最近ちょっと影が薄い? それでも今あえて「iDeCo」に注目したい訳《楽待新聞》

5/24 19:00 配信

不動産投資の楽待

今年1月に始まった新NISAが盛り上がっています。

メディアは毎日のように新NISAの情報を発信、書店には特設コーナーが設けられています。証券会社、銀行などが開催するセミナーや相談会も多くの参加者を集め、「オルカン」や「S&P500」などは今年の流行語に選ばれそうなくらい耳にします。

一方、このところの新NISA人気に押されて影が薄いと感じるのが、新NISAと並んで資産形成の重要な制度とされる「iDeCo(イデコ)」です。

今回はこのiDeCoにスポットをあて、そのしくみとメリット・注意点などについて解説をします。

■iDeCo創設の背景を振り返る

iDeCoは、確定拠出年金法にもとづいて実施されている私的年金のひとつです。加入は任意ですが、「自分年金」として、公的年金とは別に給付金を受け取れます。老後の生活をより豊かにするための資産形成の制度として位置づけられています。

iDeCoという愛称がついたのは2016年ですが、iDeCoの前身は「日本版401k(確定拠出年金)」といい、2001年10月に始まりました。401kは企業や個人の加入者が、毎月一定額の掛け金を拠出し、運用実績により受取額が変わる年金のことです。

確定拠出年金には、企業が年金制度として採用している「企業型確定拠出年金」と、個人が老後のための資産形成として行う「個人型確定拠出年金」があります。企業型は、企業に属していないと加入できないのに対し、個人型は、言葉どおり個人で加入することができる年金です。

確定拠出年金が導入された背景には、次のような理由があります。

1.公的年金環境の変化
少子高齢化が急速に進むなか、公的年金制度を維持するために給付水準の引き下げや支給開始年齢の引き上げが迫られ、老後の家計を維持するために自助努力の必要性が高まってきました。そこで政府は、個人による自分年金づくりを支援するために401k制度を創設したのです。

2.確定給付型年金の運用成績の悪化
401kが開始されるまでは、日本の私的年金の主流は「確定給付年金」でした。

これはあらかじめ約束した給付金を支払う企業年金のことですが、運用利回りの低下により企業年金の財政が悪化し、約束していた給付金が支払えなくなる事案が増えました。また、積立額の不足を埋めるために企業に負担が強いられるようになりました。2001年に企業年金制度が厳格化されたこともあり、多くの企業年金が確定給付型年金から401kへと移行しました。

3.退職金制度の縮小
ひとつの企業で定年まで勤めあげるという終身雇用制度も、働き方の変化により大きく変わりました。このような状況のなかで給与体系も変わり、退職金制度を廃止したり減額したりする企業も増えてきました。そのため、老後資金の大きな柱だった退職金に代わる資金形成が必要になったのです。

2001年に始まった401kは、国民年金の第1号被保険者(自営業者など)と企業年金のない企業の従業員しか加入できませんでした。その後、2016年にiDeCoという愛称が付けられ、2017年1月からは企業年金のある企業の従業員、公務員、専業主婦まで加入資格が広げられました。

新NISAに比べて地味な印象のあるiDeCoですが、加入者数は着実に増加しています。厚生労働省によると、加入対象者が拡大される前の2016年に30.6万人だったiDeCoの加入者数は、2024年2月末時点では10倍以上の324.7万人に達しています。

■iDeCoのしくみ、キホンをおさらい

・加入資格と掛け金
現在、iDeCoには原則20歳から65歳の人が加入できます。毎月の掛け金は、5000円以上1000円単位で、加入資格により決められている限度額以内の金額を加入者自身で決めることができます。

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・運用
掛け金は、自分で選んだ運用商品に拠出し、運用します。掛け金と運用益の合計額を、将来給付金として受取ります。

・受取り
給付金を受け取ることができるのは、原則60歳以降です。ただしiDecoの加入期間によって、支給開始年齢が変わります。

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給付金の受取り方法には、一時金、年金、併用の3つのパターンがあり加入者が選択できます。年金として受け取る場合は、5年以上20年以下の期間で、運営管理機関が定める期間の中から選択します。

一時金、年金とも受け取りの開始時期は、支給開始年齢から75歳までの間で選ぶことができます。

・加入方法
iDeCoに加入するためには、iDeCoを取り扱っている運営管理機関(銀行、証券会社などの金融機関)を選んで手続きをします。

運営管理機関から加入申出書を取り寄せ、必要事項を記入した上で提出しますが、加入資格によっては勤務先の加入申出書への記入も必要になります。なお、運営管理機関ごとに取扱商品や手数料などが異なるので、各金融機関を比較したうえで選択しましょう。

■iDeCoの運用商品には何がある?

iDeCoでは、加入者が運用商品を選択します。運用商品を選ぶ際の基本的な考え方は新NISAと共通しているので、詳しい人も多いと思います。

運用商品には「元本確保型」と「投資信託」があります。

元本確保型は、定期預金や保険商品として運用するもので、元本割れのリスクはありません。ただし利回りは低いため、運用利益よりも手数料が上回る可能性もあります。

投資信託は元本割れなどのリスクを背負う分、インフレ率を大きく上回る利回りも期待できます。投資信託には、投資対象によって国内債券型、外国債券型、国内株式型、外国株式型があります。一般的に債券型よりも株式型がハイリスクハイリターン、国内よりも外国がハイリスクハイリターンです。ひとつの投資商品のなかでさまざまな投資対象を組み合わせるバランス型の投資信託もあります。

ほかにも投資信託には、不動産を投資対象とする不動産投資(REIT)、年齢によるリスク許容度の変化に応じて徐々にリスク資産の比率を下げていくターゲット・イヤー・ファンドなどがあります。

