ひと言で子どものやる気を上げる「声かけ10選」 自己肯定感が高まるポジティブな言葉

4/17 6:32 配信

東洋経済オンライン

自己肯定感は、子どもが今後の長い人生を生きていく力、幸せになる力そのものです。どんな否定的な状況のなかでも、自己肯定感があれば、笑顔になれます。つらいことや悲しいことが起こったときにどう乗り越え、幸せを見つけていけるか、『何があっても「大丈夫。」と思える子に育つ 子どもの自己肯定感の教科書』より一部抜粋・再構成のうえ、子どもの自己肯定感を育てる方法をご紹介します。

■ほかの子と比べるのは危険

 わたしはよく、たとえ話として「うさぎと亀」の話をします。

 うさぎと亀が競走をして、足の速いうさぎが油断してお昼寝しているあいだに、ゆっくり歩く亀に追い抜かれてしまいます。気がついたうさぎが急いで追いつこうと走りますが、亀のほうが先にゴールしてしまう話です。

 うさぎも亀も、スタートもいっしょ、ゴールできたこともいっしょです。

 何が違うかというと、うさぎは、だれか(ここでは亀)と比較して行動していたこと。亀は、うさぎのことは気にせずに、ただあきらめずにゴールに向かっていったという点です。

 うさぎは亀が来なければ昼寝し、亀に追い抜かれたとなれば走り出す。うさぎの行動は、亀との比較が基準です。うさぎを人間にたとえるなら、他人と比較することでしか自分の価値を決められない、他人と比較して行動するということになり、他人に振り回される「他人軸」の人生になってしまいます。

 一方の亀はどうでしょう。

 亀はうさぎのことは見ていません。見ていたのは「ゴール」だけ。自分軸をもって、ゴールするぞと歩いていたのです。競走の途中では急な山道を上ったり下りたり、道が曲がったり、まさに紆余曲折があったでしょう。

 でも亀はゆっくりでも「ああ、自分には長い爪があってよかったな。この爪があれば転ばなくて済むな」とか、「疲れたけど、4本の足を使って踏ん張ろう」と思いながら、ゆっくり、でも着実にゴールに近づいていたはずです。亀は、「もうダメだ」「ゴールなんてできるわけない」などと思わなかったですよね。

 このときの亀の頭のなかで起こっていることこそが、わたしがよくお伝えしている「肯定感情」であり「肯定脳」です。これがあれば、1歩1歩、ゴールに向かっていくことができるのです。

 小学校の高学年に入っていく10歳ごろは、自己肯定感が下がりやすい時期ともいえます。どうしても友だちと比べて「○○ちゃんはできるのに、わたしはできない」「○○くんももっているから、ぼくもほしい」などといったように、人との比較によって判断したり、浮き沈みをしたりしやすくなります。

 学校に行けば同級生がいる。人と比べるなといってもなかなか難しいでしょう。だからこそ、せめてお母さん、お父さんは、だれかと比較するのではなく、子どもの強みや、子どもの目指す目標や目的に向かって歩けるように意識して声かけをしてあげましょう。

 「うさぎと亀」の亀のように、自分でゴールを設定できるように導いてほしいのです。その子の特性を伸ばすために、まずはここが第1歩です。

 第1回、第2回で紹介したような言葉かけをどんどんして、子どもに肯定感情や肯定脳ができていけば、子どもは自分の目標に向かって着実に歩いていきます。

■子どもを観察して0.1ミリの成長に気づく

 声かけのポイントはもう1つあります。

 それは、0.1ミリでもいいから、成長したところを探すこと。結果ではなく、プロセスをほめることです。ほんの少しの成長を伝えるためには、子どもをちゃんと観察して気づいてあげる必要があります。

 成長やプロセスをほめるときにやってしまいがちなのが、ほかのだれかと比較してしまうことです。

 だれかと比較することがよくないことは知っている親御さんは多いかもしれませんが、たとえばこんなほめ方をしていませんか? 

