【世界の名車を手がけた巨匠ジウジアーロ渾身のデザイン】3000万円オーバーの超高級キャンピングカー、ライカ「クレオスL5009」の衝撃
昔からのクルマ好きなら誰もが名前を知るイタリアのカーデザイナーが「ジョルジェット・ジウジアーロ」氏だ。1950年代から活躍する同氏は、アルファロメオやマセラティなどのイタリア車をはじめ、ドイツ車のフォルクスワーゲン「ゴルフ」(1974年の初代)、日本車のいすゞ「117クーペ」(1968年)など、世界中の歴史に残る名車たちを手がけたことで有名。まさに「20世紀最高のカーデザイナー」として知られる名匠だ。
【写真】ジウジアーロ氏がデザインを担当した、ライカの高級キャンピングカー「クレオスL5009」の内外装(34枚)
■ジウジアーロが手がけたキャンピングカー
そんなジウジアーロ氏が、最近キャンピングカーもデザインしたことをご存じだろうか。イタリア「ライカ(LAIKA)」の最高級ラグジュアリーモデル「クレオスL5009(KREOS L5009)」がそれで、日本でもキャンピングカー・メーカーのトイファクトリー(岐阜県)で購入可能。3000万円を超える高価なモデルながら、多くの注目を集めているという。
ここでは、「令和のジウジアーロ作品」といえるクレオスL5009を「オートモビル カウンシル2025」(2025年4月11〜13日・幕張メッセ)というカーイベントで取材。しかも、同イベントにはジウジアーロ氏本人も来日し、多くのファンの前で自身の作品(クレオスL5009)をお披露目したというので、そのもようなども含めて紹介しよう。
ジョルジェット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)氏は、1938年8月生まれ。御年86歳の現在も現役という、まさに「生ける伝説のカーデザイナー」だ。
前述のとおり、同氏は1950年代からカーデザイナーとして活躍。当初はフィアットやアルファロメオなどのイタリア車が中心だったが、1968年に自身のデザイン会社イタルデザインを設立し、活躍の舞台を世界に広げた。たとえば、BMWやフォルクスワーゲンなどのドイツ車、シボレー(GM)やフォードの米国車などなど、自動車業界に残した功績は計り知れない。
■日本車とも縁深いジウジアーロ氏
また、古くから日本車との縁も深く、とくに1960年代や1970年代には、マツダの初代「ルーチェ」、いすゞの117クーペ、スズキの「フロンテクーペ」や「キャリー」などを担当。1970年代にもトヨタの「パブリカスターレット」(初代スターレット)、1980年代は日産の初代「マーチ」、1990年代にはスバルの「アルシオーネSVX」など、さまざまな年代の国産名車たちのデザインを手がけている。
ほかにも、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで活躍したDMC「デロリアン」も、同氏率いるイタルデザインの作品。また、イタリア2輪メーカーのドゥカティ製バイクやセイコーの時計、ニコン製カメラ、ブリヂストン製の自転車など、クルマ以外の製品でもデザイン制作に関わっており、世界的な工業デザイナーとして幅広いジャンルで活躍し続けている。
ちなみに同氏は、1999年に、20世紀で最も影響力のあったカー・デザイナーに与えられる「カーデザイナー・オブ・ザ・センチュリー」も受賞。まさに世界が認めるカーデザイン界の巨匠であることの証しとなっている。
一方、そのジウジアーロ氏がデザインを担当したのが、ライカの手がけるクレオスL5009だ。ライカというキャンピングカー・メーカーを知る人は、国内にさほど多くないだろう。余談だが、日本でライカといえば、老舗カメラメーカーを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。だが、あちらの綴りは「Leica」で、発祥はドイツ。一方、キャンピングカーのライカは、「LAIKA」という綴りで、1964年にイタリアで設立された。
創業当時から優美さを際立たせたイタリアンデザインを特徴とするキャンピングカーを手がけている同社。現在は、世界三大キャンピングカーグループのひとつで、ドイツを拠点とする老舗メーカー「アーウィン・ハイマー・グループ(Erwin Hymer Group)」傘下に統合され、独自のデザインを展開する。しかも、近年のモデルでは、ドイツを拠点としてきたアーウィン・ハイマー・グループが培った高い品質や信頼性なども加味。より商品力を高めたことで、今や同グループ中で最もラグジュアリーなポジションを確立しているメーカーとなっているという。
■クレオスL5009の特徴
そうしたライカ・ブランドの中でも、最もラグジュアリーなモデルといえるのがクレオスL5009。ジウジアーロ氏は、内装、外装ともにデザインを担当したという。
