「わが子は中学受験に向いているのだろうか・・・」と悩む親に知ってほしい”受験に向いている子どもの性格5選”
中学受験を考えているご家庭では、「うちの子は中学受験に向いていないんじゃないか……」と悩むことも少なくないのでは。『中学受験 親がやるべきサポート大全』から一部抜粋・編集のうえ、中学受験に向いている子どもの性格を5つ紹介します。
■幼い子は中学受験には向いていない?
<BAD>
不確かな情報に左右されて親も子も途方に暮れる。
→「性格が幼いと向いていない」などという断片的な情報で不安にかられ、親はイライラが募る。子どもは「ちゃんとした子」であることを求められるが、具体性がないのでどうしてよいかわからず、親からただ不安をぶつけられて困惑したり、ストレスを感じたりして萎縮する。
<GOOD>
中学受験に必要な適性を具体的に把握している。
→中学受験に向いている子の性格を理解している。それをふまえたうえでわが子の良いところも見据え、冷静に判断し、わが子にどんな力をつければよいかを考えられる。また、その素養を身につけさせるための子育てをしていける。
中学受験専門塾を経営していると「うちの子は幼いんですけど、中学受験には向いていないのでしょうか?」とか「どうしたらいいでしょうか?」とよく聞かれます。YouTubeのコメントやメルマガ、公式LINEの感想でもよく聞かれます。わが子に中学受験をさせたいと思っていても、向いていないのに無理にやらせたら勉強が嫌いになってしまうんじゃないかとか、自己肯定感が下がってしまうんじゃないかとか不安になりますよね。
確かに幼い子は中学受験で不利といわれることは多く、その通りであることも多いです。その親御さんはきっと「幼い子は中学受験で不利」とどこかで聞いて、心配になってしまったのでしょう。
■受験に向いている性格とは?
しかし、ここでいう幼さとはいったい何を指しているのでしょうか? 例えば「お母さんのことが大好きで、いつもべったり甘えてくる」といった幼さであれば、中学受験ではあまり問題になりません。むしろ、反抗期に差し掛かり、何を言っても反発されるよりは、よほど受験に向いています。幼い子にありがちな特徴・性格とおおまかにいっても、その中でプラスに働く特徴・性格とマイナスに働く特徴・性格があるのです。
そこでここでは、中学受験に向いていない性格と性格を変える方法をお伝えします。まだ低学年の子どもであれば「中学受験を始めるか、やめておくか」、すでに始めている子どもであれば「続けるか、撤退するか」の判断基準にしてみてください。
<中学受験に向いている子の性格①>
・誠実性が高い
誠実性、いわゆる「勤勉さ」や「自制心」といったものが高い子は、中学受験に向いています。遊びたいのを我慢して、日々コツコツ勉強を継続する力がある子のほうが受験では良い成果を上げられます。「我慢できない」「遊びたい気持ちが抑えられない」といった幼さが目立つようであれば、中学受験には向いていない可能性が高いでしょう。
<中学受験に向いている子の性格②>
・開放性が高い
開放性、いわゆる「知的好奇心」「冒険心」といったものが高い子は、中学受験に向いています。何ごとにも興味や関心を持って学べる子は、勉強を楽しめます。学んだことが記憶にも残りやすいですし、たくさんの勉強も苦になりにくいです。
IQは「開放性」が高い子のほうが高くなる傾向があり、勉強が得意になりやすいです。好奇心を持っていろいろなことを考えたり、調べたり、実践したりすることでIQが高まり、IQが高まるとさらに好奇心が高まるという双方向の影響があるそうです。「開放性」が高い子は中学受験では有利になるでしょう。
<中学受験に向いている子の性格③>
・将来の目標があり、受験の目的意識がある
中学受験で合格するには他の子に勝つ必要があります。たくさんのライバルが頑張っている中、そのライバルに勝利して合格するには、人一倍の努力が必要です。コツコツやる性格でも、知的好奇心が高くても、ときにつらいことはあるでしょう。
そんなとき、将来の目標や志望校への熱い想いなどがあると、そのつらく険しい山を乗り越えるための後押しになります。未来のことを考えて目標や目的意識を持ち、ワクワクすることが得意な子は、中学受験に向いています。
<中学受験に向いている子の性格④>