 「まだ小学校に入ったばかりなのに、こんなにきれいな字が書けるの?  すごいわね!」とか、ピアノの発表会で「あなたがいちばん上手だったわよ」とか、おもちゃを片づけた子どもに、「あなたはいわなくてもちゃんとできるのね」とか。

 一見、具体的な友だちやきょうだいと比べているわけではないから、よさそうに見えますよね。

 でもじつはこれ、親御さんのなかで無意識にだれかと比べているのです。

 こんなふうにほめられたらお子さんは、「きれいな字を書きつづけなければいけない」「ピアノ教室のだれよりもうまく弾きつづけなければいけない」「いわなくてもできる子でいなければならない」と思ってしまいます。

 これでは子どもの自己肯定感につながらないどころか、その子はいつも自分をだれかと比較することでしか、自分を肯定できなくなってしまうかもしれません。

 人と比べるくせが抜けないまま思春期になってしまうと、「恥ずかしいよ、こんなダサい格好」「どうせみんなもやってないし」などと言ったりします。つまり、判断基準がいつも「他人の目」なのです。

■とにかく成長したところを探す癖をつける

 比べるとしたら、「昨日(過去)のお子さん」と比べましょう。

 ほんの少しの成長に気づくためには、肯定的なことをいつも探すことが大事です。

 1メートルの成長である必要はありません。0.1ミリでいいんです。

 難しいことではありません。コツは“その子”を見ればいいだけ。

 「昨日より5分早く起きられたね」でもいいですし、もっといえば「『おはよう』の“は”が昨日より大きな声で言えたね」なんてことでもいいんです。

 もちろん親御さんも忙しいので、毎日じっくり子どもを観察することなんてできないのもわかります。だからこそ、いっしょにいられるわずかな時間、朝起きたとき、食事のとき、送り迎えのとき、歩いているとき、手を洗うとき、おふろの時間、遊ぶ時間、テレビを見る時間、おやすみ前の時間、いつでもいいです。

 子どものいいところを探し、0.1ミリでも成長したところはどこかな?  と探すゲームのような感覚で楽しんでみましょう。

■自己肯定感が高まるポジティブな言葉10選

 わたしたちは言葉で思考しています。ですから、ふだんからお母さん、お父さんなどまわりの大人からどんな言葉をかけられているかは、とても重要です。

 少し厳しい表現になりますが、親が不適切な言葉かけをすると、子どもは不適切な言葉や思考を覚えてしまいます。

 ここでは、自己肯定感が高まるポジティブな言葉かけを10個ご紹介します。実際、わたしがお子さんとのセッションでも意識してかけていた言葉ばかりです。ぜひ参考にしてみてください。

①「~しようね」
 「~をしてはダメでしょ!」。こんなふうに親はよかれと思って注意をします。でも、子どもからすれば何を求められているのか想像できませんし、お母さん、お父さんが怒っていること、自分が否定されたことだけが強烈に子どもに伝わってしまいます。

 「~しないで」「~してはダメ」といった否定の表現より、「~しようね」とすべきことをポジティブに具体的に伝えましょう。

 たとえば、「騒がないで」「走り回っちゃダメ」→「静かに聞こうね」「ここでじっとしていてね」というように。そのほうが何をしたらいいのかはっきりわかり、学びにもつながります。

②「あなたの○○を見ているよ」
 先にも少し触れましたが、努力やプロセスを見ていたことを伝えます。
たとえば「あなたががんばってきている姿をわたしは見ていたよ」というように、努力を認めていたり、プロセスをきちんと見てくれていたりすると、子どもはさらにポジティブになっていきます。

■見た目より考え方や感じ方、感性をほめる

③「あなたの○○はすばらしいね」
 これは目に見えないものをほめるときに伝えます。

 たとえば「あなたの考え方はすばらしいね」とか「あなたの感じ方はすばらしいね」というように、子どもの思考や感情に対して賛美すると、その子の想像性はさらに豊かになっていきます。

 ピンと来ない方は、自分が言われたら……と想像してみてください。大人だって、洋服や持ちもの、見た目をほめられるより、目に見えない考え方や感じ方、感性をほめられるとうれしいでしょう。子どもならなおさら、目に見えないものをほめられたら、そこをもっと伸ばそう、と思うものなのです。

④「あなたの意見はとても素敵だよ」
 じつはこれはとても大切なワードです。

 そもそも、お母さんやお父さんが、このように子どもの意見をほめる場面は、まず見たことがありません。学校の先生にたまにいらっしゃるくらいではないでしょうか。

 子どもの意見に対して「素敵だね」「すばらしいね」「大切なことだね」などと言葉かけをすることは、子どもの自己表現をうながすことにつながります。これは子どもが自己表現をしていく過程で、とても大切なのです。

