「あのドラマを思い出す!」との声が続出!有吉の壁「京佳お嬢様と奥田執事」でバズった執事キャラ、「ドラマ→バラエティ」でも通ずる“魅力”とは?
「有吉の壁」(日本テレビ)で披露された即興コント「京佳お嬢様と奥田執事」の勢いが止まらない。
1月8日(水)の放送で登場するや否や、SNSで大バズり。ガクテンソク・奥田修二演じる執事が、ぱーてぃーちゃん・金子きょんちぃ扮するギャルお嬢様に振り回されて……というドタバタシチュエーションに魅了される人が続出している。
人気は番組の枠をも超えて、1月29日にはタテ型ドラマ化が発表され、「有吉の壁公式YouTube」や「京佳お嬢様と奥田執事公式TikTok」で全6話にわたって配信されている状況だ。
「京佳お嬢様と奥田執事」を目にした人からは、「あのドラマを思い出す!」という声が続出。そう、イケメン執事たちが登場する伝説のドラマ『メイちゃんの執事』(フジテレビ)である。
2009年の放送開始から16年。流行は繰り返すと言うが、ドラマの世界ではなく、バラエティ番組で「懐かしい!」との声が出るとは……。そこで本稿では、平成イケメンドラマの歴史の一角を彩った『メイちゃんの執事』について振り返っていく。
■超絶有能なスーパー執事が、庶民お嬢様を徹底サポート!
『メイちゃんの執事』は訳アリお嬢様・メイと、イケメン執事・理人による青春ドラマ。
原作は宮城理子氏による同名コミックだ。執事のイメージを「じいや」から「青年」へ、「脇役」から「メインキャラクター」にアップデートさせるきっかけとなった作品のひとつである。
うどん屋を経営する両親と、慎ましやかに暮らす女子高生・東雲メイ(榮倉奈々)。しかし両親は事故で他界。途方に暮れるメイのもとに現れたのは、イケメン執事の柴田理人(水嶋ヒロ)だった。
なんとメイは日本を代表する大富豪の孫娘で、理人はメイの専属執事だという。そしてメイは超お嬢様学校「聖ルチア女学園」への入学をすすめられるが……。
平凡な暮らしをしてきた女の子が、超お嬢様学校に入学? その後のメイの苦難は、容易に想像できるだろう。誰もが憧れるスーパー執事の理人が仕えるのは、垢ぬけない庶民のメイ。そのアンバランスさに学園のクラスメイトたちから総スカンをくらい、執拗な嫌がらせを受けてしまう。
学園から逃げ出したメイに、祖父は「死んだ両親を同じ墓に納めたいのなら、本家にふさわしい優秀な人間になれ」と条件を出す。自分にそんなことができるのか。不安に震えるメイは理人へ問いかける。
「私が戦うって言ったら?」
「ならば私はメイ様が闘うための剣に、メイ様を守るための盾となりましょう」──。
こうしてメイは、愛する父と母のため、理人とともに「聖ルチア女学園」で立派なレディになることを目指すのだった!
■イケメンドラマの様式美をいい意味で裏切った「バディものっぽさ」
これはドラマ版第1話のダイジェストだが、実はこの展開、ドラマと原作で若干ニュアンスが変わっていたことをご存じだろうか。
原作のメイは、理人に異性として好意を抱いており、学園に入るときも「理人さんが自分の成長を喜んでくれるなら」という思いが強かった。
かたやドラマ版は、メイから理人への好感度はほぼゼロからのスタートで、どちらかといえば鬱陶しがる空気さえ感じられる。庶民お嬢様の下剋上とそれを支える執事、まるでバディもののようなスパイスを加えたのがドラマ版なのだろう。
そのような変更もあってか、メイの性格もおっとりした天然系女の子(原作)から、しっかり者でツンデレ系(ドラマ版)へと変化している。
2000年代といえば、多数の男性俳優が登場するイケメンドラマが大ヒットしていた時代。イケメンドラマといえば、ひとりのヒロインに対して複数のイケメンが登場する様式美があった。
本作は水嶋ヒロをはじめ、佐藤健、向井理、鈴木亮平など数多くのイケメンが登場するが、俳優たちはつねにお嬢様と1対1。一心同体なのである。
ほのかな恋愛描写はありつつ、リスペクトのうえで成り立つ信頼関係を強く描く。その構成は、当時の若い女性向けのエンタメとしては稀有だったのではないか。
■お嬢様との信頼関係があってこそ。心の絆を描く
お嬢様との心の絆を象徴するような場面がある。執事同士の「決闘(デュエロ)」だ。学園には、揉め事を執事同士の戦いで決着をつけるという習わしがある。クラスメイトのリカ(大政絢)に因縁をつけられたメイは、お互いの執事を懸けた「決闘」を申し込まれる。
メイは理人とうまく接することができず、ぎくしゃくするばかり。そのせいか「ヤバイと思ったら負けてもいい」と弱気な言葉をかけてしまう。
負けてもいい。それはすなわち主従関係を手放すこと。メイと心を通わせられないままの理人は、あっという間に劣勢に。このままでは負けてしまう! この窮地に、メイは心の底から叫ぶ。
「勝って!」「私の執事でいてくれるんでしょう!」
その後、理人がどのように劣勢を脱したか……は、きゅんとするのでぜひともドラマ第2話をチェックしてほしい。
この執事同士が闘うアイデアは、原作者の宮城氏が当時のサブカルチャーからヒントを得て作り上げたもの。
執事は単なる世話係ではなく、お嬢様のために闘う騎士的存在。執事は大切なお嬢様のためならどこまでも強くあれる。お嬢様との心の絆こそが絶対なのだ、と本作は訴えかける。
原作コミック『メイちゃんの執事』とほぼ同時期に、『黒執事』が連載開始。執事喫茶も大流行している中でのできごとだ。その後は『謎解きはディナーのあとで』などさまざまな執事作品が登場。もちろん、私たちが思い描く「執事像」も、それらのカルチャーに影響を受けている。
■「京佳お嬢様と奥田執事」による執事文化のリビルディング
そして、時は流れて2025年。
当時『メイちゃんの執事』に胸をときめかせたファンの心にも刺さったのが、即興(ながらも、芸人たちがそれなりに練り込んだ)コントで人気の番組「有吉の壁」内で繰り広げられた「京佳お嬢様と奥田執事」だったのだ。
お嬢様と青年執事、の組み合わせは言わずもがな。
心配性のお嬢様を追いかけては、ひらりとかわされてしまう不遇感。普段はツンとしているお嬢様の不意な優しさにホロリとしたり、「あのおてんば娘〜!」と叫んだり。そのすべてがあまりにも「私たちの知っている執事」すぎるのである。
■視聴者の中の「懐かしさ」を刺激した
少女マンガの中かしら? と錯覚するほどの「京佳お嬢様と奥田執事ワールド」。その世界観には、視聴者からのファンアートやショートストーリーの影響が多分に含まれているという。
『メイちゃんの執事』以降に育まれた近年の執事カルチャーを存分に浴びた私たちは、それらを咀嚼し、「京佳お嬢様と奥田執事」を通して執事文化をリビルディングしているのかもしれない。懐かしさがあったからこそ、番組の枠を超える人気を獲得したのだ。
放送から16年、今なお私たちの心に残り続ける『メイちゃんの執事』。メイと理人の絆にホロリとしたり、かすかな恋の香りにドキドキしたり。フジテレビオンデマンドでは、なんと3話まで無料視聴できる。
「京佳お嬢様と奥田執事」を見て、平成のテレビカルチャーを懐かしく思い出した人たちは、ぜひこの機会にイケメン執事たちへ会いに行ってみるのはいかがだろうか。
東洋経済オンライン
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最終更新:2/17(月) 6:32