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「パチスロにハマるよりヤバい…」精神科医が警鐘を鳴らす、オンラインカジノが“闇落ち”必至であるという「本当の恐ろしさ」

2/26 10:02 配信

東洋経済オンライン

 「M-1グランプリ」で2連覇を果たした人気お笑いコンビの令和ロマン・髙比良くるまさんの活動自粛が話題になっている。

 これは、くるまさんが過去に、日本では違法とされているオンラインカジノで遊んでいたことに端を発する。これについて、警視庁保安課が任意の事情聴取を行ったというのだ。くるまさん以外にも、同じ吉本興業の一部タレントが事情を聞かれており、活動を自粛しているという。

 昨年には、アメリカメジャーリーグ・ドジャースの大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平氏が、オンラインのスポーツベッティングサイトに巨額の資金を投入していた事例も大々的に報道された。

 非合法なオンラインギャンブルの問題が世間一般にも認識されるようになってきている。

 筆者の勤務先である久里浜医療センターでは、長年にわたりギャンブル依存症患者の治療に取り組んでいるが、ここ数年、当院を受診する患者の傾向が変化してきている。それはCOVID-19による社会的自粛の前後でより明確となった。

 今回の記事では、ここ数年間のギャンブル依存症患者の変化と、非合法オンラインギャンブルの危険性について解説する。

■コロナ禍以降、オンラインカジノ利用者が爆増

 日本の主なギャンブル産業(パチンコ・パチスロおよび、競馬、競輪、競艇、オートレースのいわゆる「公営3K1A競技」)は、バブル景気崩壊後の1990年半ばからその利用者数、売り上げともに減少の一途を辿っていた。

 しかし公営ギャンブルにおいては、2000年代半ばに民間企業が運営(広告・集客など)に参加することが可能となり、その減少にやや歯止めがかかるようになった。さらにその後、2011年を底として現在に至るまで売り上げは復調傾向にある。

 その最大の理由は、スマートフォン所有率の増加であると思われる。

 とりわけCOVID-19の蔓延による各施設への入場参加自粛を契機として、ギャンブル利用者が従来のランドギャンブル(パチンコ・パチスロおよび、実際の競技場や場外売り場を利用する公営ギャンブル)から、オンライン機器を用いたギャンブルに移っていく変化がみられた。

 現在では、公営3K1A競技利用者の約8割以上がオンラインでの利用者である。またそれに伴ってオンラインカジノの利用者が急激に増えている。

 久里浜医療センターのギャンブル依存症外来受診の調査では2017〜2019年に受診した患者のうち、オンラインカジノを利用していた人は約4%であったのが、2022〜2024年では約19%に増加している。

■「オンラインカジノ」は何が問題? 

 あらためて、「オンラインカジノ」や「海外スポーツへのベッテイング」は公営ギャンブルと何が異なり、問題なのだろうか。

 最初の問題点は合法か違法か、という点である。

 日本において、公営ギャンブルを20歳以上の者が行うことは、当然、合法である。しかし20歳未満の者が行うことは法律で禁じられている(ただし、当事者への罰則規定自体はなく、20歳未満であると知りながら当事者に投票券を譲渡、販売した者が罰金刑となる。この点は飲酒や喫煙の問題と類似している)。

 これらの公営ギャンブルが合法であるというのは、競馬法などの法律によって規定されている。

 では、どういったギャンブルが公営ギャンブルと認められ、合法なのか。

 現在の日本においては前述の3K1Aに加え、宝くじとスポーツ振興くじ(いわゆるtotoなど)のみがそれに該当している(パチンコやパチスロはどうなるのか?  それらは公営ギャンブルではないが合法になるのか?  という問題が当然生じてくるが、それは今回の主題ではないので割愛させていただく)。 

 オンラインカジノや海外スポーツベッティングサイトを、日本国内で利用することは違法行為であり、それは「刑法第185条(賭博の罪)」「同第186条(常習賭博の罪)」によって規定されている。後者では最高で懲役3年の重い罪が科せられる可能性がある。

■公営のオンラインギャンブルよりもハマりやすい

 続いての問題点は、オンラインカジノの射幸性(ギャンブル性)や簡便性、即時性だ。

 ネット上で宣伝されているオンラインカジノでは、最高配当倍率が数万倍から数十万倍に設定されているのが通常である。また、一度に賭けられる金額は最低が10ドル、最高賭け金額は1000〜5000ドル(決済方法による)程度に設定されているところが多い。

