【輸入車ナンバー1】第4世代「ミニ」発売から1年を経た今「売れている理由」を解き明かす

4/21 6:02 配信

東洋経済オンライン

 日本では、昭和の終わりから「ミニ」の人気が高かった。2001年にBMWの手によってモダンなクルマに生まれ変わってからはさらに人気が高まり、近年では輸入車モデル別ランキングで長くナンバー1を守り続けている。

 そんなミニの最新モデルは、BMWが手がけるミニとして第4世代にあたり、2023年11月からミニ各モデルが順次、日本で発売された。発売から1年以上を経た今、その売れ行きと人気の理由を探ってみよう。

【写真】3ドア、5ドアにコンバーチブル、SUV…現行ミニのラインナップを見る

■第4世代となった新型が2024年1月に登場

 現代のミニは、1959年にイギリスで誕生したミニという名車を、BMWが2001年に復活させたモデルだ。日本では、2002年より販売されている。

 そのためイギリス発の古いモデルを「クラシックミニ」と呼び、BMW世代を「ニューミニ」や「BMWミニ」と呼ぶようになっている(以後ニューミニと記載する)。

 日本においてミニは、クラシックミニ時代から人気が高く、そのイメージを現代的にアレンジしたニューミニに関しても、2016年から輸入車モデル別新車登録ランキングでナンバー1を維持し続ける人気ぶりだ。

 今回、取り上げる第4世代は、先代モデルの登場から10年ぶりとなるフルモデルチェンジであり、その売れ行きは気になるところ。

 2023年11月の「ミニ・カントリーマン」、2024年3月の「ミニ・クーパー3ドア」……と各ボディタイプが順番に発売となり、2024年暦年の販売台数は1万7165台とあった。

 2位となるメルセデス・ベンツ「GLC」が7047台だから、2倍以上となる文句なしのナンバー1だ。2016年から9年連続という、連覇記録も伸ばした。

 ただし、2023年の販売は1万7796台であり、10年ぶりのフルモデルチェンジであるにもかかわらず前年同レベルにとどまっている。ニューミニの過去最高が2018年の2万5983台であることを考えると、2024年の数字はやや寂しいともいえるだろう。

 ニューミニが長くナンバー1を誇るのには、いくつかの理由があるが、その筆頭となるのがカウント方法だ。

 もともとミニとは、イギリスで生まれた“小さなクルマ”を指す車名である。現在もその名残があり、ミニの名を持つモデルはすべて同一車種としてカウントしている。

 トヨタの「ヤリス」「GRヤリス」「ヤリスクロス」が、すべてヤリス単一車種としてカウントされるのと同じように、ミニも複数のバリエーションの合算なのだ。

■ボディタイプもパワートレインも多種多様

 現在のニューミニには、ハッチバックだけでなく、SUVやクロスオーバーもある。

 具体的には、基本形となる「ミニ・クーパー」には3ドアと5ドア、コンバーチブルの3車型。SUVの「ミニ・カントリーマン(先代はクロスオーバーと名乗った)」、クロスオーバーの「ミニ・エースマン」というモデルもあるのだ。

 しかも、ミニ・クーパーの3ドアとミニ・カントリーマンには、エンジン車(ICE)と電気自動車(BEV)の両方がある(ミニ・エースマンはBEVのみ)。このように、ニューミニには1車種とカウントされつつも、現実的にはバリエーションが豊富に用意されているのだ。

 これだけ車種があれば、1位となるのも当然のことだろう。しかし、2015年までは、それ以上にフォルクスワーゲン「ゴルフ」が売れており、ナンバー1の座を守り続けていた。

 ステーションワゴンの「ゴルフ ヴァリアント」が含まれているとはいえ、1モデルでニューミニ軍団に勝っていたと考えれば、それだけかつてのゴルフは強かったといえる。

 なお、ゴルフの2024年の販売は3位だが、クルマの出来はよく、いつの日かかつての栄光を取り戻すことができるのではないかと、期待している。

 話をミニに戻そう。カウント方法で有利になるとはいえ、それだけでナンバー1になれるほど、輸入車市場は甘くはない。やはり、クルマとしての魅力があってこそだ。

 そこで、ニューミニの中でも主力モデルとなる5ドアモデルの「ミニ・クーパーS」(477万円)を借りて確かめてみた。その印象を中心に、製品としてのニューミニの魅力を探っていこう。

 第4世代となったニューミニには、ICEとBEVの両方がある。しかし、5ドアモデルにはICEしかない。直列3気筒1.5リッターと直列4気筒2.0リッターのガソリンターボだ。

 今回、試乗した上位版のミニ・クーパーSには、2.0リッターのほうが搭載されている。組み合わされるトランスミッションは7速DCTだ。

 このエンジンは、最高出力150kW(204PS)/最大トルク300Nmを発揮する。1450rpmという低い回転で最大トルクが発生するし、デュアルクラッチ式を採用したトランスミッションは、アクセル操作に対して加速はダイレクト感にあふれる。クーパーの名に恥じぬ、スポーティな走り味だ。

 そして、街中から高速道路までを走って感じるのは「走り味が過去のニューミニの延長線上にある」ということ。ハンドリングはクイックで、俊敏な身のこなしが楽しめる。

 このクイックなハンドリングは、ストローク感の少ないゴツゴツとした乗り心地と引き換えに手に入る特性だ。ご存じの方も多いはずだが、おさらいとしてその理由を説明しておこう。

