【70歳代】「貯蓄額の平均・中央値」はどれくらい?《高齢者の生活意識》55.8%が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答

10/8 14:25 配信

LIMO

日中は過ごしやすい日が続き、澄み切った秋の空気が心地よい季節となりました。

2025年6月13日「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が参議院本会議で可決・成立しています。

今回の改正は、多様な働き方や家族の形に対応し、より柔軟で安心できる年金制度を目指すものです。

また、私的年金(企業型や個人型)の活用促進や所得再分配の強化を通じて、シニア世代の生活安定を大きな目的としています。

この記事では、この年金制度改正の主要なポイントをわかりやすくご紹介するとともに、70歳代のシニア世代が実際に受け取っている年金額や「貯蓄の実態」「高齢者世帯の生活意識」についても詳しく解説します。

今後の生活設計に、ぜひお役立てください。

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【高齢者の生活意識】半数以上(55.8%)が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答

厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の生活意識に関するリアルな結果を見ていきます。

※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯

●高齢者世帯の生活意識
 ・大変苦しい:25.2%
 ・やや苦しい:30.6%
 ・普通:40.1%
 ・ややゆとりがある:3.6%
 ・大変ゆとりがある:0.6%
この調査結果からは、シニア世帯の暮らし向きが、経済状況によって大きく3つの層に分かれている様子が見えてきます。

まず、半数以上(55.8%)が「大変苦しい」「やや苦しい」と回答し、日々の生活に経済的な厳しさを感じています。

その一方で、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と回答した世帯は合計してもわずか4.2%。経済的な余裕を実感できているシニア世帯はごく一握りのようです。

そして、これら両者の中間にあたるのが、40.1%を占める「普通」と回答した層です。

この割合は「苦しい」層には及ばないものの、「ゆとりがある」層を大きく上回りました。

経済的な余裕があるとは言えないものの、堅実に暮らす一定数のシニア世帯が、厚い中間層を形成している様子もうかがえます。

【年金制度改正の全体像】おもな改正内容《5つのポイント》をチェック!

今回の年金制度改正について、その全体的な枠組みを確認しておきましょう。

●確認しておきたい「主な5つの改正内容」
 社会保険の加入対象の拡大

 ・中小企業で短時間勤務する人なども、厚生年金や健康保険に加入できるようにし、将来的な年金額の増加などのメリットを受けられるようにする
 在職老齢年金の見直し

 ・年金を受給しながら働くシニアが、減額の対象になりにくくし、より長く・多く働けるようにする
 遺族年金の見直し

 ・遺族年金における男女間の差を是正し、子どもが遺族基礎年金を受け取りやすくする
 保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

 ・一定以上の月収がある人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の収入に見合った年金を受け取りやすくする
 その他の見直し

 ・子どもの加算などの見直し・脱退一時金の見直し
 ・私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど
これらの改正点からも、公的年金は単に「老後の受給額」にとどまらず、現役世代の働き方やキャリア設計、さらには人生全体のプランにも大きく関わっていることが分かります。

次章では、シニア世代の具体的な貯蓄状況に注目し、70歳代の世帯がどの程度の貯蓄を保有しているのか、その実態を確認していきましょう。

【70歳代・二人以上世帯】いまどきシニア世代の「平均貯蓄額・中央値」はいくら?

J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」の調査結果をもとに、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認していきましょう。

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は1923万円となっていますが、この数値は一部の高額な貯蓄世帯によって押し上げられており、実態としてはもう少し低めと考えられます。

中央値で見ると貯蓄額は800万円となり、多くの世帯がこの水準付近に分布していることが分かります。

 ・金融資産非保有:20.8%
 ・700~1000万円未満:6.4%
 ・1500~2000万円未満:6.6%
 ・3000万円以上:19.0%
最も割合が大きいのは、金融資産を全く持たない「貯蓄ゼロ」の世帯で、全体の20.8%を占めています。

一方で、3000万円以上の貯蓄を有する世帯も19.0%存在しており、その差の大きさが際立ちます。

このように、70歳代世帯の貯蓄額には大きな開きがあり、その背景には定年退職金の有無や現役時代の収入水準、相続、健康状態、家族構成など、さまざまな要素が影響していると考えられます。

貯蓄が少ない世帯では、年金収入だけでは生活を賄いきれない場合もあるため、健康なうちはパート勤務による収入や、不動産・投資などによる不労所得を確保することが、安定した暮らしを送るための重要な手段となるでしょう。

次に、厚生労働省が公表した一次資料をもとに、現在のシニア世代が実際にどの程度の年金(厚生年金・国民年金)を受給しているのかを確認していきます。

【厚生年金】シニア世代の「平均年金月額」を一覧でチェック

次に、厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、厚生年金・国民年金の平均年金月額を確認しましょう。

なお、厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており(※)、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。

※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。

●厚生年金の「平均年金月額」はいくら? 
 ・〈全体〉平均年金月額:14万6429円
 ・〈男性〉平均年金月額:16万6606円
 ・〈女性〉平均年金月額:10万7200円

【国民年金】シニア世代の「平均年金月額」を一覧でチェック

続いて、厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額についても見ていきましょう。

●国民年金の「平均年金月額」はいくら? 
 ・〈全体〉平均年金月額:5万7584円
 ・〈男性〉平均年金月額:5万9965円
 ・〈女性〉平均年金月額:5万5777円
「厚生年金の男性平均月額を受給する夫」と「国民年金の女性平均月額を受給する妻」の世帯では、二人合わせた年金収入は月22万2383円となります。

このおよそ22万円の収入で、果たしてシニア夫婦の生活費をまかなえるのか、不安に感じる人もいるでしょう。

次章では、総務省の家計調査報告をもとに、標準的なシニア夫婦世帯の家計収支データを確認していきます。

【65歳以上・無職世帯】夫婦世帯の「1カ月の平均的な家計収支」はいくら?

