運転本数復活や乗継改善「24年春新ダイヤ」の要点 京葉線「改悪」の一方で利便性が向上した路線も多数ある

3/29 4:32 配信

東洋経済オンライン

 2024年3月16日に実施されたJRのダイヤ改正。北陸新幹線の敦賀延伸開業とともに大きな話題となったのが、朝夕の快速廃止で今も物議を醸している京葉線であった。JRは「コロナ禍前のご利用状況までは回復しないと考えております」としており、以前のダイヤに戻す考えはなさそうだ。

 一方で、それとは対照的にコロナ禍前、あるいはそれ以上の本数にしたり、減便しても利用しやすい工夫が見られたりする線区が多かったのが今回のダイヤ改正だ。全国各地のそのような例をご紹介する。

■札幌出張者御用達「エアポート」に変化

 まずはJR北海道。出張者や旅行者にもおなじみの、札幌と新千歳空港を結ぶ快速「エアポート」が毎時5本から6本に増えた。そのうち毎時1本が特別快速タイプ、毎時2本は北広島―新千歳空港間が各駅停車の区間快速タイプとなった。この変更によって北広島―千歳間の普通列車毎時2本が削減されている。

 同区間は、改正前は毎時快速5本+普通2本の計7本だったのが、改正後は特別快速・快速・区間快速の計6本になった。つまり普通列車の輸送力を空港輸送に振り分けて増発したわけで、工夫したものだといえる。各駅停車の区間がある区間快速の「エアポート」は途中で特別快速や快速に抜かれないかと心配になるところだが、どのタイプに乗っても先に発車した列車が先着する。ただ、特別快速は新札幌―千歳間で快速より3駅停車駅が少ないのに、所要時間は快速と変わらないのは気になるところだ。

 京葉線のダイヤが話題のJR東日本だが、線区によって対応は全然違い、改善された線区も数多い。

 まずは山手線。2022年春のダイヤ改正で、平日の山手線と京浜東北線快速で運転間隔を揃え、田端駅で発着時刻を5分間隔に揃えて接続とするダイヤになっているが、これを外回り電車に限り土休日の午前中(10~12時台)にも拡大した。毎時16本運転だった山手線を12本に減便した結果ではあるが、減便しても速達性が向上し、例えば池袋→浜松町間や、王子→快速通過駅などで最大4分短縮となった。また、上野―東京間の各駅は、山手線と京浜東北線快速を合わせると2~3分間隔となり、乗車チャンスが均等化される。

 ただ、平日とは違って山手線外回り電車は、浜松町では京浜東北線快速のドア開扉10秒前に発車するダイヤになっており、京浜東北線から山手線外回りに乗り換えるには5分待つことになる。これにより王子→大崎間などで所要時間が最大5分増える。また、田端でも接続するとはいえ乗換時間は15秒と短い。山手線のダイヤを全体的に30秒~1分後ろ倒しにするなどして、しっかり相互接続にしてもらいたいものである。

■ダイヤが揃うとこんなメリットが

 品川駅でも大宮方面の京浜東北線から同じホームで山手線外回りに乗り継げるが、こちらは時刻が揃い乗り換え待ち時間ゼロ!  蒲田・大森から、大崎より先の各駅まで最大4分短縮だ。さらに、土休日は5分間隔で運転する中央・総武線各駅停車とも午前中(10~12時台)に限って運転間隔が揃い、新宿駅では山手線から中央線各駅停車への乗継時間はどの列車も1分に統一された。五反田・目黒・原宿などから東中野・高円寺・阿佐ケ谷・西荻窪などへ行く場合に最大5分短縮となる。

 前述の品川接続も含めれば、京浜東北線から中央線各駅停車に乗り換えて大井町から中野に行く場合などで最大9分の短縮となり、これは大きい。

 逆に中央線各駅停車から山手線外回りへの乗継は必ず4分待つことになり、信濃町・千駄ケ谷などから高田馬場・目白などへ行く場合は最大4分の増加だ。同時発着ならこちらも5分短縮だった。田端・浜松町の時刻もそうだが、山手線側の発車時刻があと1分後ろ倒しになることを期待したい。

 発車時刻がわかりやすくなったのは南武線だ。乗客から見た変化としては、平日の快速発車時刻が川崎駅発毎時00・30分、立川駅発は毎時15・45分とキリのいい時間に統一されたのが目玉だが、実は利用者だけでなくJRにとってのメリットもありそうだ。

 南武線は従来、平均往復時間(川崎駅から往復し、折り返し時間をはさんで再度川崎駅を出るまでの一巡の時間)が128分であったが、今回の改正で駅での折返時間が平均11分/回から平均7分/回へと4分短縮。川崎駅と立川駅の2回で計8分短縮され、平均往復時間は120分ちょうどとなる。快速・各駅停車合わせて毎時8本ある南武線では、従来は往復2.13時間(128分)×毎時8本で17編成の車両と乗務員が必要となる計算だったが、往復2時間×毎時8本なら16編成で済む。

 つまり、この改正は車両1編成の運用と乗務員のシフト(鉄道業界では行路という)を減らす狙いもあるのだろう。きれいなパターンダイヤだとこういったことがやりやすい。実際にそうであればJRにもメリットは大きく、日中以外を含む全時間帯、全通勤線区でパターンダイヤを推進してくれるとさらに使いやすくなるだろう。

