今どきシニア「みんなの貯蓄・年金・生活費」はいくらか。ふつうの人の平均が知りたい

10/8 5:06 配信

LIMO

2025年9月5日に総務省統計局が「家計調査(2025年7月分)」を公表しました。ここには、二人以上の世帯の消費支出は、1世帯あたり月額30万5694円、前年同月比では実質1.4%の増加、名目では5.1%の増加となることが、示されています。

食料品をはじめとする物価の上昇が続く中、年金収入に依存する高齢者世帯では、生活費のやりくりがますます重要な課題となっています。

本記事では、70歳代の平均貯蓄額や、老後に必要とされる生活費の実態について、最新の統計データをもとに詳しく説明します。

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働くシニアの増加、年金制度改正法の成立「今後、誰にどんな影響がある?」

2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。

これは働き方や家族構成の多様化に対応した制度整備や、私的年金制度の充実を図ることで、老後の生活の安定や所得保障機能の強化を目指すものです。

では、今回の改正における主な見直し点を確認していきましょう。

●年金制度改正の全体像をチェック! 「年金制度改正法」の主な見直しポイント
 社会保険の加入対象の拡大

 ・短時間労働者の加入要件(賃金要件・企業規模要件)の見直し(年収「106万円の壁」撤廃へ)
 在職老齢年金の見直し

 ・支給停止調整額「月62万円」へ大幅緩和(2025年度は月51万円)
 遺族年金の見直し

 ・遺族厚生年金の男女差を解消
 ・子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

 ・標準報酬月額の上限を、月65万円→75万円へ段階的に引き上げ
 私的年金制度

 ・iDeCo加入年齢の上限引き上げ(3年以内に実施)
 ・企業型DCの拠出限度額の拡充(3年以内に実施)
 ・企業年金の運用の見える化(5年以内に実施)
今回の改正からも分かるように、公的年金制度は一人ひとりの働き方やライフプランと密接に関係しています。

総務省「2024年(令和6年)労働力調査」によれば、65歳以上の就業者数は930万人に達し、前年より16万人増加しており、シニア世代の就労は着実に拡大しています。

一方で、厚生労働省の統計では、平均寿命(男性約81歳・女性約87歳※1)と健康寿命(男性約73歳・女性約75歳※2)の間には、男性で約8年、女性で約12年の差があることが示されています。

この差が意味するのは、多くの高齢者が医療や介護の支援を必要とする期間を過ごす可能性が高いということです。

だからこそ、現役世代のうちから貯蓄や資産形成に取り組むことが、70歳以降の安心につながると言えるでしょう。

※1 平均寿命:2022年 男性81.05歳、女性87.09歳・2023年 男性81.09歳・87.14歳(「令和5年簡易生命表の概況」)
※2 健康寿命:2022年 男性72.57歳、女性75.45歳(「健康寿命の令和4年値について」)

今どきシニア、70歳代の貯蓄事情「平均・中央値」はいくら?

70歳代世帯の貯蓄状況について確認してみましょう。

参考とするのは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」のうち、「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」に関するデータです。

※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

これによると、「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は1923万円となっていますが、高額資産を持つ一部世帯が数値を押し上げているため、実際の状況とは乖離している可能性があります。

実態をより反映する中央値は800万円であり、多くの世帯がこの水準に集中していることがわかります。

世帯ごとの貯蓄額分布は以下のとおりです。

また、世帯ごとの貯蓄額の分布において、最も多いのは全体の約2割強(20.8%)を占める「金融資産ゼロ」の世帯です。一方で3000万円以上の資産を持つ世帯も約19.0%存在しており、分布の幅が非常に大きいことがわかります。

このように、70歳代世帯の貯蓄額は、退職金の有無や収入実績、相続の有無、さらには健康状態といった要因によって大きな差が生じます。また、公的年金についても現役時代の加入状況で受給額に差が出るため、年金だけで生活を維持するのは、貯蓄の少ない世帯にとって厳しい場合があります。

安定した老後の暮らしのためには、それぞれの世帯の状況に応じて生活設計を見直すことが不可欠です。たとえば、健康なうちはパート勤務で収入を得たり、不動産収入や投資による不労所得を検討したりと、早めに準備しておくことが重要です。

今どきシニア、「厚生年金」平均年金月額はいくら?

厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、厚生年金・国民年金の平均年金月額を確認しましょう。

なお、厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されていますが、本章では民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下、記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介していきます。

※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。

●厚生年金の「平均年金月額」はいくら? 
 ・〈全体〉平均年金月額:14万6429円
 ・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
 ・〈女性〉平均年金月額:10万7200円
●厚生年金の「月額階級別受給権者」をチェック
厚生年金の「月額階級別受給権者」では、10万円以上19万円未満の階級に受給権者が最も集中していることがわかります。一方で、男性の平均(16.7万円)と女性の平均(10.7万円)には大きな差があり、女性は特に10万円前後の階級に受給者が多く偏っている実態が浮き彫りになります。

今どきシニア、「国民年金」平均年金月額はいくら?

続いて、厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る、国民年金(老齢基礎年金)の月額についても見ていきましょう。

●国民年金の「平均年金月額」はいくら? 
 ・〈全体〉平均年金月額:5万7584円
 ・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
 ・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
●国民年金の「月額階級別受給権者」をチェック
国民年金(老齢基礎年金)の受給権者は、6万円以上7万円未満の階級に約1600万人と圧倒的に集中しており、これは満額に近い年金額を受け取っている人が大半であることを示しています。一方で、平均年金月額が5万7584円であるにもかかわらず、4万円未満の階級にも約345万人の受給者がいることから、保険料の未納・免除期間の影響により、満額に届かない人が一定数存在することもわかります。

「厚生年金の男性平均月額を受け取る夫」と「国民年金の女性平均月額を受け取る妻」の組み合わせでは、夫婦あわせての年金受給額は月22万2383円となります。

今どきシニア、生活費は平均でいくらぐらい?

前章で紹介した「およそ22万円」という年金収入で、シニア世代の夫婦が日常の生活費をどこまでまかなえるのか、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

そこで本章では、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の標準的な家計収支を見ていきます。

●【65歳以上・夫婦世帯の年金生活】平均的な収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円

●【65歳以上・夫婦世帯の年金生活】平均的な支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円

■うち非消費支出:3万356円

●【65歳以上・夫婦世帯の年金生活】平均的な家計収支
 ・ひと月の赤字:3万4058円
 ・エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
 ・平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
この世帯の毎月の収入は25万2818円で、そのほとんどを公的年金などの社会保障給付が占めています。

一方で支出は合計28万6877円にのぼり、内訳は消費支出(食費・住居費・光熱費など)が25万6521円、非消費支出(税金や社会保険料)が3万356円となっています。

注目すべきはエンゲル係数で、29.8%とやや高めです。エンゲル係数は家計の消費支出に占める食費の割合を示し、一般的に数値が高いほど生活水準が低めとされます。

65歳以上の夫婦では、生活費の中で食費が比較的大きな割合を占めていることがわかります。さらに平均消費性向は115.3%と100%を超えており、収入を上回る支出、つまり赤字の状態にあります。

具体的には毎月3万4058円の不足が発生しており、この分は貯蓄を取り崩して補わざるを得ません。シニア世代は安定収入を得にくいため、こうした赤字が続けば貯蓄の減少スピードは加速します。

現状の資産残高を踏まえ、支出を見直したり、可能な範囲で短時間勤務による収入を確保したりといった対策を講じることが重要と言えるでしょう。

みんなの食費、毎月どれくらいかかる?

家計の中でも、日常的に工夫しやすく節約の効果が出やすい支出項目のひとつが「食費」です。

ここで、総務省統計局の「家計調査 家計収支編(2024年)」を参考に、二人以上世帯の1か月あたりの平均的な食費を確認してみましょう。

全体平均 7万5258円

このデータからは、二人以上世帯の食費が50歳代で最も高く平均約8万円となることが分かります。その後は年齢を重ねるにつれて減少し、85歳以上では6万3347円に落ち着きます。

食費は世帯の年齢構成やライフステージによって大きく変わる一方、所得が低い世帯では「家計に占める食費の割合(エンゲル係数)」が高くなる傾向があります。

物価上昇が続く中では、食料品の価格変動を意識しながら、食生活と家計全体のバランスを工夫して管理していくことが大切です。

まとめにかえて

ここまで、70歳代の貯蓄額やシニア世代の生活費について詳しく見てきました。今後も物価上昇が続くことを考えると、現役世代の方が70歳代を迎える頃には、生活費がさらに高くなっている可能性もあるでしょう。

余裕ある老後を送るためにも、今のうちからの資産形成を考えることが重要です。最近では、新NISAやiDeCoなど、国が用意する税制優遇制度も充実しています。将来を見据え、制度の仕組みを知り、自分に合った方法を検討してみてはいかがでしょうか。

参考資料

 ・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
 ・厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
 ・厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
 ・J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
 ・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
 ・総務省「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
 ・総務省統計局「家計調査 家計収支編(2024年)第3-2表」
 ・総務省統計局「家計調査報告(-2025年(令和7年)7月分-)」

村岸 理美

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最終更新:10/8(水) 5:06

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