「大規模アイスショー」が人気を獲得した独自性、「ファンタジー・オン・アイス」は他と何が違うのか

5/24 6:02 配信

東洋経済オンライン

5月24日、千葉県の幕張メッセで、フィギュアスケートの大規模アイスショー「ファンタジー・オン・アイス2024」が開幕する。国内外のトップスケーターが一堂に会し、著名ミュージシャンによる生演奏とフィギュアスケートとのコラボレーションプログラムを楽しめる人気のショーだ。
フィギュアスケート興行を取り巻く環境が激変する今、5000人規模の観客を集めてきた名門ショーは今後どうなっていくのか。主催企業であるCIC・真壁喜久夫社長のインタビューや現場の様子から考える(本編は前・後編の前編)。

■2024年も世界的なスケーターが出演

 「ファンタジー・オン・アイス」は、多くの国内アイスショーの中でもとくに人気のアイスショーだ。毎年複数の会場を回るが、スタートは例年、千葉県・幕張メッセの幕張イベントホール。2024年の幕張公演は5月24(金)~26(日)に3公演が予定されている。

 五輪2連覇の羽生結弦さんを筆頭に、世界選手権で2度優勝したステファン・ランビエルさん、2024年世界選手権3位のアダム・シャオ イム ファさん、世界選手権2位の実績を持つ宮原知子さんら、世界的なスケーターが出演する。そして、アーティストとしては、T.M.Revolution / 西川貴教さん、城田優さん、安田レイさんが出演する(出演スケーター、アーティスト共に幕張公演および愛知公演の予定)。

■なぜ人気のショーになったのか

 フィギュアスケートといえば、まず競技会、五輪や世界選手権などが思い浮かぶかもしれない。春夏はオフシーズンに当たり、この時期には、プロ、アマチュア(競技会に出場する選手)のトップスケーターが「アイスショー」と総称されるエンターテインメント性の高い興行に出演するのが通例だ。

 「ファンタジー・オン・アイス」もそんなアイスショーの1つ。その人気を支えてきた要因は複数ある。まずは、「トップスケーターと著名アーティストのコラボレーションプログラム」だ。このプログラムは、ほかのアイスショーとの差別化の源泉となってきた。

【写真】「ファンタジー・オン・アイス2023」幕張公演初日を振り返る。羽生結弦さん、荒川静香さん、ステファン・ランビエルさん、ジョニー・ウィアさん、三原舞依さん、山本草太さん、友野一希さんら(90枚以上)

 これまでにも、ゴスペラーズ(2010年)、倉木麻衣さん(2011年)、郷ひろみさん(2014年)、CHEMISTRY(2016、2018年)、スガシカオさん(2022年)、広瀬香美さん(2022年)ら大ヒット曲を持つアーティストが出演している。

■ライブ演奏とスケートの華麗なコラボ

 「ファンタジー・オン・アイス」では、長方形のアイスリンクの一辺にステージが設置され、アーティストのライブ演奏に乗せてスケーターの演技が披露される。

 例えば2023年の幕張公演では、福原みほさんの歌う「ライジング・ハート」をオープニング曲、DA PUMPの2人が歌う「U.S.A」をフィナーレ曲として、大勢のスケーターが歌声とともに舞った。

2023年幕張公演初日のコラボプログラム

(スケーター「曲目」/アーティスト ※敬称略)
三原舞依「花」/夏川りみ
ライラ・フィアー&ルイス・ギブソン「'S wonderful」/夏川りみ
荒川静香「Broken Heart」/福原みほ
ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン「I will always love you」/福原みほ
アンサンブルスケーター「Lady Marmalade」/福原みほ
織田信成「涙そうそう」/夏川りみ
友野一希「紡―TSUMUGI―」/ISSA

田中刑事「All My Love To You」/ISSA
羽生結弦「if…」/ISSA & KIMI
 フィギュアスケートに音楽はつきもので、2014年以降は競技会でも歌声の入った曲が使用されている。

 スケーターとアーティストのコラボは、ともすると「音楽が生演奏になるだけ」と従来の演技の延長線上で捉えられるかもしれないが、「ライブ」であるがゆえの特徴は明確にある。

