業界歴20年超・家賃年収7億の大家が伝授、規模拡大できない原因と対策《楽待新聞》

11/30 19:00 配信

不動産投資の楽待

最前線で活躍する不動産投資家の「今の声」を届ける「インベスターズボイス」。今回のゲストは、大阪市の一棟物件を中心に40棟700室を所有する「中せ健」さんだ。22歳の時に不動産業界に転職し、その後独立。27歳で不動産投資を始め、年間家賃収入は7億円に上るという。

中せさんは20年以上不動産業界に携わり、時代の変遷を見てきた。これまでにリーマンショックやアベノミクスを経てきたことで、不動産投資の旨味も危険性も体感してきたという。

昨今、金利上昇や不動産価格高騰、人口減少といった業界環境が大きく変化するなか、中せさんは現状をどう捉えているのか。


2024年10月、20年以上にわたる不動産投資の知見を集約し、『都市型不動産投資戦略【改訂版】』(プラチナ出版)を発刊した中せさんに、資産を拡大してきた戦略を聞いた。

■収益を生む物件に育てるという考えを持つ

―現在の不動産市況についてどう感じていますか?

この10年で、不動産投資をめぐる状況は厳しくなったと感じています。10年前の当時は不動産投資の注目度が低く、プレイヤーも少なかったので、現在よりも安く物件を購入できました。結果として、利益を出しやすかったわけです。

しかし、現在は市場が成熟し、物件価格も上昇しています。10年前に物件を買った人は利益を得られますが、これから不動産投資を始める方が利益を出すには、リフォームであったり、さまざまな種別への投資を行うことだったりと、工夫が必要だと思います。

―リフォームに関しては、どのような工夫が必要になってくるのでしょうか

物件価格の上昇に伴い、利回りが下がっています。そのため、購入後にリフォームをして価値を高める視点を持つことが大切です。

たとえば、築20年の物件を1億8000万円で購入し、7000万円をかけてリフォームしたことがあります。

この物件は、レジデンス20室と倉庫5室があるうち14室が空室でした。そのうえ、老朽化した状態のまま安い賃料で貸し出されており、利回りはわずか3%でした。

そこで、私は「価値を上げる」リフォームを行ったんです。中途半端にやってしまうと価値も下がってしまうので、外壁、内装、エントランス、7000万円をかけて全てリフォームしました。

12月から始めて翌年の9月にリフォームが終わりましたが、この時点で入居は全て決まっており、満室が実現しました。

安く貸していた部屋は家賃を上げることもできたため、結果的に利回りは13%にまで上がりました。約2400万円がCFとして手元に残ります。

■買うべきエリアを数値化

―不動産投資をしていく上では、「人口減少」を不安に思う人もいます。これについてどう思いますか?

投資家さんは都心に住んでいる人が多いので、人口減少への体感はあまりないかもしれません。ただ、地方に行けば人口が減っていることをあらゆる場面で感じ取れます。

地方とはいっても全てがダメなわけではない。ですが、地方に行けば行くほど、「良いエリア」はピンポイントになっていくのは間違いないです。

―エリアの良し悪しはどのように評価していますか?

東京や大阪、名古屋、福岡などの大都市を中心に実地調査を重ね、地域ごとに10段階で数値化しています。私はこれを「地域評価」と呼んでいます。

1は「都心一等地、主要駅前」、2と3は「都心の人気エリア」、4と5は「都心から少し離れた人気エリア」、6と7は「都心街、市街地でも人気エリア」といった感じです。

―大阪市内での例を教えてください

「1」「2」に該当するのは梅田や難波、天王寺など主要エリアのほか、西区の北堀江や南堀江が当てはまります。

「3」や「4」では、玉造、南森町、福島あたり。一部の「4」や「5」では、住吉区、平野区、吹田市、豊中市などが該当します。ただ、駅前の立地なら評価を0.5ポイント減らし、たとえば評価4のエリアでも駅に近ければ「3.5」として評価します。

―これから不動産投資をする人が購入すべきは何番のエリアですか?

「1」や「2」の物件は、好立地ゆえに物件価格が高く、利回りも低いため、経験の浅い方が購入するのは現実ではありません。

一方、評価4や5のエリアは価格と賃貸需要のバランスがよく、収益も期待できます。

こうしたエリアの物件で経験を積み、いずれは評価1や2のエリアに進む、あるいはバランスを見ながら買い足していくといったステップを踏むのも手だと思います。投資のステージに合わせて、狙うエリアを変えることが大切です。

■買うべきなのは「売却できる物件」

―中せさん自身の現在の投資戦略はどのようなものですか?

最近は利回りが非常に低いですが、こうしたものを高い利回りに仕上げていくようにしています。かつ、レジデンスだけでなくテナントビルや、新築、区分、民泊など、不動産にかかわるものは全て攻めていく感じです。

ただ、都心エリアに集中して投資していく方針をとっています。以前は広い地域で投資していたんですが、売却をして、真ん中(都心)に集中させるようにしました。

―中せさんはあらゆる物件種別、手法を攻めるということですが、たとえば「築古投資」「地方の高利回り投資」などに対してどのように思っていますか?