ベース車となっているのは、フィアットの商用バン「デュカト」。欧州製キャンピングカーの多くに使われているモデルだ。クレオスL5009は、それをベースに、キャビン部(居住スペース)などを架装し、全長8m級の巨大なボディを実現。欧米など海外では「クラスAモーターホーム」と呼ばれるジャンルに属するモデルだ。
キャビン部の外観は、フロント部から後部にかけて流れるようなフォルムが特徴的。全長7980mm×全幅2320mm×全高3030mmといったビッグサイズながら、威圧感はさほどなく、ホワイト基調にブラックの差し色を入れたカラーリングなどが、高級かつクリーンなイメージを醸し出す。
一方、ホワイトレザーのシートなどを使った内装は、豪華かつ明るい雰囲気を持つことが印象的だ。室内高は2050mmを確保し、比較的高い天井により圧迫感はほぼ感じない。6カ所に備えたLEDバーの天井照明も、快活でラグジュアリーな室内空間に貢献する。
■豪華&充実したインテリア
車体右側にあるエントランスから室内に入ると、すぐに目に入るのが落ち着いた雰囲気のリビング。コの字型ソファに着脱式テーブルを備え、運転席・助手席を180度後方に回転させれば、ゆったりとくつろげる空間となる。
リビングの後方にはキッチン。高級感溢れる人工大理石もあしらったガラストップシンクや、さまざまな調理に便利な3口バーナーコンロなどを装備する。また、153Lの3ウェイ冷凍冷蔵庫やオーブンも完備。給水タンク(200L)や排水タンク(146L)により、水まわりの装備も万全だ。
就寝スペースは、室内後部にツインベッドを常設。車体の縦方向へ2列に並んだベッドのサイズはどちらも1950mm×800mm。2つのベッド間にオプションのマットを設置すれば、キングサイズベッドとして使うことも可能だ。また、通常時は天井に収納でき、電動で昇降する1900mm×1400mmのプルダウン式ベッドも搭載。これらにより、就寝人数4〜5名を確保する。なお、乗車定員は4名だ。
ほかにも、空調設備としてエアコンや大型ルーフベンチレーターなども採用する。停車時に家電などを使えるサブバッテリーは、95Ahの鉛タイプを標準装備するが、オプションでより大容量の150Ah・リチウムイオンバッテリーに変更することも可能だ。
なお、販売は、トイファクトリーの輸入キャンピングカー部門であるユーロトイが担当。価格(税込み)は展示車の場合で3454万円となっている。
■ライカとジウジアーロの出会い
ちなみに、ジウジアーロ氏が、ライカ製キャンピングカーのデザインを手がけたのはクレオスL5009が初だ。もともと同氏は同じグループ傘下の「デスレフ(Dethleffs)」製キャンピングカーのデザインを担当していた。それがきっかけで、同じアーウィン・ハイマー・グループであるライカのデザインも依頼されたという。同氏は、クレオスL5009のデザインを手がけた際の苦労点などについて、以下のようなコメントを語ったという。
「(キャンピングカーは)クルマと家の中間といえるので、かなり壮大なプロジェクトだった。(だが)結果として、シンプルかつラグジュアリーなハーモニーを奏でる作品となったので、仕上がりにはとても満足しているよ」
また、トイファクトリーの担当者は、ジウジアーロ氏に「何かをデザインするとき、どのようにアイデアを得ているのか」といった質問もしたという。同氏は、それに対し、次のように答えたという。
「簡単だよ。デザインの下書きをしたあと、ただデザインをするのではなくて解決策を探すんだ。例えば、リビングと洗面スペースはどうやったら分けられるか? などね。(単に)デザインするのではなく、可能にする方法を探求するんだ」
御年86歳で、今も現役。クルマはもちろん、数々の工業製品を手がけてきたベテラン名デザイナーは、キャンピングカーについても、独自の方法論でデザインをしているようだ。
■超高級キャンピングカー、クレオスL5009の今後
なお、今回のイベントで、ジウジアーロ氏はゲストとして来日しており、トークショーなどを実施。多くのファンが集結したという。さらに同氏は、トイファクトリーのクレオスL5009展示ブースにも来訪。トイファクトリーの担当者によれば、ジウジアーロ氏が完成したクレオスL5009の実車を見るのは初めてで、車内装飾や家具の作りなどを、大変興奮した様子で確認していたそうだ。
日本にも、いまだに多くのファンを持つジウジアーロ氏。その最新作といえるクレオスL5009が、日本のキャンピングカー愛好家にどういった反響を得るのかも、今後の注目点だといえるだろう。
東洋経済オンライン
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最終更新:6/15(日) 6:02