日本株の「長期上昇相場」はまだ終わっていない
日本経済を評するとき、よく「失われた30年」などと言われる。だが、1989年を起点とする日経平均株価の長期チャートを見ると、2009年までの下落期間と、まったく景色の違う2009年からの上昇期間に分かれることに気がつくはずだ。
■「日本株を俯瞰して見えてくるもの」とは?
1989年12月の平成バブルの高値3万8915円からの下落相場は7831円と7568円の下値での2点を底にして終わった。
よくあるダブルボトムの底打ち型だが、その底打ち2点の前者が2003年4月で、後者が2009年2月という6年間の時間をかけての2点底であった。これを見ただけで、いかにバブル崩壊20年の下げ相場が、日本の投資家にとって苦難と絶望の期間だったかが分かるだろう。
しかし、2009年2月の7568円を出発点にした上昇相場は、2024年7月に4万2224円をつけるに至っており、下落相場とは様変わりの対(つい)をなすかのような景色となった。
さらにチャートを細かく見ると、この上昇相場は2015年7月に2万0585円のアベノミクス開始後の高値となって第1波動を形成した後、2017年に2万2000円台に乗せ、2018年~2019年に2万4000円台を上値にした第2波動となって上を目指したが、2020年のコロナショックでこの第2波動は強制的に終焉させられた。
そしてコロナ禍後の相場は上記の2024年7月の史上最高値更新で3波動を形成して現在に至る。この高値からの調整期間が半年にわたることから、2009年からの長期上昇相場はこの第3波動で終わったとみる投資家も多い。しかし、デフレ脱却宣言も出ておらず、現在の物価上昇はあるものの、本格的インフレになったとも言われていない。2025年こそが長期上昇相場の総仕上げになるはずだ。
さて、今度は俯瞰視線ではなく、市場に降りて12月23日からの動きを短期目線で見てみよう。
年内の立ち合い日数は30日の月曜日の大納会を入れても6日しかない。前回の「2025年の日経平均株価は一体いくらになるのか」(12月9日配信)で書いた、2025年の相場を期待して「株を枕に越年」作戦の投資家は多いのか、少ないのか。
■予算否決騒動にはヒヤリだが、2024年は良好な1年に
年末に来て突然起きたリスクである、アメリカ政府機関閉鎖の可能性を持つ「つなぎ予算案の否決騒動」は市場を震撼させた。だが、時間切れ寸前で下院での可決に至った。やれやれだ。
つなぎ予算案のドタバタ劇はアメリカにとってはもはや恒例行事だが、今回は民主・共和両党合意の予算案だっただけに、予想外の展開で市場は反応できず日米とも一時フリーズ状態になった。
理由は報道のとおり、新設される「政府効率化省(DOGE)」のトップに決まっているイーロン・マスク氏などのクレームだ。2025年の1月19日までは民間人であるマスク氏が国会決議に影響を与えたわけで、就任の1月20日以降はどれだけの力を持つのか恐怖の的だが、市場は今のところ冷静だ。
日経平均も先週の12月20日現在で3万9000円を割れ、テクニカル面で見ると25日移動平均線を下回っており、200日移動平均も風前の灯火といった、かなりトリッキーなところにある。だが、下落局面ではすぐに買いも入っており、相場が崩れる様子はない。これは投資家に余裕感があるからだろう。
2023年大納会の日経平均は3万3464円だったが、前述の200日移動平均線は20日現在3万8693円と、昨年末よりも5000円以上高いところにある。確かに8月5日の大きな波乱や小型株の不振はあったものの、おおむね投資家にとって良好な1年だったことが大きい。
今週(23~27日)は週央の25日水曜日がクリスマスで世界の主要市場は休場で、その前後も短縮取引などで閑散相場が予想される。しかし、日経平均は最近の3万9000円を挟んでのモミ合いの中で、「しこりができた」というよりも、むしろ「売り物をこなした」とみる。これが押し目に買いが入る大きな理由だ。
■2025年は嵐が来ても日本の投資家にはマイナスにならず
相場格言では「閑散に売りなし」と言われるが、2025年に期待感があれば年末は強い。今週の閑散相場でも2025年に期待する投資家が多ければ、強含みの展開が予想される。
直近のアメリカのFOMC(連邦公開市場委員会)でのタカ派的利下げで、2025年中の利下げ回数の予想は4回から2回に修正された。また日銀の追加利上げも12月会合は見送りになり、2025年の追加利上げの時期は「賃金動向次第」とはっきりしている。
一方で為替は1ドル=150円台の半ばをはさんで円安が定着しかかっており、企業の10~12月期の業績期待も高まっている。もちろん、この円安が続けば、2025年1~3月期も順調で増益が続き、2025年に期待する投資家は多くなると思っている。現在、2025年度の上場企業の予想増益率は4%~10%程度と意見が割れているが、インフレになれば名目増益率は予想以上に上がる。
また、インフレ相場を前にして、例えば王子ホールディングスのような含み資産の多い企業がPBR(株価純資産倍率)約 0.5倍とは、あまりにも評価不足ではないか。最近この「含み資産」というキーワードがチラホラ目につくようになってきた。東京証券取引所が要請している「資本効率改善」への期待も一段と高まり、2025年は本格化するだろう。
2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』は主人公まひろ(紫式部)の「道長さま、嵐が来るわ」の言葉で終ったが、筆者はこれから始まる2025年のアメリカを指すような強烈な印象を受けた。トランプ2.0のアメリカがどうなるのか、日本の投資家は固唾を飲んで2025年の1月20日を待っている。
しかし、「掘って、掘って、掘りまくれ」なのだから、原油価格が上がらないソフトインフレの時代が来るということだ。米中両国の対立が激しくなれば、漁夫の利が日本にめぐって来る。「嵐」は必ずしも日本の投資家にとってマイナスではない。日本は平安時代の後、長い戦いの時代を経験するが、安土桃山時代を経て平和な江戸時代に移っていく。とにかく「押したら買い」は変わらない。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
東洋経済オンライン
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最終更新:12/23(月) 7:32