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京阪バス・休廃止のはずの路線で「ダイヤ改正」ってどういう意味? 掲示物から伝わる乗務員不足の切迫感

3/6 12:10 配信

THE PAGE

 京阪バスは2023年11月1日、大阪府・京都府・滋賀県を走る複数の路線バスの廃止を発表しました。しかし、その後、筆者が廃止対象となった路線のバス停留所に行ってみると、なぜか「ダイヤ改正」を行う旨が掲示されていました。廃止のはずなのにダイヤ改正とはどういう意味なのか、取材で確かめることにしました。

廃止路線のバス停に「年に1回の運行となります」

 京阪バスが23年11月1日付けで、公式サイトを通じて発表した廃止対象の路線バスと、それらの廃止予定時期(【】内)は次の通りです。

【23年12月16日】
◎寝屋川営業所管内の「京阪守口市駅~大日駅~古川橋駅」など4路線
※既存路線の運行区間を短縮して「摂南大学~京阪守口市駅」を新設
◎門真営業所管内の「京阪大和田駅~南野口~門真団地」など3路線
※3路線を再編統合した路線を新設(巣本~下馬伏間を廃止)
◎ダイレクトエクスプレス直Q京都号の京阪交野市駅~星田駅間と、京阪交野市駅~なんば(OCAT)~ユニバーサル・スタジオ・ジャパン間

【24年春】
◎寝屋川営業所管内の「萱島駅~黒原旭町~萱島駅」など6路線
◎大津営業所管内の「石山駅~膳所公園~義仲寺~大津駅~びわこ浜大津」
◎京田辺営業所管内の「近鉄新田辺~美禅~草内」など2路線

 廃止の理由は「全国的なバス運転業務の担い手不足」と記されていました。

 ところが24年2月3日、筆者が移動中に京阪大和田駅前のバスターミナルへ立ち寄った際に、23年12月16日に廃止されたはずの路線の時刻表を何気なく見たところ、「年に1回の運行となります」と記されていたのです。運行日は「12月16日」となっていました。

 調べてみると、同様の表示は京阪守口市駅前やJR星田駅前のバス停留所にもありました。いずれも、23年12月16日に廃止されていたはずの路線です。

「とても待っていられる状況ではありません」

 廃止するのかしないのか、よくわからなくなってきたので、同社に問い合わせました。応対した総務人事課の担当者は「手続き上の問題」であり、当初の方針に変わりない旨を回答しました。

 「手続き上の問題」とは、法的なルールにもとづく手続きのことです。道路運送法では、バス会社が路線バスを休止・廃止する際に、実施する日の6か月前までに国土交通大臣へ届け出るよう定めていますが、近畿運輸局自動車交通部旅客第一課によると、同社が届け出を行ったのは23年9月29日。同年12月16日まで約3か月弱しかなく、条件を満たせません。

 その届け出と同時期に、同社はダイヤ改正の届け出も行っています。ダイヤ改正は1か月前までに届け出れば実施できます。この届け出によって12月16日のみの年1回運行に変更しましたが、運行日までに路線が廃止されれば、運行の必要はなくなります。つまり、実質的には同年12月16日に路線が廃止されるのと同じことです。

 同社の担当者は「仕事量に対して必要な乗務員数が全然確保できておらず、仕事量を減らして対応しようとしても追いつかない状況です。本来なら(届け出から約半年が過ぎた)4月1日からにした方がきりも良いのですが、とてもそれまで待っていられる状況ではありません」と訴えます。

 近運局の旅客第一課の担当者は「望ましい手続きではないことは伝えました」としながらも、手続きそのものは法的に問題がなく、「利用者周知を図った上で行ってほしいと伝えています」としています。

掲示物から伝わる乗務員不足の切迫感

 ここまで、筆者は「廃止」という言葉を使ってきましたが、近運局が公示した同社の届出書の内容を確認すると、同年12月16日に廃止予定とされていた寝屋川営業所管内の4路線、門真営業所管内の3路線、ダイレクトエクスプレス直Q京都号のうち、一部を除いていずれも24年4月1日から25年3月31日まで1年間の「休止」の届け出となっていました。

 「廃止」ではなく「休止」とした理由について、同社の担当者は「休止路線の全区間で運行を復活するかどうかという話とは別に、例えば一部区間を別の路線バスが運行経路を変更して再び通るようになる、といった可能性がゼロではないため」としています。

 「廃止」と言っていたのになぜダイヤ改正なのか、という素朴な疑問から始まった今回の取材を通じて、痛感させられたのはバス業界の乗務員不足の深刻さです。

 営業所のある寝屋川・門真両市は大阪市の衛星都市であり、休廃止の対象となった路線は過疎地域にあったわけではありません。それでも、同社は路線の維持を断念しました。筆者が撮影したダイヤ改正関連の掲示物の写真を改めて見ると、乗務員不足の切迫感がひしひしと伝わってきます。

 乗務員が足りないのは同社だけでなく、全国のバス業界全体の問題です。人口減少と高齢化がますます進む中、地域の足をどう維持・確保するのか。これは、バス業界だけでなく国や自治体、産業、私たち住民を含む社会全体が抱える大きな課題です。
(取材・文:具志堅浩二)

THE PAGE

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最終更新:3/6(水) 12:13

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