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いま日本で急増する「マンション保険料」高騰のウラ事情…「入っても地獄」「入らなくても地獄」の実態を明かす

4/20 8:02 配信

マネー現代

(文 松本 洋) 国交省は、国内の中古マンションは2022年時点で約694.3万戸にのぼり、そのうち約125.7万戸が40年以上が経過した古いマンションと公表しています。

 しかも築40年以上のマンションは、今後も増加が見込まれており、10年後には約2.1倍の260.8万戸が、さらに20年後には約3.5倍の445.0万戸に膨れ上がることが予想され、大きな社会問題になっています。

 じつは築40年以上の約4割が、また築30年以上の約2割で適時適切な大規模修繕が実施できていない可能性があることを国交省が指摘しており、ハード面においての外壁等の剥落、 鉄筋の露出・腐食、給排水管の老朽化といった生命・身体・財産に影響する問題を抱えています。

 近年、地球温暖化の影響で起こる、ゲリラ豪雨や線状降水帯による雨水の侵入や水漏れの二次被害に加えて、老朽化した給排水管による漏水事故が多発しており、マンション管理組合保険を扱う大手保険代理店、ファイナンシャルアライアンス株式会社の清野孝道氏によれば、「高経年マンションの保険請求は、漏水関係が約5割以上を占めている」と指摘します。

 膨れ上がる築年数の古いマンションと保険料への有効な対策はあるのでしょうか? <【前編記事】母の死後「都内のマンション」を相続した女性が絶句した…「老朽化マンション」のヤバすぎる惨状>に引き続き、お伝えします。

保険料が“爆上がり”するマンション

 このような事故が多いため、マンション管理組合の保険料が大幅に値上りしています。マンションによっては、保険料が1.5倍になったとか、1.8倍になったなど悲鳴を上げている管理組合もあります。

 大規模修繕工事を適切に実施してない、『だらしのないマンション』につられて、『真面目に管理しているマンション』まで大きな影響を受けているようです。

 「事故件数の多いマンションは、保険料が大幅に上がる傾向にあります。このままマンション保険料の値上げが進めば、適正な保険が締結できない“管理不全マンション”が増える恐れがあります。

 被害宅の復旧工事等の損害賠償は、本来加害者宅の保険で対応すべきものを、加害者宅の保険加入を確認せず、管理組合の個人賠償責任特約が積極的に使われていることに問題があります。

 外壁がボロボロで、いつタイルが剥落するか分からないようなマンションが、お住まいの地域にある光景を想像してみてください。「危険な街」のイメージが定着し、最悪の場合、その地域からに人がいなくなって、治安も悪化してしまいますよね。

 このようなマンションを増やさないためにも、マンション管理組合では、漏水など、共用部分の損害事故に対して適正に対応していく必要があります。

 現在のマンション管理組合保険の保険料は、事故件数の多い・少ないで保険料が決まるように料率が設定されていて、専有部分の事故に積極的に管理組合の個人賠償責任特約を使用していると、更新時にマンション保険料は大幅に値上がりする仕組みです。

 マンション管理組合保険料の原資は、区分所有者が支出する管理費から算出されていますので、保険料の大幅な値上がりを避けるためには、居住者が自分で負担している個人賠償責任特約の加入率を上げていくことが必要不可欠です。

 マンションの共用部分において賠償事故が起きた場合は、加害者加入保険を優先的に使用することにより、管理組合の保険事故件数は抑制され、結果的に管理組合の保険料が安く抑えられるからです。

 マンション保険料の高騰は、管理組合だけの問題ではなく、専有部分を含めたマンション全体の問題として対応することで、“管理不全マンション”を未然に防ぐことに繋がると思います」(清野氏)

原状回復工事ができない場合も

 現在のマンション管理組合保険に付保されている個人賠償責任特約(包括契約用)はは、

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●マンションの居住者本人や家族等が日常生活または居住者戸室の管理不備等で他人にケガをさせたり他人の物を壊してしまったとき
●線路へ立ち入り等により電車を運行不能にさせてしまったとき
●他人に借りた物を国内外で壊したり盗まれたとき
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 などさまざまなケースで保険金が支払われます。

 そのため、マンションの外でペットが居住者に噛みつくなどの危害を与えた場合でも、マンション管理組合保険の個人賠償責任特約から保険金が支払われます。

 先日も、ある居住者から子どもが遊んでいて友達にケガを負わせてしまって、その賠償金の支払いをマンション管理組合保険の個人賠償責任特約から支払ってほしいと要望がありました。

 理事会では審議の結果、マンション管理上の事故ではないので管理組合の加入している保険では対応しない旨を伝えましたが、「総会での保険加入の議案説明では居住者の家族が他人にケガを負わせた場合でも保険金は支払いすると管理会社が説明していたので、支払って当然ではないのか」とトラブルになったケースもあります。

 清野氏はこれに、「マンション管理組合保険の個人賠償責任特約の被保険者(補償を受ける人)は、居住者となっており、マンション内・マンション外の事故を包括的に補償しているケースが多いため、管理組合としてはマンション外の保険請求だとしても、断れない可能性もある」と指摘しています。

 現行の補償範囲では、このようなマンション外の事故を請求されるリスクがあるため、ある保険会社では、個人賠償責任特約の補償範囲をマンション敷地内に限定する選択肢を設けているようです。

 また、保険金の請求回数によって更新時の保険料も変わるため、まずは、各居住者が加入している、自宅(専有部分)の火災保険や自動車保険、県民共済、クレジットカードの個人賠償責任保険を利用してもらい、管理組合が加入している保険はなるべく使わないように居住者に協力を呼び掛けているマンションもこのところ多くなっています。

 近年ではマンション管理組合保険の個人賠償責任特約には最初から加入しない管理組合も増えています。

 しかし、これに加入しない場合は、漏水などの原因の住戸が、どこの個人賠償責任保険に入っていない場合では、被害を受けた住戸が長い間、原状回復工事ができないなどの問題もはらんでいます。

 管理組合が個人賠償責任特約には最初から加入しない場合は、居住者向けにあらかじめ個人賠償責任特約について『メリットとデメリット』について説明会を開催するなどして理解と協力をお願いして、居住者全員に各自で個人賠償保険に入るようにするルール作りなどが必要不可欠な時代だと考えます。

マネー現代

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最終更新:4/20(土) 8:02

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