イラン攻撃で原油価格急騰! でも、そもそも年始の原油価格は歴史的に低く、魅力的な水準だった。では、原油関連で投資するなら何を買うのがよいのか?

3/4 21:00 配信

ダイヤモンド・ザイ

●2025年後半から2026年年始の原油価格は歴史的に見てかなり低い水準にあった
 昨年(2025年)後半、原油価格は歴史的に見て、かなり低い水準にありました。そして、今年(2026年)に入っても依然として「安い」と言えるレンジに止まっていました。

 原油は永遠に低価格のままという資産ではありません。むしろ、循環的な動きをする典型的なコモディティです。供給が増えれば価格が下がり、投資が減ればやがて供給不足が起き、価格は再び上がります。

 そのようなサイクルの中、昨年末(2025年末)の原油価格は明らかに低迷局面にありました。

●中東情勢が永遠に安定するとは誰も思っていないが、いつ紛争が起こるかはわからない。そのような「既知の未知」へ対応するやり方は? 
 そして、今回のアメリカおよびイスラエルによるイラン攻撃のような出来事が起きました。これは驚きではありません。

 元米国防長官のドナルド・ラムズフェルドが語った「Known knowns / Known unknowns / Unknown unknowns」(既知の既知 / 既知の未知 / 未知の未知)という有名なフレームワークで言えば、地政学リスクは典型的な“Known unknown”(既知の未知)です。

 何かがいつか起こることはわかっている。しかし、それがいつ起こるかはわからない。中東情勢が永遠に安定するとは誰も思っていない。それでも市場は、平穏が続くと、それを価格に織り込み、リスクプレミアムを縮小させます。だからこそ、価格が低いときほど上方向へ向かいやすいという非対称性が生まれるのです。

 全般的な株価下落などに備えるヘッジ先として、年初にエネルギーセクターが魅力的と私が考えたのはこのような構造があるからです。

 [参考記事]
●トランプ大統領が11月の中間選挙に向けてポピュリズムに走っても、一喜一憂せず長期投資を。テクノロジーとエネルギーを両端の重りにするバーベル戦略を進めよう! 
●AIのエネルギー需要で原子力のセンチメントが非常にいい!  ファンダメンタルズが変わらないなら、衝動的に大きく買わず下がるのを待つことが大事

 価格が歴史的に低く、投資が抑制され、地政学リスクが常在している状況では、何らかのきっかけで価格が跳ねる確率は決して小さくありません。重要なのは予想ではなく、確率分布の歪みを利用することです。

●原油価格の変動を短期的に狙う商品としてよく知られているUSOだが、中長期で保有するのは構造的な問題が…
 では、原油関連で投資するなら、どのようなものを買うのがよいのでしょうか? 

 原油価格の変動を短期的に狙う商品としてよく知られているのがユナイテッド・ステイツ・オイル・ファンド(ティッカー:USO)です。

 USOは原油そのものを保有しているわけではありません。保有しているのは原油先物です。そして、原油先物の満期が近づくたびに次の限月へ乗り換え(ロールオーバー)を行います。ここにUSOを中長期的に保有する上での構造的問題があります。

 たとえば、現物の原油価格が70ドルだとします。今月の原油先物も70ドルですが、来月の原油先物が72ドルで取引されているとします。この時、満期が近づいてくると、USOは今月の原油先物を70ドルで売るとともに、来月の原油先物を72ドルで買い直して、ロールオーバーを行います。この2ドルの差がロールコストです。

 これを毎月繰り返すと、たとえ現物の原油価格が1年間70ドルで横ばいであったとしても、USOの基準価額は徐々に低下していきます。

 もちろん、原油価格はずっと横ばいということはなく、現物の原油価格が短期間で70ドルから75ドルに上がるようなこともあるでしょう。この時、短期ならUSOもほぼ同率で上昇します。

 しかし、中長期ではそううまくいきません。先ほど例として挙げたような限月が先の原油先物ほど価格が高くなっている状態をコンタンゴと言いますが、このような状態が続いていると、USOは中長期ではロールコストがかさんでいき、現物の原油価格と価格トレンドが完全には一致しないことになってしまうのです。

 つまり、USOは短期的な原油の「価格の動き」には連動しますが、中長期的に原油の「価格水準の推移」をそのまま再現する商品ではないということです。

●原油関連の投資をするなら、エネルギー企業の株式を買う方が合理的
 原油関連の投資をするなら、私は引き続き、エネルギー企業の株式を買う方が合理的だと考えています。

 企業は原油価格が上昇すればキャッシュフローが増加し、配当や自社株買いを通じて、それを株主に還元します。当該企業のコスト構造の改善や資本配分の巧拙もリターンには影響します。

 つまり、エネルギー企業に投資すれば、単にエネルギー価格へベットするのではなく、企業価値へ投資することになるのです。そして、エネルギー価格の価格回復局面で、エネルギー企業の利益はレバレッジをかけたような形で拡大することも多く、長期投資家にとってはこちらのほうが持続的なリターンの源泉になりやすいのです。

●循環資産を安いときに買うのは地味だが、長期的に有効な戦略
 コモディティ価格は本質的に平均回帰的です。高騰すれば供給が増え、やがて価格は下がります。低迷すれば投資が止まり、将来の供給制約が生まれます。

 だからこそ、原油が歴史的に低い水準にあるときに、エネルギー企業の株式など原油関連のものへ段階的に投資していく戦略は合理的と言えるのです。

 これは大胆な予測ではありません。「いつか何かが起きる」という“Known unknown”(既知の未知)に対して、価格が低いうちに備える行動です。

 循環資産を安いときに買う。これは地味ですが、長期的に有効な戦略です。原油市場はその典型例であり、今回の出来事はその構造を改めて示したにすぎません。

 ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう! 」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法! 』発売中。

ポール・サイ

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最終更新:3/4(水) 21:00

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