高まる「7・20衆参ダブル選挙」の現実味、商品券配布で窮地の石破首相が打って出る?
商品券配布問題で、石破茂首相が就任以来、最大のピンチに直面している。トップリーダーの「政治とカネ」をめぐる疑惑の発覚が少数与党である自公政権を直撃する中、野党はさらに勢いづき、2025年度予算の年度内成立も困難視されている。
これを受けて、自民党内では旧安倍派を中心とする反石破勢力から、新年度予算成立を“花道”とする早期退陣論が台頭。一方、攻める野党側からは「簡単は辞めさせない」(立憲民主党の野田佳彦代表)との発言が出ている。
まさに「“追及継続”のまま夏の参院選になだれ込む作戦」(立憲民主党幹部)であり、国民不在の複雑怪奇な与野党の駆け引きが続く異常事態となりつつある。ただ、自民党内の“石破降ろし”の動きは今のところ「ごく一部にとどまる」(自民党執行部)とみられており、与党内には「今こそ結束して石破首相を支えるべきだ」との声も相次ぐ。
そうした中で、今回の問題発覚を踏まえた主要メディアの世論調査の結果が公表され、内閣支持率急落・不支持率急増という現状が明らかになった。「いわゆる『青木の法則』における政権の危険水域(内閣支持率と自民党支持率の合計が5割以下)への落ち込みは不可避」(世論調査アナリスト)との見方が支配的だ。
これも踏まえて、政界関係者の間では「今後の政局展開は世論調査の結果次第で変化する」との声が広がる。
■政界関係者が不思議がる石破首相の対応
改めて今回の「商品券配布」問題を振り返ると、多くの政界関係者が「発覚の経緯と石破首相の対応が極めて不可思議だ」と指摘する。
問題の首相公邸での会合は3月3日だが、朝日新聞が特ダネとして報じたのは10日後の13日夜。問題の大きさに気づいた石破首相は、急遽同日午後11時20分過ぎから首相公邸で取材に応じ、「違法性はまったくない」「初当選までのご家族のご苦労感謝するためのお土産」などと、あえて笑顔も交えて釈明に努めた。
記者団からは「政治資金規正法に抵触しないか」との質問が相次いだが、「政治活動とは関係ない」「公職選挙法にも政治資金規正法にも抵触しない」と繰り返し釈明。ただ、政治資金規正法違反の可能性を指摘する質問には「第何条のどの条文か」「そうでないと正確に答えられない」などと問い詰める場面も多かった。ニュース映像などでその様子を見た自民党幹部は「余りに大人げない。逆効果になりかねない」との危惧を隠さなかった。
さらに石破首相が「違法性はない」と繰り返したことについても、多くの自民党幹部が「国民はそんな説明には怒るだけ」と顔をしかめる。石破首相との親交を公言してきた公明党の斉藤鉄夫代表も、翌14日の記者会見で「耳を疑った。国民の理解を得られないような行為は厳に慎むべきだ。国民の感覚と大きくずれている」と厳しく批判した。
一方、野党側でも石破首相との親密さで知られる立憲民主党の野田代表が記者会見で「(石破首相は)政治改革に熱心な政治家の筆頭格で、お金の感覚もきちっとした人だろうと思っていたので、非常にがっかりした。クリーンな政治家だと思っていた石破さんですら、こういうことを日常的にやっていたとすれば『これぞ自民党なのだ』と改めて思い知った」と、厳しい口調で批判した。
■野党につきまとう不安の影
政局の大きな節目となる年度末が2週間後に迫る中、与党側は「経済への悪影響を避けるためにも、何としても予算の年度内成立が必要」(自民党・国会対策担当者)との立場から、①3月28日に参議院での予算案可決、②3月31日の衆議院回付・再議決で予算成立、との日程を描く。
対する野党側は「石破首相の『10万円商品券』問題の徹底解明のためには、衆参予算委員会での質疑だけでなく、政治倫理審査会出席などが必要」(立憲民主党・国対担当者)とし、「結果的に予算の年度内成立が実現しなくても、それは与党の責任」(国民民主党幹部)と突き放す。
ただ、立憲民主党の内部からは「どのような理屈をつけても、国民が切望する経済回復に冷や水を浴びせるような対応を野党側が取れば、国民的な批判は避けられない」(若手議員)との不安もつきまとう。
一連の動きの中で今後のカギを握るのが、立憲民主党の安住淳・衆院予算委員長だ。安住氏周辺からは「できれば、年度内成立で円満決着させたい」との声も漏れてくる。
与野党双方の思惑が交錯する中、石破首相の地元・鳥取県の支持者からも「そんな人とは思わなかったので、失望した」との声が相次ぐ。
そうした状況下、石破首相の側近とみられている舞立昇治・自民党参院議員(鳥取県・島根県選挙区選出、当選2回)が3月16日、石破首相の商品券配布問題について「歴代の首相が慣例として普通にやってきたことが、ここまで問題になる」と、高額な商品券の配布などは自民党内で常識化してきたとの見方を示し、波紋を広げた。
この発言について、自民党内からも「舞立氏は親分の石破首相を擁護したつもりでも、ひいきの引き倒しになりかねない」(自民党幹部)との批判が相次いでいる。
■「7・20政治決戦」は「出たとこ勝負の神経戦」に
こうした騒ぎも踏まえ、自民党の西田昌司参院議員は3月14日、党本部で記者団に、予算成立後の石破首相の退陣を要求。さらに青山繁晴参院議員も「まず自ら省みて進退も含めて決せられるべきだ」と、自ら早期退陣を決断するよう促した。
ただ、両氏のように公然と退陣要求する議員は旧安倍派など一部に限られる。同党の衆参議員の多くは「いま石破首相を攻撃したら、国民の間で反自民を拡大させるだけ」(閣僚経験者)と静観の構えだ。
石破政権を支える森山裕幹事長は記者団に「国民の信頼を回復できる政治をしっかり確立していくことが、いちばん大事な責任の取り方だ」と、退陣論を強く否定。石破首相自身の処分についても「党としては考えていない」と、不問に付す考えを示した。
これに対し、野党各党が会期末の内閣不信任決議案の提出で一致すれば、衆院で少数与党の石破政権は、衆院解散か内閣総辞職の選択を迫られる。ただ、石破首相サイドは「その場合、ほぼ100%解散する」(官邸筋)との見方で一致している。「7・20ダブル選挙に持ち込めば、野党の選挙共闘も大混乱となる」(同)との読みからだ。
こうしてみると、ほぼ確実視される「7・20政治決戦」での戦いの構図は、「自民内の“石破降ろし”と野党の“不信任勝負”というそれぞれの動きに、その時点での内閣支持率も絡んで、まさに出たとこ勝負の神経戦」(政治ジャーナリスト)となるのは間違いなさそうだ。
東洋経済オンライン
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最終更新:3/17(月) 11:51