厳しいようですが、売却できず困ることになる可能性はあると思います。

そもそも、入居がなければ「ゴミ物件」になってしまいます。もし、(手法にこだわって)「ゴミ物件」となってしまうようであれば、早めに売却する必要が出てくるのではないでしょうか。

また、解体費用と土地の値段もきちんと考えておくべきです。土地の値段より解体費用の方が高いケースも出てきています。特に地方だと、土地も広いけど建物も大きいこともあるので、注意が必要です。

―物件を買い進めていくと、「これ以上買えない」という状況に陥ることがあります。なぜ、規模を拡大できない状況に陥ってしまうと思いますか?

特に築古物件を買っているケースですが、最近は築古物件に融資をしてくれないことが多くあります。中でも地方の築古物件は最悪で、地域的にも、物件的にも融資が下りず、出口も見当たらない…。こうした物件は増えていると思います。

また、古くなればなるほど返済期間が短いので返済比率が高くなり、CFの観点から「まわっていない」ことになってしまうと思います。

何より、返済・負債・資産・収入・売却のバランスを整えることが重要です。これさえできれば金融機関も融資をしてくれやすくなるので、前に進めるはずです。

ただ、もちろん簡単ではありません。すでに投資をしている方が、バランスを改めて整えるのは難しい。お金のある初心者の方がやりやすいくらいだと思います。

―初心者の方でいうと、築古物件をキャッシュで買う、といったケースもあると思います。こういう例はどう思いますか?

キャッシュで買うということは、安い物件になりやすくなります。そうなると、古かったり、地方だったり、問題があったりと、何かしら安いワケがあると考えられます。

そう考えると、初心者の方で、今後もしもっと規模拡大したいと思うのであれば、「融資を受けられる物件」を買うべきです。つまり、「売却を絶対にできる物件」を買うべきなんです。

それに、キャッシュで買ってしまった場合、金融機関側の意見を聞いていないことになります。というのも、キャッシュで買うということは、「この物件、融資を10行に相談したけど全部断られた…」という経験をしていない。金融機関も「やめておいた方がいいよ」と言ってくれることもありますが、こういう意見を知らないことになるので、危ないと思います。

―ローンが付く物件が良いんですね

はい。ただ、融資がつくとはいっても、ワンルーム投資などはやめた方がいいと思います。20平米以下の物件などですね。今後、売却したくても売れなくなってしまうと思います。

―規模拡大するために、投資家はどのように行動すべきでしょうか?

安全に規模拡大するためには、ある程度の売却は必要になってきます。物件を買うということはキャッシュがなくなっていくことです。

売却を絡めてキャッシュを集め、そしてまた、利回りが低くても良いところに物件を買うんです。

たとえば、「家賃収入を1億円にしたい」と目標を立てた場合、まずは収入を1億5000万円ほどに増やし、うち一部の物件を売却してキャッシュを確保します。次に、利回りがやや低くても資産価値の高いエリアにある物件を購入します。この方法を、「Uターン戦略」と呼んでいます。

■会社を安易に辞めない方がいい

―不動産投資をしたいという方の中には、「FIRE」を目指す方もいらっしゃいます。中せさんはFIREについてどう思いますか?

「本当に会社を辞めて大丈夫か?」「辞めた後の生活設計はどうなっている?」と友人にもよく尋ねています。実際、「辞めたいんですけど大丈夫でしょうか?」と相談されることも多いですが、私は「仕事は続けるべき」と考えています。

私が独立したのはバブル崩壊の時期で、不動産業界では倒産が相次ぎました。また、リーマンショックでも不動産価格が大幅に下落し、人生の厳しさを痛感しました。

私は、FIREを目指すなら、まず十分な資産を築き、ある程度の安心を得てから会社を辞めるべきだと考えています。

仮に家賃収入が年間1000万円あっても、返済や諸経費、税金を差し引くと、実際には手残りが十分な額でないことが多いものです。さらに、会社を辞めてしまうと、物件購入をしたくても融資を受けにくくなるリスクもあります。

―キャッシュフローの安定のために節税を重視する投資家も多いですが、どのようにお考えですか?

節税を意識すると、手元にキャッシュが残らない場合が多いです。たとえば、経費を積み上げて節税をすれば、税金はゼロになりますが、キャッシュもゼロです。

金融機関は、利益が出て税金を払っている企業を評価します。ずっと黒字になっているかどうかは重視されます。納税という義務を果たさず、融資という権利ばかり主張する投資家を金融機関は好みません。納税は、融資を受けるためのチケットのようなものだと私は思います。

不動産投資の楽待

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最終更新:11/30(土) 19:00

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