茶系飲料「ルイボスティー」人気に火がついた裏側 南アフリカ原産の不思議な風味が日本人に浸透

1/18 10:02 配信

東洋経済オンライン

 さまざまなブランドが展開される茶系飲料の中で、近年、ルイボスティーの人気が高まっている。

 業界団体である全国清涼飲料連合会が選んだ2024年の業界10大ニュースにも「ジャスミン茶、ルイボス茶、コーン茶など無糖茶が多様化して人気」として選ばれた。

 「2024年1〜6月のスーパーマーケット等でのルイボス茶の市場規模はジャスミン茶の約9割にまで伸長しました。また2017年と2023年を比較すると、市場は約14倍に拡大しています」(サントリー食品インターナショナルの井島隆信課長)

 なぜこれほど急拡大したのか。原料調達する商社と飲料メーカーに取材した。

■南アフリカでしか採れないノンカフェインの茶葉

 「現在、国内のペットボトル向け市場におけるルイボス原料は推定で約1000トン。うち当社が約5割のシェアを占めています。当社は世界各地から食品原料をグローバル調達しており、南アフリカ共和国が原産のルイボスも扱っていましたが、かつては知る人ぞ知る原料という存在でした」(伊藤忠食糧の太田洋輔課長)

 伊藤忠食糧は、大手商社・伊藤忠商事のグループ企業として食品原料を総合的に扱うが、一般的な茶葉に比べてルイボス茶葉は異色だという。

 「ルイボスは、南アフリカのセダルバーグ山脈一帯でしか自生しません。そして緑茶や紅茶などの茶葉(同じ茶葉が発酵度合いの差で味や香りが変わる)がツバキ科なのに対して、ルイボスはマメ科でカフェインを含まない茶葉です」(同)

 現地では古くから薬草として飲まれ、現在はティータイムにルイボスエスプレッソやラテ、カプチーノなどでも楽しむという。さまざまなフレーバーとの相性もいい茶葉だ。

 日本では2013年に「ヘルシールイボスティー」(伊藤園)が発売されたが、人気に火がついたのは、伊藤忠食糧が需要拡大を見込んでルイボス原料の本格展開を始めてからだ。

 2019年、セブン-イレブンが「セブンプレミアム ルイボスティー」を発売し、2021年にファミリーマートが「ルイボスティー」を発売と大手コンビニが目を付けた。2023年にはサントリーが主力ブランドから「GREEN DA・KA・RA やさしいルイボス」として発売した。

■麦茶を持つブランドから投入

 そのサントリーは後発ながら、一気に販売数量を拡大した。なぜそれが可能だったのか。

 「現在、ルイボスはノンカフェインの新しい選択肢として、日常使いで飲用されています。従来のルイボスティーは『なんとなくクセがあって飲みづらそう』というイメージがありましたが、そのハードルを下げられた結果、多くの方に受け入れられたのではないでしょうか。『GREEN DA・KA・RA』ブランドから『やさしいルイボス』という商品で発売したねらいは、そこにあります」(井島氏)

 2000年に「DAKARA」ブランドで誕生した当初はスポーツドリンク中心だったが、2012年に「GREEN DA・KA・RA」になってからは味も多様化して伸長。現在は年間約5000万ケースを販売する。近年の内訳では、麦茶がスポドリを上回る。茶系飲料、身体にやさしい、やさしい味わいといった訴求もルイボスの売り上げを後押ししたのだろう。

 「同じノンカフェインであるやさしい麦茶は、夏が最盛期で10月以降は落ち込むのに対して、ルイボスは秋以降も落ち幅が小さく、冬でも安定して売れています」(同)

