ソラナ、日本に本格参入──元dYdXの大木氏がSuperteam Japan代表就任【インタビュー】

5/15 17:01 配信

CoinDesk Japan

Solana(ソラナ)が日本での活動を加速させる。


ソラナには、各国の代表者がSolana Foundation(ソラナ財団)から助成金を受けて、自国のエコシステムの成長を促進するためのコミュニティ「Superteam」という仕組みがある。現在、Superteamはイギリス、ドイツ、インド、ベトナム、ブラジルなど、10カ国以上で活動しており、現在も拡大している。


5月15日、Superteam Japanは、その発足と活動内容を発表した。日本でソラナに携わる多くの人にとって、待望のスタートだという。リリースによると、活動内容は以下のとおり。


なお、Superteam Japanの代表には、dYdX Foundationの元Japan Lead、大木悠氏が就任した。大木氏は「私たちは、日本の既存のSolanaコミュニティの皆様と協力し、日本の開発力、団結力、そしてイノベーション力をグローバルに示していきたいと考えています」とリリースに記している。


Superteam Japan発足にあたり、大木氏にSuperteam Japanの取り組み、日本では何に注力していくのか、ソラナの強みと弱みをどのように認識しているのかなどを聞いた。

Superteamの役割

──Superteam Japanの発足と活動内容を発表されました。どのような活動に取り組むのかもう少し詳しく教えてください。


まずは「コミュニティGDP」を増やすことです。バウンティ(報奨金)という仕組みがあって、コミュニティのメンバーが互いにプロジェクトを紹介したり、ソラナについてXに投稿するとBountyを稼ぐことができます。またイベントのオーガナイズを任せていただくとか、ゲーム系プロジェクトのコミュニティマネージャーを引き受けるなど、Superteam Japanのメンバーが実際の案件に携わることを目指していて、その総額を「コミュニティGDP」と称しています。今、Superteamは10カ国以上にあり、GDPでも競争しています。


コミュニティと聞くと「ボランティア」というイメージがあるかもしれませんが、Superteamとしては、しっかりと経済が回るようにしたい。対価を得て、コミュニティのメンバーに動いてもらえるようにしたいと考えています。


もう1つは、日本のソラナ開発者を増やすことです。具体的に言うと、グローバルハッカソンでの入賞もしくはHonorable Mention、名誉ある言及の獲得を目指します。日本の大手企業やプロジェクトにも、どんどんソラナ上でプロダクトを開発してもらいたい。


今、日本はゲームで注目されていますし、最近ではDePIN(分散型物理インフラ・ネットワーク)も話題です。またソラナは米決済大手Stripe(ストライプ)との提携を発表したように決済にも力を入れていきます。NFTも安価に発行できる技術があります。そうした波に乗っていきたい。


──ソラナ財団とは異なる組織で、違う役割を担うと考えてよいのでしょうか。また財団の日本支部のようなものが作られる予定はないのでしょうか。


財団の日本支部のようなものは今は存在しませんし、今後も作る計画はないと思います。以前、dYdX財団にいた経験もあり、ストレートに言うと、財団は規制当局に対応するために作られている面があります。チェーン開発から、例えば、マーケティングやトークン発行、ガバナンス運営などを切り離して任せるために作られている。なので、組織としてリーガルチームの力が強く、営業やプロモーション側からすればストップがかかることが多く、いわば「攻めの姿勢」ではありません。各国の事情に合わせたベストな選択をすることも難しい。


私の想像ですが、財団がそうした現状を受け止めた結果、Superteamを作り、各国でのソラナエコシステムの盛り上げやサポートを任せることにしたのだと思います。

待望の発足

──グローバルでは、Superteamはいつ頃から始まっているのでしょうか。


2022年だったと思います。最初はインドから始まり、今は10カ国以上に広がっています。日本は大きな経済規模があり、すでにソラナジャパンというコミュニティがあって、ディスコードに2000人以上のメンバーがいます。熱いユーザーもバリデーターも開発者もいます。「日本にSuperteamはなぜないの?」という状況でした。


──日本のWeb3は大企業の関与が特徴的と言われますが、大企業への働きかけは注力していくのですか。


ぜひ、やっていきたいと思っています。実際にプロダクトを開発したいと考えているところから、R&D段階のところ、またアイデアベースで模索中というところまで、我々の考え方やソラナの利点を伝えつつ、技術的なサポートも行っていく。デベロッパーリレーションができる人材をチームメンバーに揃えて、具体的なサポートをしていきたいと思ってます。