⑤「大丈夫だよ」「次はうまくやれるよ」
 これは、子どもが何か失敗したときの声かけです。失敗しても問題ないよ、次があるからねという、再チャレンジすることへのポジティブな声かけです。

 10歳前後になり自我が芽生えてくると、大なり小なりいろいろなチャレンジをして失敗したときに落ち込んだり、プライドが傷ついたりすることもあります。そのときに失敗しても大丈夫、次があるよという言葉かけを親ができるようにしておけば、失敗によって自己肯定感が下がることはないでしょう。

 ただし、気をつけてほしいことがあります。なんの努力もしていない段階で大丈夫といったり、課題点を振り返らずに次はうまくやれるよということは、子どもの不安や心配の種になりますので注意してくださいね。

⑥「~してくれてありがとう」
 これは文字通り、子どもがしてくれたことに関して、親が素直に感謝を伝えることです。

 「やって当たり前」「大したことではない」ということはありません。

 子どもがしてくれたことでお母さん、お父さんは助かった、支えてくれてありがとう、という気もちを、言葉にして伝えましょう。自己肯定感が高まるのはもちろん、子ども自身も、だれかに「ありがとう」が言える大人に育ちます。

■努力やプロセスにフォーカスすることで肯定脳をつくる

⑦「○○をしたことが大切なんだよ」
 これも②に通じるものですが、努力やプロセスなど、子どもがやったことそのものに対して、大切なことだと伝えます。

 たとえばテストの結果が望んだものより低かったり、目標に達していなかった場合でも、「今回のテスト、一生懸命やったよね。そのことが大切なんだよ」と、伝えるのです。

 テストの結果ではなく、一生懸命やったことにフォーカスすることで、どんな結果でも肯定的にとらえることができます。これが子どもの肯定脳、肯定感情をつくるためにはとても必要なことなのです。

⑧「いつも自分を信じ大切にしていいんだよ」
 お母さん、お父さんが子どもにこの言葉をかけることは、まずないのではないでしょうか。

 「わたしはあなたを信じているからね」と子どもに伝える親御さんは多いのですが、10歳を過ぎたら、いつも自分で自分を信じていいんだよということを連呼してもいいくらいだと思っています。

 すると子どもは、自分自身を大切にすることや、自分を信じてちゃんと生きていこうとする力がつきます。

■短所を長所に変換する「リフレーミング」

⑨「あなたの個性はとてもすばらしいよ」
 子どもの個性や特性に対して、肯定的な声かけをしましょう。

 たとえばいつもほかの子よりもゆっくりで動作が遅い子に対して、「あなたはいつも自分のペースでじっくりとり組めるのね」。ひといちばい敏感で繊細な子に対して、「感受性(感じる心)が豊かだね」などと伝えます。

 これは「リフレーミング」と呼ばれるもので、短所に見えるものを長所ととらえてポジティブ変換する方法です。

 子どもが小学校に入るころには、まわりの友だちと比較して、自分の個性や特性を自覚しはじめます。点数などの数字や運動能力などでわかりやすく評価され、否定的なことを言われることがあるかもしれません。

 でも少なくとも家庭でお母さん、お父さんが肯定的にとらえている空気があれば、子どもは自己肯定感を下げることなく、個性を発揮していけるようになっていきます。

⑩「いっしょに楽しもうね」
 子どもが何かをやるときに、ぜひいっしょに楽しんでください。これはストレートに自己肯定感が高まる言葉です。「ここにいていいんだ」「ここにはぼく(わたし)の居場所があるんだ」と無条件に感じることができ、自信があふれてくる言葉です。

 子育てをしていると、どうしても「まったくもう!」「いい加減にして!」など、自分のネガティブな感情を吐き出してしまうこともありますよね。

 ネガティブな言葉は、子どもの脳を育てないことが研究でもわかっています。「言葉のかかわりはポジティブに具体的に」、これがきほんです。

 少しずつでいいので、今日から自己肯定感が育つような言葉を伝えていきましょう。そうすることで、子どもの肯定感情と肯定脳はどんどん育っていきます。

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最終更新:4/17(水) 6:32

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