 1回の勝負で数十万ドル(つまり日本円では数千万円)の獲得も可能と宣伝している業者もあり、否応なしに射幸性は煽られる。

 また、公営のオンラインギャンブルとは異なり、思い立ったときに、いつでも実行可能な点(簡便性)、結果がすぐ出る点(即時性)も、オンラインカジノにハマりやすくなる特徴だ。

 3K1Aの公営ギャンブルはレース競技であるという特性上、たとえオンラインであっても競技の実施日、実施時間直前でないと賭博行為自体が成り立たない。日本全国の競技にアクセスできる環境であっても夜中に賭けることはできないのである。

 そして賭博行為においては、結果が早く出るほうが熱中しやすいということが知られている(これを「遅延割引効果」という。1年先に結果が出るギャンブルに夢中になる人はほぼ存在しないということからも理解できるかと思う)。

 オンラインカジノはこれらの点をクリアしており、従来の公営オンラインギャンブルよりも早く依存状態になってしまう人が多いのも当然だと思われる。

 最後の問題点は、オンラインカジノが犯罪行為を誘発するリスクが高いということ。

 昨今のニュース報道によると、若者が特殊詐欺グループの手下となり、さまざまな犯罪に手を染めて検挙されるケースが相次いでいるが、その理由には闇金融に借金返済を迫られてというものが少なくない。

 検挙された者の約21%が、借金返済を主な理由に特殊詐欺に加担している。

 当院の外来受診患者の調査においても、オンラインカジノを行っていた者の闇金融利用率は他のギャンブルを行っていた者のそれよりも明らかに高く、約3人に1人が闇金融を利用している。

■大学生が“たった半年”で数百万の借金

 ここで、筆者が実際に診た患者の例を挙げる(プライバシー保護のため内容を一部改変)。

 22歳の男子大学生の話だ。彼は高校時代からオンラインゲームが好きで、たびたび課金行為をくり返していた。しかし、それはあくまでも自身の小遣いの範囲であり、家庭で決めていたルールを逸脱することはなかった。

 その他は特に変わりなく、普通に大学に進学した。問題行動が表面化したのは、20歳を超えてからである。彼はそれまでのオンラインゲームの延長の感覚で、オンラインカジノを開始したのだ。

 オンラインカジノは日本では違法ギャンブルであるが、誰でもすぐに登録可能であり、クレジットカードがあれば、ものの10分で始められてしまう。

 当院を受診する患者の多くがそうであるように、彼も当初はオンラインカジノが違法であることを知らず、軽い気持ちで始めてしまった。

 当時の心境を彼に聞くと、「はじめのうちはそれまでやっていたネットゲームの延長のつもりだった。お金を賭けることについては、最初は大丈夫なのかな、とは思ったけど、あっという間に何十万円も手に入って興奮して、それから止められなくなった」とのことだった。

 あっという間に自分のクレジットカードの限度額まで使い切った彼は、消費者金融で借金をしてオンラインカジノに注ぎ込むようになった。しかし、一介の学生が正規の金融機関で借りられる金額などたかが知れている。

 彼はネット上で即日大金を貸してくれるという金融会社を見つけ、借金をするようになった。そこは闇金融であり、彼の借金はあっという間に数百万円に膨れ上がった。

 恐ろしいのは最初にオンラインカジノに手を出してから、この状態に至るのに半年もかかっていないという点である。結局、このケースでは事情を知った彼の両親が借金の肩代わりをすることになった。

■「早い、多い、ヤバい」の危険性

 従来のギャンブルと比較して、オンラインカジノの恐ろしい点は、「依存状態になるまでの時間が早い」「総借金額が多い(パチンコ・パチスロや公営オンラインギャンブル利用者と比較すると、オンラインカジノ利用者の平均借金額は明らかに多い)」「犯罪行為などヤバい状況に巻き込まれるリスクが高い」の3点である。

 社会経験に乏しく、ギャンブルにのめり込むことの危機感に欠けた若年者にユーザーが増加している(オンラインゲームから抵抗なくオンラインギャンブルに移行する利用者も少なくない)。

 そしてオンライン上においては、合法ギャンブルと非合法ギャンブルの区別がつきにくい現状が、問題を引き起こしていると考えられる。

 この記事を読んでいる皆さんも、「早い、多い、ヤバい」のオンラインカジノに、ゆめゆめ手を出さないように願いたいものである。

東洋経済オンライン

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最終更新:2/28(金) 14:51

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