もちろんSuperteamだけでなく、冒頭に説明したバウンティの仕組みを使って、コミュニティを巻き込み、還元していくことで、関わる人を増やしていきたい。


──バウンティの仕組みや具体的な報酬額を考えることは、大変な作業ではないですか。


グローバルですでに2、3年の実績があり、「こうしたバウンティは応募者が多い」「予算はこれくらいでOK」というフレームがあります。各国のSuperteamとは週に1回、ミーティングを行い、情報を共有しています。同時に「コミュニティGDP」で競い合うなど、良い意味でのライバル関係があります。


その意味で、コミュニティ作りではソラナは進んでいると思っています。今、時価総額で見ても、ビットコインやイーサリアム、BNBに次ぐ位置にあります。チェーンとしてポテンシャルがあり、グローバルでのコミュニティ作りの知見もあり、開発者の力も強い。日本にはすでにコミュニティが存在しており、我々はオフィシャルな存在として、グローバルとの架け橋になります。日本の活動や貢献をグローバルに伝えることも大事だと思っています。


──日本のWeb開発では、アスターやポリゴン、アバランチなどの動きが伝えられています。ライバルとして意識しているチェーンはありますか。


「ない」と言えば嘘になりますが、ソラナとしてできることを粛々とやっていきたいと考えています。ソラナの強みとしては、高速性、低コストがあり、「早い、安い」などと言われますが、「早い、安い、楽しい」だと思っています。コミュニティの力が大きな特徴で、一緒に盛り上げられる体制を作っています。そのアドバンテージやユニークさを生かしていきます。

乗り越えるべき課題

──冒頭でユースケースとして、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)をあげておられました。


DePINは、Hivemapper(ハイブマッパー)、Helium(ヘリウム)など、少し前から存在するプロジェクトも含めて、多くのDePINプロジェクトがソラナ上に構築されています。ソラナの高速性、低コストが要因になっていると考えています。日本でも話題になってきているので、企業の取り組みや温度感などを具体的に調べていきます。DePINは、ハードウェアが絡むので、直感ですが、日本企業と相性が良いと思っています。


──一方で、ソラナに対しては年に1回程度は大きな障害があり、金融機関は採用を警戒するのではないかとの声もあります。USのオピニオン記事に「ベータ版のフリをするのはやめよう」という記事もありました。そうした声は認識されていますか。


もちろん認識してます。そしてもちろん改善の余地はまだまだあると思っていて、開発者も同じ認識を持っています。


ただし言い訳をするわけではありませんし、誤解を恐れずに言うと、もちろん止まってしまうことは良くないことですが、いわばストレステストを経験し、常に前に向かっていること。問題を何度も乗り越えてきていることは、ひとつの強みではないかと思っています。仮定の話ですが、例えば、これまで1回も止まったことがないチェーンが止まってしまって、どう対処すればよいかわからなくなるようなことも危ないのではないでしょうか。技術として、止まることもあるという前提に立つことも忘れてはいけないと思います。


絶対に止まらないシステムを目指せば目指すほど、システムのコストは上がり、結果的にユーザーに跳ね返ってきます。理論上、絶対に止まりませんではなく、もちろん良くないことですが、止まってしまったときにすぐに対応できる体制、連携できる体制が大切だと思います。


──Superteamが発足した後、具体的に予定されていることはありますか。


次のグローバルハッカソンがおそらく秋から冬にかけて開催されます。まず日本から参加する開発者を増やし、入賞を目指してほしい。また夏にかけて、Web3、ブロックチェーン関連ではイベントが続くので、日本のソラナコミュニティのパワー、そしてソラナのブロックチェーンに対する考え方、思想を伝えていきたいと思っています。


ソラナは実践主義、プラグマティズがベースにあり、トライアンドエラーでやってみて、失敗したら前向きに捉えて、どう改善するか考えようという精神があります。分散化についても、やみくもな分散化至上主義は好みません。数十億人のユーザーに使ってもらうことを最優先に考えるべきだとして、検閲耐性やコンポーザビリティを大切にしつつも、ただ単に分散化を追い求めることはしません。


またソラナは会社ではなく「都市作り」を目指しているという話も面白いです。ガレージからのイノベーションは予測不可能なことですが、仮に企業として上場すると、四半期ごとの決算などを出さないといけなくなります。それは予測することが前提な仕組みであって、将来の姿が見えていないといけない。


一方、都市の成長はもっとオーガニックです。つまり、基礎となるプロトコルはあっても、その上でどんなアプリケーションが人気を集めるか、バズるかは予測するものではないという考え方です。そうしたところもソラナの面白さなので、うまく伝えていきたいと思っています。


|インタビュー・文:増田隆幸|画像:Superteam Japan代表・大木悠氏(提供:大木悠氏)

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最終更新:5/15(水) 17:03

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