初のデジタル永久劣後債、24年度の実現へ協議-野村系のブーストリー

4/19 7:00 配信

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(ブルームバーグ): 野村ホールディングスの子会社で、デジタル証券の発行・管理システムを提供する「BOOSTRY」(ブーストリー、東京・千代田)は、初の企業による個人投資家向けデジタル永久劣後債の2024年度内発行を目指し、大手証券会社と協議している。

ブーストリーの佐々木俊典最高経営責任者(CEO)がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。ブロックチェーン技術と永久劣後債の親和性の高さや、考えられる発行企業、流通市場での取り扱いやシステム対応などについて、国内の証券会社や大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)と話し合いを進めているという。

物価上昇で資産価値が目減りするリスクが高まる中、個人を対象に新たな金融商品を提供し、「貯蓄から投資へ」の転換を促す動きが強まりつつある。その一環としてデジタル証券の発行機運も徐々に高まっており、3月には大和証券グループ本社が利払いを原則として楽天グループの電子マネーで行う国内初のデジタル社債を個人向けに発行した。

ブーストリーが検討する永久劣後債は、償還期限の定めがなく、社債の形式ながら国際会計基準(IFRS)上の資本として扱える。佐々木氏は、合併・買収(M&A)や設備投資で債務比率が高くなった企業が活用することを想定。劣後債はデフォルト(債務不履行)時の弁済順位が普通社債より低くリスクが高いため、投資家は高い金利収入が期待できると話した。

日本のデジタル証券は現在、ホテルや温泉旅館、物流施設など不動産の証券化が中心だ。23年12月に発行後の流通取引がODXで始まり、新規発行が増える環境が整ってきた。ブーストリーの調べでは、23年度の発行総額は976億円と、前年度の約6倍に急拡大。佐々木氏は、24年度は1700億円程度までさらに拡大するとみている。

デジタル市場で永久劣後債を発行した例はなく、課題もある。佐々木氏は、株式と異なり値上がり益は追求しない一方で、株式配当のように保有している限り「永続的に利回りを得られるという新しい概念の投資商品になるため、投資家需要について調査が必要」だと話す。金融機関の担当者の中には「ハードルがあるため自社で最初に進めるのは難しいという声もある」と言う。

大和総研の大橋俊安理事は、デジタル社債は「取引所での売買も始まり資産運用の選択肢となり、未来の社債のあり方として期待できる」と話す。一方で、「証券会社は発行体のクレジットや、永久劣後債のリスクや商品性などを投資家にしっかり説明する必要がある」と指摘した。

(c)2024 Bloomberg L.P.

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最終更新:4/19(金) 7:00

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