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「中国EV」が窮地に立たされた「本当の理由」…アメリカで加速する「中国ぎらい」と、エスカレートする「アジア排斥運動」恐怖の実態

3/28 6:32 配信

マネー現代

アメリカで広がる「反中×反EV」のヤバすぎる実態

(文 藤 和彦) 中国製EVが国内どころか、世界でつまはじきにあっている。

 前編「EVが米中「共倒れ」…! トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで、習近平の「経済粛清」とアメリカの「嫌中感情」が過熱…! 「EV新時代」の悲惨な末路」では、中国製EVの悲惨な現状についてお伝えした。

 中国の消費不況で国内では売り上げが減少し、海外では高性能でありながら、かえって安全保障上の「中国脅威論」の標的とされているのだ。

 一方で、中国製EVが嫌われる背景には、単に安全保障上からの懸念だけでなく新型コロナのパンデミックが起きた2020年頃から続く嫌中感情の高まりがある。

中国人不動産王にむけられた「反中感情」

 今年1月、オンラインゲームで富を築いた中国人が、アメリカの土地所有者のなかで82番目にランキングされた(外国人では2位)。

 かねてアメリカでは中国人の土地所有への警戒感が高まっていたが、この中国人富裕層の不動産取引は火に油を注いだ。すでに半分近くの州で中国人による土地取得に制限措置が講じられるようになっているにもかかわらず、82位にランクされるほどの土地を買い集められたことが、よほどショックだったようだ。

 下院の超党派議員団は3月14日、中国など安全保障上の懸念をもたらす買い手による土地取得に関し、政府の調査を厳格化する法案を提出した。

 このように、アメリカの憎悪は中国製EVだけにむけられているのではなく、中国人そのものへと向かっているのだ。

アメリカ人の4割が「中国にNO!」

 米調査企業ギャラップが3月18日に発表した世論調査によれば、「米国にとって最大の敵国はどこか」との設問に対し、41%のアメリカ人が「中国」と答え、4年連続で首位となった(2番目に多い回答は「ロシア」の26%)。

 党派別に見ると、共和党員(67%)と無党派層(47%)の間で中国が首位となっている。

 ワシントン界隈でも中国に対する警戒感は強まるばかりだ。

 バイデン政権は19日、各州に対し水道システムへのサイバー攻撃に警戒するよう注意を促した。「中国政府などとつながりのあるハッカーからの脅威が続いている」というのがその理由だ。

水道が中国に襲われる…?冷静さを失うアメリカ

 国民に清潔で安全な飲料を提供する水道システムに支障が生ずれば、米国民は多大な被害を被ることになる。だが、水道システムは資金や人員の不足が常態化しており、米国のインフラの中でも最も脆弱だと指摘されている。

 「アキレス腱」とも言える水道システムを標的に定めた中国のハッカー集団は、米国の国家安全保障にとって深刻な脅威だと言っても過言ではない。

 中国への過度な警戒感は、ホワイトハウスだけではない。米政府以上に中国への警戒感を露わにしているのが連邦議会であり、そのことを如実に示したのが下院の超党派議員団だ。

 先述したとおり、彼らは土地取得に関する政府調査の厳格化を求める法案を連邦議会に提出したが、それだけではない。

 20日には、国家安全保障上の明確な脅威となる技術が米国市場に大量に拡散することを阻止するため、中国製ドローン(無人機)に対する関税の引き上げなどをバイデン政権に要求した。

 中国製ドローンにはすでに25%の追加関税が課されているが、議員団は「それでは不十分だ」とし、さらにマレーシアなど第3国からの迂回輸出についても取り締まるよう求めている。

中国移民の「犯罪活動」が槍玉に…

 アメリカにおける中国人の違法活動も槍玉に挙がっている。

 カリフォルニア州ロサンゼルス郡保安局は1日、中国人が運営・管理する3ヵ所の大麻栽培施設を強制捜査した。この施設で栽培される大麻の質が高いことから、ニューヨークなどの大都市で「高級品」として違法に取引されており、この施設から毎月何百万ドルのカネが海外に持ち出されているという。

 犯罪の温床となっているケースはここだけではない。当局によれば、中国人が入国して土地を買い、そこで違法な大麻を栽培する事案が各地で多発している(3月1日付FOXニュース)。

 犯罪集団のせいで、米国における中国人の土地取得が今後ますます困難になるのは間違いないだろう。

思い出されるアメリカの「アジア排斥」

 気がかりなのは、「土地取得の制限が移民の排斥につながった」という悲しい歴史の前例があることだ。20世紀前半の米国では「黄禍論(黄色人種警戒論)」が猖獗を極めていた。

 1913年にカリフォリニア州で外国人土地法が成立したが、目的が日系人の締め出しだったことから、「排日土地法」と呼ばれていた。その後、1924年にいわゆる「排日移民法」が連邦議会で成立し、日米関係が極度に悪化した経緯がある。

 中国系米国人は2021年時点で550万人に達し、米国で最も増加している人口集団の1つだが、パンデミック以降、彼らに対する「憎悪犯罪」が急増している。

米国の結束は「反中運動」という悪夢

 「忌まわしい過去が繰り返される」と断言するつもりはないが、他国との対決が米国を国家として結束させてきたのは歴史的事実だ。

 分断が進む米国で「打倒中国」が国内の結束を生み出す「唯一のよすが」となりつつあるが、この構図は両大国を直接激突に向かわせる極めて危険なものではないだろうか。

 さらに連載記事「「EV」がアメリカだけでなく中国でも絶不調に…トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで「中国EV大ピンチ」の深刻すぎる実態」では、EVを取り巻くアメリカと中国の関係をさらに詳しく報じているので参考としてほしい。

マネー現代

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最終更新:3/28(木) 6:32

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