・自信や精神的なタフさがある
人間がもっとも学べる瞬間は失敗したときです。成長を加速させるにはたくさん失敗して、そこから学ぶ必要があります。しかし、自分に自信がない子は失敗して傷つくことを恐れ、チャレンジできなかったり、失敗を受け入れられずに目を背けたりするので、成長が遅くなります。
ですから、自信や精神的なタフさがある子は、中学受験で他の子と競争することに向いています。
<中学受験に向いている子の性格⑤>
・向上心がある
「より良い自分になりたい」という成長欲求は成長の原動力です。これが高い子は成長が早くなります。ですから向上心がある子は、中学受験で他の子と競争することに向いています。
なお、向上心と競争心は違うので注意してください。向上心はより良い自分になりたいという気持ち、競争心は相手に勝ちたいという気持ちです。そして競争心は、成績上位の子にとってプラスに働くことが多いですが、成績下位の子にとってはマイナスに働くことが多いです。
成績下位の子に競争心があり、「勝ちたい」けれど「勝てない」となると「勝てる相手と戦う」「勝てる競技で戦う」といった行動に走る場合がほとんどだからです。例えば「自分よりもできない人間を見下して安心する」「勉強では勝てないからゲームの世界に逃げる」といった行動が典型的なものです。「勝つために努力する」よりも、そのほうが楽ですからね。
なので、競争心があったほうがよいかどうかはお子さんの能力次第で、ないほうがむしろよい場合も多いです。競争心よりも向上心を持てるようにしましょう。
■もしわが子が中学受験に「向いていない」と思ったら?
中学受験に向いている前述の5つの要素をすべて満たしている子はどれくらいいると思いますか? これまで1000人以上の子どもを見てきましたが、「文句なし! 全部◎」という子は、片手で数えられるくらいでした。
ほぼすべての子は、多かれ少なかれ、向いていないところ、足りないところがあります。もし、親が減点方式で子どもに足りない部分ばかり見ているようであれば、安心できることなどまずありません。こうして親が不安を持てば、子どもにさまざまな悪影響をもたらします。
以前、このテーマをYouTubeで扱ったとき、伸学会の生徒の親御さんから「動画を見ました! うちの子、ひとつも当てはまっていない気がします。中学受験には向いていないんですかね……」という声をいただいたことがありました。そこで、実際のところその子がどうなのか、ひとつひとつ確かめてみることにしました。
①「誠実性が高い」の逆
〜毎日コツコツ学習を進められない
これは「確かにそんなところあるよね……」と意見が一致しました。お母さんが気にしていたのは、宿題の取り組み量が安定しないこと、得意科目ばかり取り組んで、苦手科目に取り組む様子が見られないことでした。テレビをだらだら見てしまったり、塾にも遅刻していったり。これがとても気になり「中学受験に向いていないのでは?」と思ったお母さんの気持ちはとてもよくわかりました。
■家庭では見えにくい授業中の輝き
②「開放性が高い」の逆
〜知的好奇心が低い
「当てはまる」と思った①とは打って変わって、②は「あまり当てはまらないのでは?」となりました。この子は、宿題こそ取り組みにムラがあるものの、授業中は常に楽しそうに参加し、「〇〇って、□□なんでしょ!」と話したくて仕方ない様子でした。この授業中の輝きは、確かにご家庭では見えにくいものなので、お母さんが家で心配に思うのは無理もない話です。このことを話すと、「そうなんですね!」と驚いておられました。
③「将来の目標があり、受験の目的意識がある」の逆
〜目的意識がない
「どちらともいえないよね」という話になりました。というのも、ご家族でいろいろな学校の見学に足を運んでおられ、学校をたくさん知っているので、受験についてのイメージは割とあるようでした。定期的に行われるカリキュラムテストの前になると、多少焦りながらも、取り組み量を増やす姿を見ていたので、「行動にムラがあるからやっていないときが目立つが、なんだかんだいって本人はやろうと頑張っている」ということを共有できました。
④「自信や精神的なタフさがある」の逆
〜ミスに向き合えない
