自律神経の乱れが整う「音読」意識したい4つの点 コロナ禍で声出す機会が減少、疲れやすい体に

3/28 11:32 配信

東洋経済オンライン

「音読で疲労が回復する」と聞いたら、どう思いますか? にわかには信じがたい話だと思うかもしれません。でも実は、科学的根拠がちゃんとある話なのです。自律神経研究の第一人者小林弘幸氏の著書『1日1分で自律神経が整う おとなの音読』より、疲労回復や不眠の改善に効果的な「大人のため」の音読のコツを4つご紹介します。

■音読は小学生の勉強のためだけ? 

 「いつも自分だけ疲れている」「寝ても疲れが抜けない」「なんとなく不調が増えた」。いずれも日々診察する中でよく耳にする声です。このような悩みを持つ患者さんに私が薦めている健康法、それが音読です。

 音読と聞くと、「小学生がお勉強のためにやるもの」というイメージが強いかもしれません。でも実は、音読によって声を出すこと、自分の声を聞くこと、リズムのよい自然な呼吸をすることは、意識的に自律神経を整え、疲労・不眠といった心身の不調を改善するのにとても効果的なアプローチです。

 具体的な音読のコツをお伝えする前に、なぜ私が今、音読をこんなにもおすすめしているのか、お話しさせてください。

 2020年から長らく続いたコロナ生活の影響で、多くの人が「声を出す」機会を失ってしまったことは、みなさんもご存じの通りです。

 これによって何が起きたか。うつ病の増加です。もちろんほかにも要因はありますが、「声を出す」という行為は、私たちが心身のバランスを保つために非常に重要な行為です。 数年単位でこの機会が失われれば、私たちの体は容易にバランスを崩してしまいます。

 「声を出さないだけで大げさじゃない?」と思うかもしれませんが、声は心と体のバロメーターの役割を担っています。心と体が整っているときは、スラスラとよどみなく話せますし、乱れているときはぎこちなくなります。そして、声を出さなければ、自分がバランスを崩していることにさえ気づけず、徐々に平衡感覚を失ってしまうのです。

 私自身、コロナが明けた直後は、大学での講義や講演会で思うように声が出せず困惑してしまいました。言葉の歯切れも悪ければ、息継ぎもうまくできない。自分でも気づかぬうちに、心身のバランスが乱れていたのです。

 コロナを通じて、「声を出す」ことがいかに私たちの健康を支えているか再確認させられました。ではなぜ、「声を出す」ことで、疲労や不眠、ひいては体の不調全般を改善することができるのでしょうか。

■疲れやだるさは自律神経の乱れが原因かも? 

 疲れや体のだるさを感じる要因の1つに、「自律神経のバランスが崩れること」が挙げられます。「それならば自律神経のバランスを整えればいい」というわけですが、それがなかなか難しいのです。

 ご存じの方も多いかもしれませんが、自律神経とは、心臓や腸、胃、血管などの臓器を「自律的」に動かすための神経のことです。「自律」という言葉通り、私たちの意思とは関係なく24時間休まず働いています。

 この自律神経には、体を興奮させる「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」の2つがあります。日中、活発に活動している時には交感神経が働き、心拍数が増えたり、瞳孔が拡大したり、消化が抑えられたりします。

 逆に、夜になると副交感神経が働き、眠くなったり、心拍数が減ったり、消化が促進されたりします。これらの活動を私たちの意思でコントロールすることはできません。

 「眠くなろう!」と思って眠くなることはありませんよね。夜になって、食事を取って、お風呂に入ると、自然と副交感神経が作用して、眠くなるわけです。

 この、「自律的に」というのがなかなか厄介なところです。人間関係のストレスやプレッシャー、気圧など、なんらかの影響で自律神経のバランスが乱れてしまうと、そのバランスを自分で取り戻すことはなかなか難しいからです。

