中国の生鮮食品EC「叮咚買菜」、逆境超え通期黒字化を達成 ビジネスモデルの持続性をアピール

3/21 13:02 配信

東洋経済オンライン

 中国の生鮮食品EC(電子商取引)大手の「叮咚買菜(ディンドンマイツァイ)」は2月29日、2023年の通期決算を発表。非アメリカ会計基準(Non-GAAP)ベースの純利益として4540万元(約9億4618万円)を計上し、創業以来初の通期黒字を達成した。

 叮咚買菜は、スマートフォンのアプリ経由で受注した生鮮食品を顧客にスピード配送するサービスの草分けだ。2017年の創業以来、商品の仕入れから配送まで自社で一貫して手がける直営モデルにこだわってきた。

 「わが社のビジネスモデルが果たして成り立つのか、かつては疑問や不安の声が少なくなかった。しかし2023年の決算は、叮咚買菜が(ビジネスベースで)生き残れることを実証した」

 同社の創業者でCEO(経営最高責任者)を務める梁昌霖氏は、決算説明会でそう胸を張った。

■事業規模を縮小し採算改善

 叮咚買菜は2023年、不採算エリアからの撤退などにより事業規模をあえて縮小させた。今回の通期黒字化はその結果と言える。同社が通期決算と併せて発表した2023年10~12月期の四半期売上高は49億9000万元(約1040億円)と、前年同期比19.5%減少している。

 具体的には、2023年5月末に(内陸部の)四川省および重慶市でのサービスを停止。2024年1月末には、広東省広州市と深圳市の一部拠点を閉鎖した。決算報告書によれば、2023年通期のGMV(流通取引総額)は前年比16.3%減の219億7000万元(約4579億円)だった。

 叮咚買菜のようなネット小売りの新業態は「即時零售(オンデマンド・リテール)」と呼ばれ、近年猛烈な勢いで成長している。中国商務省研究院は、即時零售の市場規模が年率50%以上のペースで拡大し、2022年には5042億8600万元(約10兆5098億円)に達したと試算。2026年には2兆5000億元(約52兆1023億円)を超えると予想する。

 しかし、即時零售の売り物であるスピード配送を実現するには、「前置型倉庫」と呼ばれる倉庫兼配送センターを顧客の近くに多数設置しなければならない。そのための先行投資や運営コストが重く、現時点ではほとんどの事業者が赤字経営というのが実態だ。

 そんななか、叮咚買菜が(痛みを伴うリストラを経て)通期黒字化を実現したのは注目に値する。

■リストラ終え再成長に自信

 「わが社は最も困難な時期を乗り越え、生き残るための基盤を固めた。これから成長軌道に復帰する余力も十分にある」。叮咚買菜のCFO(最高財務責任者)を務める王松氏は、決算説明会で自信をのぞかせた。

 決算報告書によれば、同社の2023年の営業キャッシュフローは1億2000万元(約25億円)のプラスで、同年末時点の手元資金の残高は53億1000万元(約1107億円)となっている。

 「地域的な(不採算エリアからの撤退などの)調整は一段落した。2024年は華南地方、華北地方、華東地方の(既存の)サービスエリア内で事業規模を拡大したい」。財新記者の取材に応じた叮咚買菜の幹部は、当面の目標についてそうコメントした。

 (財新記者:孫嫣然)
※原文の配信は3月1日

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最終更新:3/21(木) 13:02

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