 だが南武線の改正には1つ落とし穴があった。川崎駅の1つ隣、尻手駅で同一ホーム乗換ができる浜川崎方面列車との接続が悪くなった列車があるのだ。浜川崎行き列車の尻手駅発車時刻は40分間隔で、13・33・53分発のいずれかとなっている。これまでは尻手駅で1~3分の乗継時間があった。

 これに対し改正後の川崎駅発の各駅停車は毎時02・11・20・32・41・50分発で、そこから尻手駅まで2分15秒かかり、尻手駅の時刻は毎時04・14・23・34・44・53分だ。関係者によると、川崎駅50分発に乗れば尻手駅には52分台には着くので、所定ダイヤ上は尻手駅53分発の浜川崎行きに15秒の連絡で間に合うが、尻手駅13分発の浜川崎行きに乗る場合、川崎駅11分発で行くと尻手駅到着の15秒前に浜川崎行きが行ってしまい40分待ちとなるケースもあるようだ。

■最大7分短縮の中央線快速

 中央線では、追い抜かれる列車(快速)の速達性が向上した。立川発5時45分~6時45分の快速は、途中での待ち合わせ駅の変更で、立川―新宿間平均2分、最大7分短縮となった。京葉線では「各駅停車の時間短縮」のためという理由で、追い抜きを減らす目的で通勤快速をなくしたが、中央線は違う。ダイヤ改正によって速達列車が減便されたかといえば特急が1本減った程度で、特快はちゃんと残したうえでの時間短縮だ。

 また、京葉線で行われた、ラッシュ時に2000人は乗っていたであろう通勤快速をなくして有料特急化する流れの草分け的存在であった中央線直通の成田エクスプレスがついに消えた。これは2010年春のダイヤ改正の際、夜の通勤快速1本を快速に変更し、もとの通勤快速と同時刻で走らせていたものだ。前述の新宿駅21時20分頃の通勤快速1本の復活はないが、通勤快速の運転間隔の偏りが是正され、これまで新宿駅21時台は05・11・37・49分発と6~26分間隔だったのが、05・15・37・49分発と、10~22分間隔になった。

 千葉のダイヤは京葉線の改悪ばかりが話題になっているが、新宿と房総を結ぶ特急「新宿わかしお」「新宿さざなみ」も改悪だ。秋葉原からも錦糸町からも、筆者が見る限り自由席は1両につき7~8人程度の乗降があったが、秋葉原は通過となった。これまで山手線の東側から利用していた人は秋葉原と錦糸町で計2回、階段経由の乗換になる。

 一方で船橋では、朝の便では1両につき1人ずつしか乗車がないケースも多いものの停車を継続している。客が減るのはこのような停車駅設定のためではないか。京葉線の特急も通勤快速利用者の半数が降りていた新木場は通過で、停車駅設定のセンスがいいとは思えない。

■北陸新幹線延伸の「並行在来線」は? 

 東海道新幹線に注目が集まりがちなJR東海だが、今回のダイヤ改正では在来線が大きく変わった。日中の中央西線は快速も名古屋―高蔵寺間を各駅停車化(停車駅2駅増)して「区間快速」にしたが、最高速度を時速110kmから130kmに向上することで所要時間の増加を吸収。高蔵寺から先の郊外区間は従来通り快速運転だ。通勤時間帯の快速をやめて速度も向上しない京葉線とは対照的だ。

 これまでほとんど変化がなかった静岡県内の東海道線にも大きな変化が起こる。従来は主に熱海―島田間、興津―浜松間で運転が分離されていたが、熱海―浜松間の直通列車と、興津―島田間の静岡都市圏区間列車という2系統の体制となった。とくに注目すべきは、熱海13時14分発の列車は豊橋(16時18分着)まで乗り換えなし!  これは青春18きっぷ利用者に朗報だ。

 JR西日本と、北陸新幹線敦賀延伸でJRから分離された区間も改善がみられる。コロナ減便で減らした車両数をなかなか元に戻せず、インバウンド回復による混雑でブーイングの嵐だった京都の嵯峨野線では、ついに日中の普通列車毎時4本運転が復活。混雑問題を地元やメディアが継続的に粘り強く取り上げた成果といえるだろう。

 北陸新幹線延伸で経営分離された福井県内の元北陸本線、「ハピラインふくい」はJR時代よりもダイヤが改善された。まず、福井―武生間は日中毎時1本から2本に増発。地方鉄道ではなかなか見られない思い切った施策で、ダイヤのパターン化も行われている。また、福井―敦賀間には快速が登場。敦賀方面は朝2本と夜2本、福井方面は朝2本と夜3本の運転だ。福井県は新幹線敦賀延伸後も福井と大阪方面を結ぶ特急の存続、新快速の延伸などを要望してきたがいずれも叶わなかった。快速はその代替といえる。

 今回のダイヤ改正では減便や快速の削減があっても、その分速度向上や列車接続による速達性の向上など、どこかの湾岸部を走る赤い帯の電車と比べて工夫が見られるケースが目立った。また、自治体の要望や自治体主導の取り組みなどによって本数の復活や利便性向上を勝ち取ったケースもある。これらを参考に、千葉県や房総半島の各市町村には希望を持ってがんばっていただきたいと思う次第である。

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最終更新:3/29(金) 4:32

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