●【65歳以上・無職夫婦世帯】収入:25万2818円
■うち社会保障給付(主に年金):22万5182円

●【65歳以上・無職夫婦世帯】支出:28万6877円
■うち消費支出:25万6521円

 ・食料:7万6352円
 ・住居:1万6432円
 ・光熱・水道:2万1919円
 ・家具・家事用品:1万2265円
 ・被服及び履物:5590円
 ・保健医療:1万8383円
 ・交通・通信:2万7768円
 ・教育:0円
 ・教養娯楽:2万5377円
 ・その他の消費支出:5万2433円うち諸雑費:2万2125円うち交際費:2万3888円うち仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円

 ・直接税:1万1162円
 ・社会保険料:1万9171円
●【65歳以上・無職夫婦世帯】家計収支
 ・ひと月の赤字:3万4058円
 ・エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
 ・平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
65歳以上の夫婦世帯の家計を詳しく見てみると、毎月の収入は25万2818円で、その大半が公的年金などの社会保障給付であり、高齢期において「年金」が主要な収入源となっていることがわかります。

一方で、毎月の支出は28万6877円にのぼります。

内訳を見ると、食費・住居費・光熱費といった日常生活に必要な消費支出が25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円です。

ここで注目すべきは、エンゲル係数が29.8%と比較的高い水準である点です。

エンゲル係数は家計の消費支出に占める食費の割合を示し、一般的に数値が高いほど生活に余裕が少ない傾向を表します。

つまり、65歳以上の世帯では、食費が家計に占める負担が大きいことがうかがえます。

さらに、平均消費性向は115.3%と収入を超えており、家計が赤字になっている状況です。

具体的には、月3万4058円の赤字が発生しており、この不足分は貯蓄を取り崩して補っているのが現実です。

シニア世代は現役時代のように安定収入を得にくいため、赤字が続くと貯蓄の減少は避けられません。

そのため、手元の資産状況を踏まえ、今後の生活設計を慎重に検討することが大切です。

具体的には、支出の見直しや、体調に合わせた短時間の就労などで収入を補うといった工夫も、選択肢の一つとなるでしょう。

【2025年10月の飲食料品】値上げは3024品目「前年10月から100品目・3.4%増」

帝国データバンクが9月30日に発表した「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2025年10月の飲食料品値上げは3024品目となり、前年10月(2924品目)から100品目・3.4%増となりました。

食品分野別にみると、焼酎やリキュール、日本酒などアルコール飲料を中心とした「酒類・飲料」が最も多く、2262品目となりました。

2025年通年においても、「酒類・飲料」(4871品目)は、清涼飲料水のほか、ビール、清酒、焼酎、ワインといった洋酒など広範囲で値上げとなり、前年比で8割を超える大幅増となりました。

次いで「加工食品」(340品目)となり、包装米飯や餅製品が中心となりました。

「調味料」(246品目)では、焼肉のたれやみそ製品などの値上げが目立ちました。

いずれも食卓に欠かせない食品類の値上げが続いており、家計への打撃は避けられない状況といえるでしょう。

食品の値上げは、これで10カ月連続で前年同月を上回る結果となり、値上げが常態化しつつある実情が明らかになっています。

単月でみると、10月の値上げは5カ月連続で1000品目を超えており、連続増加期間は統計開始の2022年以降で最長を更新し続けています。

また、4月(4225品目)以来6カ月ぶりに3000品目を上回りました。

一方で、11月に値上げが予定されている食品は9月末時点で100品目に満たず、11カ月ぶりに前年の同月を下回る見込みです。

これにより、続いてきた飲食料品の値上げラッシュは年末にかけていったん落ち着きそうです。

年間の値上げ品目数も、値上げが本格化した2022年の2万5768品目という水準には及ばず、2万1000品目前後で着地すると予測されます。

物価が上がり続ける中で、家計をやりくりしながら生活を守るための工夫が求められます。

ゆとりある老後の為に現役世代のうちから備えを

老後、公的年金だけでは毎月の生活費をまかなえない人がほとんどです。

趣味や旅行などを楽しめる老後を送るには、ある程度のまとまった貯蓄が必要とされています。

また、歳を重ねると病気や介護のリスクも高まる傾向にあるため、医療費の準備についてもしっかり考えておく必要があります。

安定した収入がある現役世代のうちに、老後に向けた準備をはじめておくことが大切です。

たとえば老後までの時間を利用して、税制優遇制度である新NISAやiDecoを活用した資産運用に取り組むのも1つの選択肢としてあります。

ただし資産運用は利益が期待できるだけでなく、価格変動リスクなどによる元本割れの可能性もあります。

そのため資産運用を検討する際は、金融商品ごとに異なる特徴や経済情勢を理解したうえで分散投資に取り組むなど、リスクを軽減する方法について考えることも大切です。

家計・年金・貯蓄など、ご自身の資産全体の状況を把握したうえで、ライフスタイルに合った方法で資産形成について考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料

 ・J-FLEC 金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」
 ・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
 ・総務省「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
 ・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
 ・帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2025年10月
 ・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
 ・厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明

橋本 優理

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最終更新:10/8(水) 14:25

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