 だからこそ、自律神経の乱れによって発生する疲労や不眠、なんとなくの不調などは、だらだらと長続きしやすいです。まして、コロナのように生活習慣を変えてしまう程のインパクトから以前のバランスを取り戻すまでには、相当な時間がかかるでしょう。

 「みんなと同じことをしているのに自分だけ疲れる」「寝ても寝ても疲れが抜けない」「病院に行くほどではないが、ずっと不調が続いている」という人は、自律神経がバランスを崩したまま戻らない状態に陥っている可能性が高いです。

■音読で自律神経が整うメカニズム

 それでも「自力で」自律神経を整える方法は、いくつかあります。その中で最も簡単な方法が、音読です。

 音読によって自律神経が整う理由は大きく2つです。1つは、自分の声を聞くことで、客観的に自分のバランスを把握できるから。もう1つは、音読自体にリラックス効果があるからです。

 音読によって声を出し、自分の声を聞き、リズムのよい呼吸をすると、セロトニンという脳の興奮を抑えるホルモンが分泌され、自律神経がリラックス(副交感神経が優位な)状態へと切り替わります。

 自律神経がバランスを取る上では、興奮(交感神経が優位な)状態も必要ですが、とかく働きすぎ、ストレスを抱えすぎな現代人にとっては、このリラックス状態をどう意識的につくり出すかが極めて重要です。

 さて、では具体的に何を意識して文章を音読すればいいのでしょうか?  これには大きく4つのコツがあります。

■音読の4つのコツ

 ① まず、音読する前に、深呼吸をする

 音読の前に、深い呼吸でリラックスした状態をつくりましょう。コツは鼻から3秒吸い、口から6秒吐く「1:2」のリズムです。これを1分程度行うことで、副交感神経の働きが高まります。背筋を伸ばして、上を向いて行うとさらに効果的です。ぜひ音読する前にやってみましょう。

 ② ゆっくり読む

 次はいよいよ実際に音読していきます。3~5分程度で読み終わるような文章を用意して、普段よりもゆっくりと読みましょう。そうすることで、自然と呼吸が深くなり、リラックス状態をつくりやすくなります。

 最初のうちは、つっかえたり、読み間違えたりしてもかまいません。まずは声を出すことや、口を動かすこと自体を楽しんでいきましょう。まるで歌うように、言葉にリズムが出るとなおいいでしょう。

 ③ 口角を上げて大きな声で読む

 音読の際に意識してほしいのが、口の形です。口角を上げて読むよう意識しましょう。少し口角を上げるだけでも、副交感神経が刺激されます。口はできるだけ大きく開けて、一音一音はっきりと発音しましょう。少し大げさなくらいがちょうどいいです。また、周囲の迷惑にならない範囲で、できるだけ声も大きく出しましょう。

 ④ 感情を込めて読む

 自律神経を整えるための音読においては、泣ける話、クスッと笑える話、恋でドキドキする話など、できるだけいろいろな感情を込めやすい文が「いい文」です。ぜひ自分なりの感情を込めて読んでみてください。声や呼吸に自然な抑揚がつくだけでなく、ストレス値の減少にも効果的です。

 カラオケ好きの人ならわかるかもしれませんが、「歌ってスッキリした」という感覚は、これらの要素を自然と満たしているからなのです。

■音読の習慣で、身体を整える

 いかがでしょうか? コロナ渦を経て、以前より疲れを感じやすくなった人は多いように思います。コロナで「声を出す」機会がぱったりと途絶えてしまったことで、自分でも気づかないうちに、後戻りできないほど自律神経のバランスを崩してしまった人が増えたのでしょう。

 もし、「コロナ明けからずっと調子が悪い」「こんなに疲れやすかったっけ?」と感じているのなら、その不調は自律神経の乱れが原因の可能性が高いです。

 ぜひこの機会に、音読の習慣を試してみてください。きっと元気だった頃の自分を取り戻せるはずです。

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最終更新:3/28(木) 11:32

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