 通常、フィギュアスケート向けの音源はプログラムに合わせて用意されたもので、当然、何度でもまったく同じ音楽が流れる。しかし生演奏では、テンポや次のフレーズに入るタイミングなどが演奏するごとに微妙に異なる。スケーターにはそれに対応する動きが要求され、アーティストにもスケーターと息を合わせたパフォーマンスが求められる。

■高級BGM付きフィギュアスケートでなく「ダブル主演」

 主催企業であるCICの真壁喜久夫社長は、「ファンタジー・オン・アイスの観客は多くがフィギュアスケートファンですが、出演アーティストは単にBGMの役割を担う存在というわけではありません。アーティストとスケーターはどちらも主役なんです」という。

 スケーターとアーティスト双方が主役の自覚を持ち、パフォーマンスを高め、リスペクトしあって力を出し切る。そこから、異分野共演ならではの感動が生まれる。

 アーティストへのオファーは、「まずは誰もが知るヒット曲を持つ方、そして優れた歌唱力をお持ちの方にも出演していただきたい。近年は、今後ますますの活躍が期待される若手アーティストにも出演してもらっています」(真壁社長)。

 コラボ曲は多くの観客の記憶に残る過去のヒット曲から新進気鋭の若手の曲まで幅広い。

 会場や映画館でのライブビューイングには、出演アーティストのファンで「フィギュアスケートを見るのは初めて」という人も少なからず訪れる。ショーの後にはSNSで、アーティストのファンがフィギュアスケートの魅力を、フィギュアスケートファンがアーティストの魅力を語るなど、エール交換のような交流が行われることもある。

■進化するコラボレーション

 スケーターとアーティストが一緒に練習する時間を必ずしも豊富に取れるわけではないが、時間的な制約の中での進化も魅力の1つだ。公演を重ねるにつれスケーターとアーティスト双方のパフォーマンスが磨かれ、音楽とスケートがより調和していく。

 「誰に言われるでもなく、互いにコミュニケーションを取って振り付けを合わせてきたりもするんです。一度本番を迎え、会場の熱気やスケーターの本気の演技との化学反応を体感することでアーティストのテンションも上がっていく。初日の演技後にはお辞儀をしあっていた2人が、次には握手をし、それがもっと力強くなり、最終日には抱き合ってお互いを称えたりもします。表現者同士のエネルギーがぶつかり合って特別な空間になります」(真壁社長)

 初日の緊張感、それがこなれていく過程、最終日の盛り上がりまで、同じ曲でも異なる演技になる。ファンからは全公演の映像を見たいという声も上がり、ほぼ同じプログラムの公演が、公演日ごとにCSなどで放送される場合もある(有料放送を中心に再放送も盛んに行われている)。

■空中と氷上を行き来する「フライング」演目も

コラボ演目だけではない。あらかじめ用意された音源を用いるプログラムも多数あり、現役選手からベテランまで、個性を生かしたプログラムを演じる(写真ページ参照 )。

 さらに近年は、メリー・アゼベドさん&アルフォンソ・キャンパさんによるフライング・オン・アイス(ロープを使って宙に浮かび上がり、空中と氷上を行き来しながらアクロバティックな演技を披露する)にも感嘆の声が上がる。

 昨年の「ファンタジー・オン・アイス2023」幕張公演では計30演目が披露され、開演から終演までにおよそ3時間半を要した(公演の途中、製氷を兼ねた25分程度の休憩時間を含む)。

 これはアイスショーとしてはかなり長い公演時間だ。盛りだくさんの内容で、出演するスケーターやアーティストが多い分、制作費用もかさむ。 一方、チケット代金はプレミア席2万7000円、アリーナ席2万5000円、SS席2万2000円、A席1万円など、アイスショーの相場から外れていない。これを実現するカギとなるのが、「一社制作体制」だ。

 国内のアイスショーは、メディア企業やアスリートのマネジメント会社などが複数主催の一員となり、企画・制作・運営・演出進行については、専門の業者に外注することが多いという。他方、「ファンタジー・オン・アイス」は、イベント企画・制作を主たる事業とするCICが一気通貫にショーを制作している。

 後編では、CIC流のアイスショー制作、フィギュアスケートにかける思い、そして近年のアイスショーの世界の変化を深掘りする(後編は近日公開)。

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最終更新:5/26(日) 0:02

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