る方向が同じT部長が送っていくことになりました。

 ところがそのタクシーの車内で、T部長が「Iさんはかわいいね。性格もいいし一生懸命で」と声を掛けながら手に触れてきたのだそうです。Iさんは一瞬変だなと思いましたが、酔って気持ちが悪かったのと自意識過剰と思われるのが怖くてそのままにしていました。

 その日は自宅の近くで降ろしてもらったそうですが、「自宅を知られるのはまずい」と咄嗟に思ったのだそうです。

 その後もさりげなさを装ってT部長からIさんへのアプローチは続き、企業営業や商談会などへも同行を求められるようになりました。この頃IさんはT部長の直属の部下になり、さらにT部長との時間が増えることになります。IさんはT部長の時間が増えること自体は嫌でしたが、キャリアを考えて受け入れていたそうです。

 そのような関係のなかで、接待明けや商談会後のIさんの夕食は、いつもT部長がご馳走してくれました。自分の財布では支払えないような高級フレンチや懐石などの店に連れていかれ、Iさんが断ってもT部長は「社会勉強だから」と特に気にする様子もなかったそうです。

 しかしこのような高額な食事が続いたり、一流の会社の役員に会うからとブランド物の名刺入れやバックを贈られたりと明らかに度を越したプレゼントが続いたため、Iさんは同性の管理職でもあるEさんに相談したとのことでした。

 思い悩んだEさんはこの話を聞いた後、信頼している他社の友人にT部長との関係を伏せて相談します。その友人からそれは間違いなくセクハラになる、早く手を打つべきだと諭され、翌日Eさんは経営者である創業メンバーの役員たちに相談があった事実を打ち明けたのです。

次々と明るみになった「ウラの顔」

 私が介入したのは、このT部長の態度はそもそもセクハラなのか、セクハラだとしたらどのような処分を行うべきか、という相談からでした。私はまず、経営者へIさんとT部長を物理的に引き離したいということをお願いしました。

 同社はその時点ではT部長が営業のすべてを把握していたため、ひとまずIさんに同意をとり、いったん在宅勤務に切り替え、T部長とのやり取りはすべて社内コミュニケーションツールを使って行うよう指示しました。

 また、社内にハラスメント対策委員会の立ち上げもお願いしました。メンバーは経営者、人事部長、Eさん、窓口担当者になる予定の中堅社員になるはずでした。しかし、EさんはT部長との関係があったため、その事実を知る経営者の判断で委員会からは外れることになりました。

 こうしたセクハラ案件のヒアリングでは、個別に当事者から事実の聞き取りを行うとともに、当事者がどのように事実を把握しているのか、という見え方についても確認していきます。そこで食い違いが出るとどちらかの認識に齟齬があるということになるからです。

 IさんとT部長は食事に行った事実とプレゼントの贈答があったことについては認識が一致していましたが、Iさんはそれを仕事を超えたものだと思い、T部長は職務上必要があったと主張したところが食い違っていました。

 T部長は確かにIさんを異性として好ましく思っていたようですが、毎回食事に連れて行っていたのはそこで当日の業務についてのフィードバックをするためだと主張したのです。

 しかし、委員会では現にIさんが不快感を感じていること、手や髪に触れるといったボディタッチが頻繁にあったこと、洋服やメイクに対して口出しをすることもあったということからセクハラだと認定しました。

 さらに、T部長がIさんにご馳走していた食事代、都合300万円相当が会社の経費から支出されていたことが調査中に発覚したのです。これから資金調達を行うタイミングであったこともあり、同社はT部長の処分について熟慮を重ねた結果、自分から退職届を出すように伝え諭旨解雇処分としました。

 これにT部長が応じなかった場合、懲戒解雇になります。外聞も考えたのか、T部長は処分通知を受けた翌日に退職届を提出しました。

 Eさんは、こうしたT部長の調査の間は本当につらかったそうです。しかし、一連の処分を経て、かえってこうしたことが結婚前にわかって本当に良かったと言っていました。今はEさんも同社を離れており、同社は無事資金調達を行ってさらに事業を発展させています。

 Iさんが勇気をもって告発し、Eさんがそれをきちんと経営者層に問題として提起したからこそ明るみに出たT部長のセクハラと私的流用ですが、多くの場合コンプライアンスがきちんと順守されるかどうかはこうした対応がとれるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。

 きちんとガバナンスが効いている組織を作ることもまた、企業にとっては重要なことだと言えるでしょう。

 *

 さらに続きの<28歳の女性が青ざめた「集団パワハラ」の実態…パート先での「突然の昇進」に嫉妬した同僚たちの「執拗ないやがらせ」>では、職場で集団パワハラに遭い窃盗の濡れ衣を着せられたケースで行った解決策を明かしています。

マネー現代

関連ニュース

最終更新:3/29(金) 7:02

マネー現代

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング