「原因は間違いなくたらスパです」医師が迷いなく断言、高校生を襲ったまさかの“激痛”の正体とは

3/31 9:51 配信

東洋経済オンライン

出版社に勤務する33歳の男性は、高校1年生のときに発症した「まさかの病気」がきっかけとなり、今でも、「たらこスパゲッティ」が苦手だ。もともとは大好物だったたらスパ。男性の食の嗜好を変えてしまったできごととは――。
 男性の名前を鈴木雄一さん(仮名)としよう。

 それは鈴木さんが高校1年のときのことだった。関西地方の中高一貫校に通っていた鈴木さん、中学時代は野球部に所属、3年生で引退したが、その反動で10キロ太ってしまったという。

■部活をやめたら10キロ太った

 「見ての通り、私は162センチで48キロと細身。野球部時代もこんな体型だったんです」

 ところが、野球部を引退して3カ月ほど経つと、体重が増えて58キロに。ぽっちゃりとした見た目になった。

 「部活をやめても同じくらいの量の食事を取っていたたからでしょうね。その状態で高校に上がり、『ちょっとまずいかな』と思っていた矢先、父親から太ったことをいじられ、腹が立ったんです」

 「絶対に元の体型に戻ってやる!」。そう固く決意し、帰宅後にランニングを始めた。

 最初は1日3~4キロのペースで。当時、飼っていた愛犬を連れて、一緒に走った。野球部時代もランニングが日課だったため、走ることには慣れていた。「むしろ、野球部時代と違い、自分のペースで走れるのが楽しくて、次第にランナーズハイになっていった」と言う。

 大雨の日以外はほぼ毎日走り、気がついたら1日10~15キロ走っていた。過酷なランニングについていけず、その頃には愛犬も嫌悪感を示すようになっていた。

 「最初は、私が誘うと尻尾をふって『ウキウキ♪』でついてきたのですが、次第に私が走る準備をすると、逃げるようになりました」

 ここまで走りこんでいるので、体重はあっという間、2カ月ほどで元に戻った。しかし、体重が落ちても走ることはやめられない。鈴木さんはますますランニングに邁進する。

■半年後、ひざに違和感が

 ランニングを開始して半年後。右ひざに違和感と痛みが出始める。だが、これも「走りすぎだろう」ぐらいで、深く考えなかった。

 近所の整形外科に行ったのも、「走れなくなると困るから、念のため、診察をしてもらっておくか」くらいの気持ちだった。実際、レントゲン写真では異常はなく、診察した医師も鈴木さんの話を聞いて、「ちょっと走りすぎだよね」。

 湿布薬とサポーターを処方され、しばらく安静にするように言われた。

 ところが、よくなるどころではなく、2日ほど経つと今度は右足の親指が腫れてきた。「ひざと同じような鈍い痛みで、とても不快でした」と鈴木さん。ひらめくものがあったのか、今度はなぜか近くの内科を受診した。

 そして、内科医にひざと足指を見せた。医師は「あっ、これ痛風だね!」。――まさかの診断名だった。

 「『えーっ!?』と、声を出して驚いたのを、今でも覚えています」と鈴木さん。

 なぜ、誰もが認める健康的な生活をしていた彼が「痛風」になったのか。医師から食生活について聞かれた鈴木さんには1つ、思い当たるふしがあった。「たらスパです」。

 「実は、好きな食べ物や飲み物があると、そればかりを続けるクセが小さい頃からありました。実はランニングを始めた時期から、たらスパのうまさにはまり、毎食欠かさず食べるようになっていたんです」

 その量は誰もが驚くほどで――。

 「学校から空腹で帰ると、まず『たらスパ』を一皿。ランニングをした後の夜ごはんにも『たらスパ』、週末には昼ごはんでも食べるので、1日3食ということもありました。学校に持っていくお弁当にもほぼ毎日入っていました」

■たらこのスパゲッティあえ

 鈴木さんによると、このたらスパはレトルトではなく、母親が作ってくれた自家製。スーパーマーケットで買ったたらこだが、その量が半端ない。
「『たらスパ』というより、『たらこのスパゲッティあえ』みたいな感じでしたねー」。

 鈴木さんの母親は料理が得意だったという。

 「だから、私の『食べたい』というリクエストに応じて、毎日、作ってくれていたんです」

 まさに親心だ。しかも、走った後のたらスパは最高にうまい。

 「いくら食べても、そのぶん毎日走っているし、健康に影響があるなんて思いませんでしたね」

 しかし、医師は「原因は間違いなくたらスパです」と断言した。「痩せていても、若くても、食生活によっては痛風になる人がいます」と。ちなみに、その医師も30代くらいで若かったが、「あ、僕も痛風です。まあ、この通り、太っていますけどね、ははは」と笑っていた。

 鈴木さんは、医師からたらスパをしばらく禁止することと、薬(痛風の治療薬)を服用し、水をたくさん飲むように言われた。その結果、「痛みも腫れも数日できれいに消えた」という。

 「実は、診察時に痛風と聞いた瞬間、痛みが2倍くらいになったんです。帰りは歩くのもやっとでした。たらスパ熱はこの一件以来、急激に冷めてしまいました。飲み会ではウケるネタなので語り続けていますが、食事のバランスには気を付けているので、以後、発作は起こっていません」

■総合診療医・菊池医師の見解は? 

 総合診療医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師は、「たらこも食べすぎれば痛風になることはある」と話す。

 痛風は、体内に尿酸が蓄積され、結晶となって関節にたまるのが原因で発症する。

 尿酸はプリン体という物質が分解されてできる老廃物。通常は尿とともに体外に排出されるが、何らかの理由で排泄が追いつかなくなると、関節にたまってしまう。

 「尿酸の80%は体内から、20%は食事から作られます。正常な状態では尿酸の『作られる量』と『排泄される量』のバランスがとれていますが、鈴木さんのように、たらこなど、プリン体が多く含まれる食事を取りすぎると、体にたまって痛風が起こるのです」

 1日あたりのプリン体摂取量は多くて400mgまで。

 たらこに含まれるプリン体は100g(ひと腹分)あたり約120mgと、含有量が多い。ほかにもソーセージなどの加工品やカツオやマグロ、イワシなどの青魚、レバー、鶏のささみやももなどに多く含まれている。

 なお、痛風の痛みが最も出やすいのは足の親指の付け根だが、足関節や足の甲、アキレス腱の付け根、ひざ関節や手関節にも出ることがある。「関節の中では酷使している部分には特に出やすい。鈴木さんの痛風がひざにも発症したのは、ランニングの影響もあると考えられます」(菊池医師)

 また、「痛風が若者に起こらない」という理解は誤りだ。

 菊池医師によれば、「高校生で発症した人は見たことがありませんが、20代、30代の患者さんはよく見る」という。「多くは会社員の男性です。肥満で『暴飲暴食』の自覚がある人がほとんどですね」。

 尿酸値は7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」で、痛風のリスクが高まる。尿路結石や腎臓障害を引き起こすことがあるので、注意が必要だ。

 高尿酸血症・痛風の予防は、「バランスのとれた食事をすること」「アルコールを適量にすること」「水分を多めに取ること」だ。食生活の改善が難しい人は、医療機関などで食事指導を受けたほうがいいそうだ。

本連載では、「『これくらい大丈夫』と思っていたら、実は大変だった」という病気の体験談を募集しています(プライバシーには配慮いたします)。「これはぜひ」という体験談をお持ちの方は、応募フォームからご応募ください。

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最終更新:3/31(日) 9:51

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