また、運用スタイルの違いでは、日経平均株価やTOPIXに連動するパッシブ型、インデックスを上回るリターンを狙うアクティブ型に分けられます。

さらに運用商品により信託報酬も異なるため、それぞれの内容をよく理解したうえで、納得ができる運用商品を選択することが重要です。

■iDeCoのメリットを整理する

iDeCoの最大のメリットは、さまざまな「税制の優遇」を受けられることだと思います。掛け金、運用益、給付金それぞれに対する税金についてのメリットは次の通りです。

・掛け金は全額所得控除
iDeCoでは、掛け金全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除を受けられるので、その年分の所得税・復興特別所得税と住民税(翌年に支払い)が軽減されます。

特に所得税は所得が大きいほど税率が高くなる分、軽減額も多くなるので、節税効果が高くなります。

たとえば、課税所得が195万円以下の人の所得税率は5%です。復興特別所得税と住民税(均等割を除き10%として計算)の税率を合わせると15.105%になるので、掛け金の約15%の税金が軽減されます。

これが課税所得900万~1000万円の範囲になると所得税率は33%、住民税等を合わせた税率はなんと43.693%にもなります。つまり所得控除前も所得控除後もこの範囲の所得の人は、掛け金の約43%もの税金が軽減されるのです。金融商品の利回りとして考えても超高利回りと言えるでしょう。

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ただし、当然ですが、所得控除が受けられるのは、所得税を納めるべき所得がある人です。もともと課税所得がない人は、所得控除は受けられません。

・運用益が非課税
iDeCoでは、運用期間中の運用益に税金がかかりません。通常、投資信託では分配金、売却益に対し20.315%の所得税・住民税等がかかるため、運用期間が長期に渡るほど複利効果によりメリットが大きくなります。

・給付時には退職所得控除、公的年金等控除の対象
iDeCoの給付金を年金として受給する場合には、厚生年金や国民年金と同じく公的年金等控除が受けられます。ただし、控除額には上限があり、他の公的年金と合わせて控除額を超えた金額は雑所得として課税されます。

また、一時金として受給した場合は、退職所得控除の対象となります。
退職所得控除についても、会社から受け取る退職金と同時期にiDeCoの一時給付金を受け取る場合などで、その合計額が退職所得控除を超えるとその分に課税されるため、受取り時期や方法に注意する必要があります。

■iDeCoのデメリット・注意点と対策

1.60歳まで引き出せない
iDeCoに一度加入すると運用資産は60歳まで引き出せません。そのため、緊急に資金が必要になったときでもiDeCoから資金を充てることはできません。

とは言え、もともとiDeCoの目的は、老後資金のための資産形成です。また、資産運用の基本的な考え方は、「長期」「分散」「積立」と言われています。60歳まで引き出せないということは、まさにこの考え方を実践しながら確実に老後資金をためていくという意味でもあります。

緊急時の資金と老後資金をうまく分けることにより、効率的で無理のない資産形成を図ることが可能です。

また、iDeCoの掛け金は1年に1回変更ができ、また引き落としはいつでも止めることができます。収入の減少や生活費の増加など、状況の変化に合わせて変更、休止ができることも知っておくと良いでしょう。

2.運用成績により資産が増減する
iDeCoで運用する商品は、投資信託などの金融商品です。これらの商品は高い利回りが期待できる反面、元本割れのリスクもあります。元本確保型の商品を選ぶこともできますが、運用利回り自体が著しく低くなります。
事前にセミナーやiDeCoに関する書籍で勉強したり、金融機関やファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談したりすることをお勧めします。

3.手数料がかかる
iDeCoの運用には、さまざまな手数料がかかります。主な手数料のうち、加入手数料・移管時手数料は初回のみの支払いですが、加入者手数料は掛け金を納付する都度支払います。

その他、運営管理機関のサービスに対する手数料もあります。運営管理機関により金額が異なるため、各金融機関に確認をするようにしましょう。
さらに運用商品にも信託報酬などがかかります。

これらの手数料が差し引かれることも念頭に、運用商品の選択をする必要があります。

■iDeCoと新NISA、どちらを選べばよい?

iDeCoと新NISA、どちらも資産形成のための魅力ある運用方法ですが、実際に投資をする際には、それぞれの特徴を理解した上で選択する必要があります。基本的な考え方としては、次の順序で運用することを検討してみるのがよいと思います。

・60歳まで使わなくてもよい資金の範囲でiDeCoを選択し、所得税などの恩恵を受けながら運用する。

・教育資金、住宅資金など、老後以前の時期に資金使途が決まっているものについては、換金しやすい新NISAで運用する。

上記を併用したうえで、さらに投資資金に余裕がある場合には、他の資産運用を行う。

iDeCoと新NISAの特徴は次表の通りです。参考にしてください。

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iDeCoは、老後の資産形成に最も適した運用方法と言えます。新NISAよりも税制上のメリットは大きく、資産運用としてまず検討したいのがiDeCoです。

ただし、iDeCoの目的は老後のための資産形成で、加入資格によっては多額の掛け金を拠出できません。新NISAなど他の運用方法と併用しながら上手に活用することを検討してください。

2024年12月には、一部の拠出限度引上げなどiDeCoの改正もあります。また、本記事では触れませんでしたが、中小事業主が掛け金を増額できるiDeCo+(イデコ・プラス)という制度もあります。

常にアンテナを張り、新しい情報も吸収し、金融機関や専門家にも相談しながら、自分に最も適した選択を行いましょう。

橋本秋人/楽待新聞編集部

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最終更新:5/24(金) 19:00

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