「最大の障害」は家賃、FRBのインフレ抑制で-利下げためらう理由

4/19 2:49 配信

Bloomberg

(ブルームバーグ): 2022年に米インフレ率が7%を超えてピークに達した時、インフレは財とサービス全体に比較的幅広く及んだ。しかし、もはやそういう状態にはない。現在残っている問題は、主に住宅に関するものだ。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策決定で参考にするインフレ指標は、家賃が大きな部分を占めている。年初からの数カ月間、このカテゴリーが予想以上に高水準だったことが、利下げをためらわせる大きな理由となっている。シカゴ連銀のグールズビー総裁は「住宅が最大の障害だ」と言う。「われわれは住宅インフレがどの程度低下するかという機械的な短期モデルを基本的に理解しているつもりだった。しかし、現時点ではわれわれが考えていたほどのスピードでは低下してない」と述べた。

家賃インフレの問題自体も、もはや地理的に特に広範囲に及んでいるわけではない。 高インフレが長引く北東部や中西部と、急速にインフレが緩やかになっている西部や南部では、状況に大きな違いがある。

北東部と中西部では、家賃インフレはピークから新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準まで4分の1も下がっていない。南部は半分余り、西部は8割近く下がっている。

この差はすべて供給量に起因しているようだ。不動産情報サイトのアパートメント・リストで住宅エコノミストを務めるクリス・サルビアティ氏は「現在、最も家賃が下落している市場と、最も建設が進んでいる市場がかなり重複している」と指摘した。

ニューヨーク市とアリゾナ州フェニックスは恐らくその対極を最も端的に表している。ニューヨーク都市圏では、3月までの12カ月間に消費者物価指数(CPI)の帰属家賃(持ち家を賃貸する場合の想定家賃)は5.6%上昇と、昨年のピーク6.3%上昇からさほど下がっていない。これに対して2020年2月までの12カ月は2.4%上昇に過ぎなかった。

同都市圏の賃貸住宅増設は他の主要都市に比べ大幅に遅れており、低・中所得者向けアパートの一部を確保するプロジェクトに対する州税の優遇措置が失効した2022年半ば以降、ほぼ足踏み状態が続いている。不動産鑑定会社ミラー・サミュエルのジョナサン・ミラー社長は「これはマンハッタンのような人口密度の高い市場を100年来悩ませてきた問題だ」と言う。

ニューヨーク市が2月に発表した2023年の賃貸空室率は1.4%で、少なくとも1968年以来の低水準だった。ニューヨーク州議会は、市内に数十万戸の住宅建設に道を開くと予測される予算案の可決に向かっている。それでもミラー氏は、今後10年間は市場の勢いが衰えることはないとみている。

対照的に、フェニックス都市圏は新築住宅であふれている。同地域の家賃インフレ率は2022年に18%近くまで加速した後、今年3月までの12カ月ではわずか3%と、パンデミック前の水準を下回っている。

フェニックスにある不動産会社プレステージ・リアルティのエージェント、アーロン・ローソン氏は、借り手にとって「過去数年よりも今は容易だ」と言う。家主は管理費の免除や1年契約で家賃を1カ月無料にするなど、より多くのインセンティブをちらつかせている。ローソン氏は今年の家賃にはさらに下落圧力が強まると予想している。

エコノミストは全米レベルで家賃の差は縮小すると全般にみており、最近のCPI上振れは一時的なものになると予想している。UBSインベストメント・バンクのエコノミスト、アラン・デトマイスター氏と調査会社マクロポリシー・パースペクティブズのローラ・ロスナーウォーバートン氏は、新規賃貸の家賃指数はすでにパンデミック前の上昇率に戻ったと指摘している。

米労働統計局と不動産ウェブサイト運営大手のジロー・グループがそれぞれまとめる家賃指標が最も広く知られている。前者は昨年1年間の賃料の上昇率がわずか0.4%であるのに対し、後者は3.5%の上昇を示している。これとは対照的に、CPIの中にある指標は新規家賃と既存家賃の平均賃料を表しているため、賃料の変動が賃貸住宅全体に浸透するには時間がかかる傾向がある。貸借人が引っ越した後、家主が新たに家賃を引き上げるためだ。

以前はワシントンの連邦準備制度理事会(FRB)でインフレ予測部門を担当していたデトマイスター氏は「新規貸借人のどの家賃指数であれ、18カ月連続で市場家賃はパンデミック前のペースか、それを下回るペースでの上昇となっている」と指摘。「問題は、平均的な家賃がまだどの程度追いついていないかだ」と付け加えた。

大統領経済諮問委員会(CEA)で1月までシニア政策エコノミストを務めていたアーニー・テデスキ氏は、楽観的な見方を若干後退させている。供給不足は長年の問題であり、在宅勤務の普及に伴い、より広いスペースへの需要が続く可能性があると指摘。高金利により、市場賃料が平均賃料に反映されるまでの時間が長くなっている可能性があるとみる。「金利が高いと、引っ越しが少なくなる。そのため、現状を判断する上で、新規契約が示すシグナルが今は少ないか、あるいは表れるのが遅れているかもしれない」と述べた。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Rents Are Fed’s ‘Biggest Stumbling Block’ in Taming US Inflation (2)(抜粋)

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最終更新:4/19(金) 2:49

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