■ミニの歴史と受け継がれた走り

 ニューミニの乗り味とハンドリングは、クラシックミニの特性を現代的に解釈し、再現したものだ。なぜ、クラシックミニはそんな特性を持っていたかといえば、ボディサイズに理由がある。

 クラシックミニは、当時としては先進的なFF(フロント・エンジンの前輪駆動)を採用し、小さなボディサイズでありながらも、大人4人が乗れる画期的なパッケージングを実現した。一方で、その合理化の犠牲となったのが足回りだった。

 ミニマムであることが追求され、ラバーコーンというゴム製のブロックがスプリングの代わりに使われた。伸縮性がないため、ほとんどストロークせず、その代わりに反応のよいハンドリングが生まれた。よくいわれる「ゴーカートフィーリング」というのが、これだ。

 そのため、パワーを高めた高性能版のミニ・クーパーは、ラリーなどで大活躍する。クラシックミニは、当時“先進的で速いクルマ”と認知されていたのだ。特に、バブル期を迎えた1980年代の日本では、「可愛い・速い」とモデル末期のクラシックミニが人気となった。

 そんなクラシックミニを、「駆けぬける歓び」をうたうBMWが復活させたのだから、少々乗り心地が悪くなっても、運動性能を優先するのは当然のことだろう。

 これで、普通の乗り心地を求めるなら、同じプラットフォームを使うBMW「1シリーズ」を選ぶべき。どうしても、MINIのデザインでなければ嫌なら、SUV版のミニ・カントリーマンをおすすめしたい。

 そういう意味で第4世代のニューミニは、ミニの伝統をしっかりと継承しているといえる。この走りの良さにほれて、オーナーになる人も多いはず。これも、ニューミニがナンバー1になっている理由のひとつとなる。

■第4世代ならではの魅力は、止まっていて気付く

 ニューミニの走りが痛快であるのは、従来モデルも同様であった。それが、これまでのニューミニの人気に一役買ってきたことは間違いないだろう。

 しかし、今回の試乗では別の部分にも感心した。それが「走る/曲がる/止まる」以外の部分だ。

 走っているのではなく、止まっているときに気がついたニューミニの魅力である。ただし、「走る/曲がる/止まる」が悪いのではなく、それ以外の部分が、非常に魅力的だったのだ。

 まず、デザインが秀逸だ。エクステリアは誰が見ても「ミニである」ことがわかるお約束のデザインながら、モダンそのもので古臭くない。インテリアのデザインも斬新だ。

 ダッシュボードやドア内装には、ファブリックのような素材を採用。ステアリングスポークやダッシュボードにも、ファブリック素材のベルトが使われている。斬新かつ、センスも良い。

 このデザインだけで、欲しくなる人も数多くいるはず。というか、もともとミニの人気は、クラシックミニ時代からデザインは大きな理由のひとつだった。最新ミニも、そういう意味では変わらない。これも、ニューミニの売れる大きな理由と言えよう。

 そしてもうひとつ、第4世代で大切なのは最先端のインフォテインメントで、クルマの新時代を感じさせるものであった。ニューミニのインテリアの特徴は、クラシックミニ時代のオマージュのひとつである、センターの大きな丸いディスプレイにある。

 その表示は、ドライバー前のメーターと連動しつつ、7種類にも変化させることができる。そのうち、「ゴーカート」を選べば、エンジンのふけ上がりがよりシャープになり、スポーティな走りを楽しめる。「グリーン」であれば省燃費走行が可能だ。また、「タイムレス」「ヴィヴィッド」「バランス」を選べば、グラフィックに合わせて室内の雰囲気が変化する。ナビ画面の色まで変更させるという、念の入りようだ。これには感心した。

 さらに、カーナビには最新のAR機能が追加されている。カメラで撮影した実車の前の風景に、矢印などを被せてディスプレイ表示するというものだ。これまでドイツの一部プレミアム車で採用されていた機能が、ニューミニにまで降りてきた格好だ。

 また、ニューミニ専用のAIアシスタントだけでなく、AlexaやSiriなどにも対応。専用AIアシスタントは、可愛らしいキャラクターが表示されて応答してくれる。これだけでも楽しい。

 また、YouTubeやSpotify、Amazon Musicなどのアプリも利用可能だ。操作方法は、スマートフォン風であり、普段スマートフォンを使用している人には苦にならないだろう。

 ちなみにこうしたソフトウェアは、BMWをはじめ、いろいろなメーカーが試行錯誤している。ニューミニと同じ機能を持つクルマも多いけれど、ニューミニほどわかりやすく、かつ前面に出ているクルマはないと筆者は感じる。これは、ソフトウェアによる“新しい体験”だ。

 これこそ、今注目を集めているSDV(Software Defined Vehicle)の重要な部分である。SDVの価値のひとつは、ソフトウェアによって、クルマに新しい魅力をプラスするというもの。その例として、新型ニューミニのソフトウェアを挙げることができるだろう。ニューミニに乗れば、SDVの価値に触れることができる。

 まとめてみれば、ニューミニが売れる理由は、「全タイプをひとつにまとめたこと」「クイックな、走りの楽しさ」「デザインの良さ」「ソフトウェアによる新しい体験」。こうした魅力があることが、輸入車ナンバー1の地位を守っていると言えるだろう。

【写真】現行ミニ各モデルのデザインやディテールを見る

東洋経済オンライン

関連ニュース

最終更新:4/21(月) 6:02

最近見た銘柄

ヘッドラインニュース

マーケット指標

株式ランキング