これも「あまり当てはまらない」という話になりました。「ミスに向き合えず、点数の低い答案を捨ててしまう」といった姿は見たことがありませんでした。むしろ、低い点数でも豪快に笑っている大物感がただ者ではないという印象です。間違えた問題を直すことにも特にためらいはなく、すんなり受け入れて実行してくれる様子でした。
⑤「向上心がある」の逆
〜成長したいという思いがない
「前よりいい点を取りたい」という気持ちはしっかりあるようで、これも「当てはまらない」という結論になりました。
確かめてみた結果、①が当てはまっていただけでしたね。ですが、ひとつ「これは当てはまっている!」と思うと、一気に全部当てはまっているように感じて不安になってしまうのも、よくあることです。
ここで確かめた子どもの親御さんとは、この面談で「実際のところどうなのか」を一緒に確認できました。「向いていないどころか、むしろ向いている要素のほうが多いのだから、それを認めてあげよう。そのうえで、いかに①の課題を解決するか、学習量を増やしていけるかを意識して本人を応援していこう」という方針も立てられました。
さらに、毎度「この科目をやろう!」と思っては全力で突き進む学習を、各科目で交互に繰り返していく方法でも、学習が進んでいくという点では良いことです。なので、計画性の点では多少甘くても、まずは何かひとつ頑張って成功体験を得てから「バランスよく、計画的に」という課題に目を向ければよい、という優先順位の見通しも立ちました。
その結果、その後は順調に勉強の量も増え、気がつけば逃げまくっていた「社会」にたくさん取り組む姿を見る機会もあり、受験生らしい姿へと成長していく過程を見ることができたのです。
■わが子の個性を受け入れる
大事なことは「中学受験に向いていない?」と思ったとしても、それをわが子の個性として受け入れてあげることです。同時に、「本当にそうなのか」を複数の目から見て確認できると、お子さんの頑張りに気づくこともできます。もし、お子さん自身が「自身の性格を変えていきたい」と思ったときには変え方を教えてあげましょう。
その方法は「習慣化の技術」です。昔から「習い性となる」という言葉があるように、習慣は、ついにはその人の生まれつきの性質のようになります。ですから「自分の性格をこういうふうに変えよう」と決めたら、その性格にふさわしい行動は何かを考え、その行動を習慣化すればよいのです。実際、イリノイ大学(アメリカ)のネイサン・W・ハドソン博士らの研究(※1、2)でも、15〜16週間の習慣化プログラムで性格に変化が確認されました。
今は中学受験に向いていない性格だとしても、それであきらめる必要はありません。もし「変わりたい」と思うなら人は変われるからです。習慣から性格を変えていきましょう。本人が今の自分を受け入れたうえで、理想の自分になるために「自分を変えていこう」と決めたのであれば、この方法を教えてあげましょう。
ただし「お前の性格はダメだ」と言って変わることを親が強要すると、子どもの自己肯定感を傷つけてしまうので注意します。そうやって強要されると、ますます変われなくなります。
人は「ありのままの自分を受け入れられたときに初めて、変わる準備が整う」ことがわかっています。「変わりたい」と思う気持ちは大事なのですが、今の自分を否定するような、責めるような気持ちでは変われないのです。ですから、子ども本人がありのままの自分を受け入れられるように、まずは親御さんが、ありのままの子どもを受け入れる必要があるのです。
※1:Volitional personality trait change: Can people choose to change their personality traits?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25822032/
※2:You have to follow through: Attaining behavioral change goals predicts volitional personality change.
https://psycnet.apa.org/record/2018-53132-001
東洋経済オンライン
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最終更新:4/18(金) 13:32