ハイオクって何の略?レギュラー車に入れたら壊れる?安全運転のプロが教える「ガソリン豆知識」

4/17 11:02 配信

ダイヤモンド・オンライン

 日頃から何気なくガソリンスタンドを訪れ、愛車に給油している人は多いはず。ですが、ガソリンについての情報は意外と知られていません。「ハイオク」とは何の略語なのでしょうか。レギュラー仕様のクルマにハイオクを入れると故障するのでしょうか。そんな豆知識を、安全運転のプロが基礎から解説します。(モータージャーナリスト、安全運転インストラクター 諸星陽一)

● 「ハイオク」って何の略? 意外と知らないガソリン豆知識

 ガソリンスタンドでは、レギュラー・ハイオク・軽油の3種類を給油できるのが通常です。このうち、レギュラーとハイオクはガソリンエンジン用燃料、軽油はディーゼルエンジン用燃料です。

 ガソリンエンジンに軽油を入れたり、ディーゼルエンジンにレギュラーやハイオクを入れたりするのはNGです。間違った燃料を入れた状態でエンジンを始動すると、最悪の場合は故障するので、速やかに燃料を抜き取る必要があります。

 万が一誤って給油した際は、ガソリンスタンドに相談するか整備工場に連絡しましょう。もちろんこの際も、間違った燃料を入れたまま、愛車を運転して相談に行くのは厳禁。専門家にガレージや駐車場まで来てもらうことを強くおすすめします。

 こういったガソリンに関する情報は、クルマを安全に乗りこなす上で重要なはずですが、意外と世の中に知られていないように思います。

 そこで今回は、ガソリンに関する豆知識をお届けしていきます。

 「ハイオク」とは何の略語なのでしょうか。レギュラー仕様のクルマにハイオクを入れたり、ハイオク仕様のクルマにレギュラーを入れたりすると、何が起きるのでしょうか――。

● ハイオクの正式名称は 「ハイオクタン価ガソリン」

 早速、本題に入ります。ハイオクの正式名称は「ハイオクタン価ガソリン」。燃えにくさを表す指標である「オクタン価」が高いガソリンという意味です。

 日本工業規格(JIS)によると、オクタン価が89以上のものがレギュラー、96以上のものがハイオクとなっています。後者の方が「火が付きにくい」わけですが、そこにどのようなメリットがあるのでしょうか。

 ガソリンエンジンは、混合気(気化したガソリンと空気の混ざったもの)をシリンダーの中に吸い込み、ピストンで圧縮した後、スパークプラグで点火する仕組みになっています。それによって混合気を燃焼させ、動力を生み出すのです。

 その中でも、「混合気を圧縮する」という工程が、強い力を生み出す上で特に重要になります。バネを強く抑え付けてから手を離すと、勢いよく跳んでいくのと少し似ています。適切な圧力を加えることで、燃焼させたときのパワーも増すのです。

 ただし、気体は圧縮すると熱を生む特性があります。また、ガソリンなどの炭化水素は一定の熱が与えられると発火する性質を持っています。そのため、ガソリンが燃えやすいと、混合気を圧縮した際に望ましくないタイミングで自然発火(異常燃焼)が起きる恐れがあります。この際に生じる異音を「ノッキング」といいますが、エンジンにダメージが生じているサインなので注意が必要です。

 オクタン価の数値が大きいほど、こうした自然発火やノッキングが起きづらくなり、混合気をより強く圧縮できます(=より高い圧縮比を採用できます)。先述の通り、ガソリンエンジンは圧縮比が高いほど出力も大きくなるので、高性能なエンジンにはハイオクが使われるのです。

 とはいえ、現代のクルマは「ノックセンサー」を搭載しており、ノッキングの発生を検知・抑制する仕組みになっているので過度な心配は無用です。

● レギュラー仕様車に ハイオクを入れると…

 また、昨今のクルマはレギュラー・ハイオクを問わず、少ないガソリンで高い出力を得られるよう、圧縮と点火のタイミングを制御するプログラムを搭載している場合があります。エンジンによっては「レギュラーガソリンを使ったときのベストな制御」「ハイオクガソリンを使ったときのベストな制御」といったように、複数の制御プログラムに対応しているものもあります。

 ですので、レギュラーガソリン仕様のエンジンにハイオクガソリンを入れたからと言って、エンジンが不調となることはありません。基本的にはレギュラーガソリンを入れたときと同じように作動します。場合によっては、点火のタイミングを変更できるため、エンジンの出力や運転時のフィーリングがアップすることもあります。

 さらに、ハイオクガソリンには「エンジン洗浄剤」が添加されているものがあり、使うとエンジン内部や燃料系の周辺部品がキレイになる場合もあります。

 とはいえ、ハイオク仕様のエンジンと比べると、出力アップの効果はどうしても小さくなります。費用対効果の面では、「ハイオクを入れたことによるコスト高」というデメリットの方が大きいと考えたほうがいいでしょう。

● ハイオク仕様車に レギュラーを入れると…

 では逆に、ハイオク仕様のエンジンにレギュラーガソリンを入れたらどうなるのでしょうか。

 ここまで読んで下さった方ならお分かりかと思いますが、燃えやすい(=強く圧縮できない)ガソリンを使うため、この場合はデメリットが目立ちます。具体的には、エンジンの出力が低下したり、運転時のフィーリングが悪化したりする恐れがあります。

 もちろん燃費も落ちます。ガソリン代を節約しようと、ハイオク仕様車にレギュラーガソリンを入れたとしても、同じコストで走れる距離は同程度もしくは短くなります。

 だからといって、エンジンが故障するわけではありません。今のクルマは各種センサーによって、レギュラーガソリンでも問題なく作動するようになっています。例えば自然災害によって物流網が遮断され、ハイオクガソリンを入手できない際などに、やむを得ずレギュラーガソリンを使用するのは問題ありません。

● レギュラーとハイオクの 「ブレンド」は厳禁!?

 なお、日本と欧州ではガソリンの規格が異なり、欧州ではレギュラーガソリンのオクタン価は95以上、ハイオクガソリンのオクタン価は98以上となっています。

 このため、現地で「レギュラー仕様」とされている欧州車を購入しても、日本のレギュラーガソリンではオクタン価が足りず、燃費が悪くなることがあります。いわゆる外車のほとんどが、日本ではハイオク仕様車として売り出されている背景にはこんな事情があるのです。

 もしかすると、ここでもガソリン代を節約しようと、外車にレギュラーガソリンとハイオクガソリンを交互に注ぎ込み、オクタン価を「ギリギリ95」あたりに調整しようとする物好きな人がいるかもしれません。二種類のガソリンをブレンドするわけです。

 しかし、これがそう簡単ではないらしいのです。オクタン価90のレギュラーガソリンと、100のハイオクガソリンを均等に混ぜ合わせたとしても、オクタン価は95にはなりません。先述した洗浄剤が添加されていることなどが関係しているのでしょう。

 ガソリンをブレンドしても、制御がいい方向にシフトするとは限りません。悪い方向にシフトしたからといって不具合が起きることはないのですが、無駄が発生するだけの場合もあります。基本的にはやはり、指定された燃料だけを使うのが無難だと言えるでしょう。

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最終更新:4/17(水) 11:02

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