 「新商品は2年目以降が本当の勝負」と言われるが、「やさしいルイボス」は2年目のジンクスもなく、2024年1〜12月の売り上げは前年比約1.8倍超と好調なようだ。

 人気ラーメンチェーン「一風堂」では、ルイボスを水代わりに提供している。こってり系の料理との相性もいいようだが、購入時間帯にも特徴があるという。

 「商品を買ってすぐ飲むことが多い自販機チャネルで見ると、13〜15時の購入が多いのです。その理由は、①カフェインコントロール、②午後のもうひと踏ん張り、③無糖で赤い色も気分を上げてくれる――だと考えています」(井島氏)

 以前、「茶系飲料市場は大きく分けて“緑色”(主に緑茶)と“茶色”(紅茶、麦茶、烏龍茶、ブレンド茶)が拮抗する」と聞いたことがある。その中でもルイボスは異質の色だ。

 「茶系飲料でここまで赤いのはあまりなく、少しミステリアスな存在です。南アフリカ原産なのを知らなくても、気分転換にはいい“異国感”を感じることができます」(同)

 冬の季節には、温めても飲みやすい。秋冬も一定の売り上げが維持できるのは、夏の定番イメージがないのが幸いだったかもしれない。

■「飲料で健康になりたい」は昔からあったが…

 ルイボス人気を調べてみると、ノンカフェイン以外にも、産婦人科での推奨(※)やSNSでの口コミにより、ルイボス=健康によいという認識が広まったこともあるようだ。

 (※)妊活効果への期待もあるが、ポリフェノールが含まれるため、妊娠期の摂取には注意したい。

 ところで、茶系飲料を飲むことで「健康を維持したい」「美容効果を高めたい」という思いは、これまで何度もあった。一時的に話題を呼んでもやがて失速した例も多い。ルイボスはその轍を踏まないのだろうか。

 「まず、『GREEN DA・KA・RA やさしいルイボス』はトクホ飲料のような健康茶になるつもりはありません。あくまでも日常の喫食シーンに登場する飲料でいたいと思います。

 当社のノンカフェイン飲料である水や麦茶(サントリー天然水やGREEN DA・KA・RA やさしい麦茶)を愛飲される方も、気分転換をしたい時には少しエッジのきいたルイボスを選んでいただいています。 “嗜好性を求めた浮気”で選ばれるのが理想です」(井島氏)

 一方、伊藤忠食糧はまた違った見立てだ。

 「RTD(Ready to Drink=開けてそのまま飲める飲料)人気のトレンドは、①無糖、②単品(の味)、③冷水となっています。ルイボスはその特徴を備えていますし、若い世代は総じて苦いお茶を好まないので将来的にも有望だと思います。

 また、ノンカフェイン市場も好調で、さまざまなノンカフェイン飲料がありますが、麦茶に次ぐノンカフェイン飲料として、ルイボスは一定の地位を確立しました」(太田氏)

■今後の課題は「飲用経験を高める」こと

 ここ数年で急拡大したルイボスだが、残された課題は何か。

 「まだ知名度が低いことです。『やさしいルイボス』で行った調査では商品の認知度が約40%、飲用度が約20%でした。

 それまでルイボスティーという名前は知られていましたが、多くの方のイメージではハーブティーの一種としての美容系飲料。実際に飲む前に、何となくクセが強くて飲みにくそうと思う方もおられました。それが最近、ようやく自分事としての飲料になってきたと感じています」(井島氏)

 「最近は、ルイボスティー&ノンカフェイン専門店を展開される企業もあります。また伊藤忠グループではグループ会社のファミリーマートを中心に川上から川下まで展開していきます」(太田氏)

 伊藤忠食糧では安定供給のためにメーカーと一体となって品質面にも注意を払う。日本では飲料が中心だが、海外ではヨーグルトのフレーバーやスキンケア化粧品に応用する例もあるという。

 「紅茶と烏龍茶の中間のような風味」ともいわれる味についてはどうか。筆者が各方面に聞き取り調査した限りでは総じて好評で、苦手な味という声はあまりなかった。

 その不思議な魅力で2025年以降も人気が拡大するか、引き続き注視したい。

東洋経済オンライン

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最終更新:1/18(土) 10:02

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