「チーム」としての集中を高める手っ取り早い方法 リモートワークはチームとしての集中には不向き

4/5 13:02 配信

東洋経済オンライン

マッキンゼー・アンド・カンパニー、ワトソンワイアットなどの外資系コンサルティング会社を経て独立した大嶋祥誉氏。これまで5000チーム以上を見てきた彼女は、「チームにも集中力がある」と言います。では、どのようにして「チームの集中力」を上げることができるのでしょうか。
※本稿は大嶋祥誉著『マッキンゼーで学んだ 時間の使い方がうまい人の一瞬で集中する方法』の内容を一部抜粋・再編集したものです。

■集中は「同期」する

 仕事でもスポーツなどのプライベートでも、もしあなたが何らかのチームを率いているとしたら、ぜひお伝えしたいことがあります。それは、「チームにも集中力がある」ということ。ここでご紹介したいのが、東北大学が世界で初めて明らかにした「チームが『ゾーン』に入ったときの脳活動」についてのリリースです。

チームフローの状態では中側頭皮質で、ベータ波とガンマ波が増加していることが判明しました。また、チームフロー状態では通常のチームワーク状態に比べて、チームメイトの脳活動がより強く同期することもわかりました

(https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20211006_02web_team.pdf)
 このような「チーム全体がフローに入っている」状態になれば、生産性が高まることは言うまでもありません。実際、チームスポーツではときに「心が一つになっている」という感覚を得られるものですが、それを「脳」の観点から明らかにしたのが、東北大学の研究です。

 そしてこれは仕事のチームにおいても同様です。私もこれまで5000チーム以上を見てきましたが、「このチームは集中しているな」と感じるときは、メンバーの言動があたかも一つの脳のように同期して、効果的な議論をし、行動をしていました。

 私自身、フロー状態のチームに参加した経験があり、そのときにはお互いの意識や思考――何をするか、他のメンバーがどう反応するか――が散漫になっていませんでした。結果、チームの生産性が圧倒的に高かったのを覚えています。

■行動を同期させるルーティン

 では、どんな行動がチームの集中力を高めるのか。東北大学の知見と私の経験からいくつかご紹介したいと思います。

 まず、有効なのが「行動を同期させるルーティン」です。たとえば「昭和のルーティン」として知られている「朝礼」「ラジオ体操」「社歌を歌う」などは、行動を同期させるという意味では実はとても効果的です。今の若い人には受け入れられないかもしれませんが、実際にはベンチャー企業でもこうした活動をしているところはあります。

 その意味では、コロナ禍で一気に浸透したリモートワークは、チームとしての集中には不向きと言わざるを得ません。現在はコロナ禍も明け、再び出社する会社も増えましたが、在宅でもよいと勤務スタイルの選択肢を増やした会社もあります。毎日全員が出社といかなくても、たとえば週に1度、月に1度は集まって何か同じことを全員でやる、という施策が必要かもしれません。

 特別なことをしなくても、出社して周りの人と一緒に働いているという感覚を持つことも十分「行動の同期」になります。私も学生時代、家で勉強するより塾の自習室で周りに人がいる中で勉強したほうがはかどったものですが、これも行動の同期だったのだと思います。

 ちなみに先日見たあるニュースで、「受験勉強をする際、手元だけをお互いに映して共有している」というものがありました。Z世代もやはり、自分なりの方法で行動の同期を図っているのだなと感じました。

■チームの力を発揮するための「前提条件」

 もう一つ、「明確な目標を示す」こともまた、チームの集中力アップには欠かせない要素です。たとえば、スポーツは「勝つ」という目標が明確なので、チームとして集中状態に入りやすいともいえます。もちろん、仕事にも本当は目的があるはずなのです。

 しかし、日々の仕事に追われているうちに、「何のために働いているんだっけ?」とか「この仕事をやることで、本当に売り上げは上がるのか?」「世の中のためになっているんだろうか?」というような、疑問、雑念が浮かんでしまうことがあります。逆に言えば、そうした集中を妨げる要素を排除し、スポーツのチームと同様に明確なアウトプットをリアルにイメージさせることができれば、チームの集中力は格段に高まるはずです。

 リアル出社とリモートワークを使い分ける「ハイブリッド型」の働き方が課題となっているのは、日本だけでなく、アメリカなどの海外でも同じです。

米ダラス連銀は30日、新型コロナウイルス禍を受けた在宅勤務の増加で、米大都市での生産性が相対的に低下しているとの分析を示した。在宅ではアイデアの交換や人脈づくりが難しくなっているためだ。(中略)在宅勤務は通勤コストの削減や、家族や友人と過ごす時間の増加などメリットも注目されてきた。一方で、多くの企業は生産性の向上へオフィス勤務を重視しており、今回の研究が働き方を巡る議論に一石を投じる可能性もある
(『日本経済新聞』2022年9月2日)

 同じく『日経新聞』(2022年6月7日)の記事で、ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社長のロッシェル・カップ氏の指摘も示唆に富んでいます。

アップルと同様に米グーグルも4月から週3日の出社を義務付けた。一方、米メタは社員がいつまでもリモートワークを申請できるようにしており、アマゾン・ドット・コムは個々のチームに決定を委ねている。
従業員をオフィスに呼び戻すために、いくつかの企業は特典を増やしている。JPモルガン・チェースはニューヨークの最新鋭のグローバル本社を公開したが、ヨガやサイクリングルーム、瞑想スペース、アウトドアエリア、フードホールなど、シリコンバレー企業を思わせるアメニティが備わっている。

ハーバード・ビジネス・スクールの新しい研究によると、ハイブリッドワークには「スイートスポット」が存在する。週に1~2日の在宅勤務は仕事の成果物の新規性と仕事に関するコミュニケーションの両方を増加させる可能性があるそうだ。
その研究者によると、「ハイブリッドワークは、同僚から孤立する心配がなく、ワークライフバランスをより良くすることで、どちらとも両立させる」ことが示唆されたそうだ
 リモートワークが広まる中、チームの集中力をどう高めるかは非常に大きな問題ですが、それを実現することができれば、競争力にもなる、ということだと思います。

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最終更新:4/5(金) 13:02

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